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小さく生まれた赤ちゃんの発達の不安。情報もなく、相談先では「しかたない」と言われ・・・【体験談】

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GCUで生後100日のお祝い!はかまは祖母の手作り、お祝い膳は日奈さんの手作り、花冠は担当看護師さんからのプレゼント。

北海道に暮らす髙橋日奈さん(35歳)は、妊娠25週のときに帰省先の実家で破水し、緊急帝王切開で第二子の愛乃ちゃんを出産しました。出生体重772g、身長31cmの超低出生体重児として生まれた愛乃ちゃんは、現在4歳で幼稚園の年少さん。パパの正樹さん(仮名・40歳・公務員)とお姉ちゃん(9歳)と暮らす4人家族です。ママの日奈さんに、愛乃ちゃんが生後4カ月で退院してから今までの成長について話を聞きました。全3回のインタビュー、3回目です。

自宅へ戻り、家族で暮らせるようになったけれど・・・

愛乃ちゃんが生後4カ月(修正月齢1カ月)のころ。お姉ちゃんからのチュ!

当時、髙橋さん一家の自宅は道央にありましたが、日奈さんが道東の実家に帰省中の緊急出産だったために、愛乃ちゃんは実家から1時間半の距離にある病院のNICUに入院しました。愛乃ちゃんの入院中は、日奈さんとお姉ちゃんは日奈さんの実家で暮らし、パパの正樹さんは自宅で、と家族は離れ離れでした。愛乃ちゃんが生後4カ月で退院できることになり、家族がやっと一緒に暮らせるようにはなりましたが、日奈さんが困ったのは、小さく生まれた愛乃ちゃんの成長を相談できる場所がないことでした。

「道東から自宅のある道央に戻る際に、自宅近くの病院に紹介状を書いてはもらったのですが、道央の病院では低出生体重児のフォローアップ外来はありませんでした。リハビリや療育の情報も得られず、健診も自治体の乳幼児健康診査だけ。

愛乃は首がすわったのは生後8カ月(修正月齢4カ月)、寝返りができたのは生後9カ月(修正月齢5カ月)のころです。すべての成長がゆっくりで、それがとても心配でした。乳幼児健診で保健師さんに発達の相談をしても『小さく生まれたからしかたないよね』と言われて・・・それ以上相談できなくなってしまいました。かといって周囲に低出生体重児のママもいないし、理解してもらえないつらさ、孤独感が強かったです。相談先がないので、小さく生まれた赤ちゃんの発達についてわからないことは、インターネットやSNSで調べていました」(日奈さん)

それでも、愛乃ちゃんは大きな病気をすることもなく、自分のペースでゆっくり少しずつ成長しました。生後1歳(修正月齢8カ月)にははいはいができるようになり、生後1歳半(修正月齢1歳2カ月)には初めての一歩を踏み出すことができました。

「愛乃の一つ一つの成長が本当にうれしくて、できることが増えるたびに心から『すごいね!』『やったね!』と大げさなほどにほめていました。とくに1歳の誕生日を迎えられたことは本当にうれしかったです。妊娠7カ月で突然の出産となり、生きられないかもしれないと言われていた愛乃が、1歳を迎えてくれたんです。おもちを背負わせたり赤ちゃん用のケーキを手づかみ食べさせたりして、家族でお祝いできて幸せを感じました」(日奈さん)

小児リハビリや療育の情報を集め、相談先とつながることを心がけた

1歳のお誕生日は赤ちゃん用のケーキを用意。好きなように手づかみ食べしてご満悦の愛乃ちゃん。

日奈さん一家は、愛乃ちゃんが2歳になるころに正樹さんの転勤のために道央から道南へ、愛乃ちゃんが4歳になる春には道北に引っ越しをしました。住む場所が変わるたび、日奈さんは低出生体重児を診てもらえる病院を探したり、小児リハビリや療育施設を探したり、自治体の保健師さんに情報提供をお願いしたり、と、愛乃ちゃんの成長についての相談先を調べ、つながりを作って理解してもらうことを心がけてきたそうです。

「わが家は転勤族なので、愛乃が4歳になった今までで生まれた病院を含め4カ所の病院に通ってきました。愛乃が2歳になるまで住んだ道央では、相談先がなくてつらい思いをしたし、早期リハビリも受けることができなかった後悔があります。それで、自分でいろいろと調べ、病院や保健センターに協力をお願いするようになりました」(日奈さん)

髙橋さん一家が道央の次に住んだ道南の病院には小児リハビリがあったため、引っ越す前に道央の病院の医師に紹介状を書いてもらいました。
「道南の病院では週に1回の作業療法と2週間に1回の理学療法に通っていました。理学療法は三輪車をこぐ練習や、ケンケンパ遊びなど体を動かす遊び、作業療法ではビー玉をつまむ、粘土を触ってみる、といった練習をしました。愛乃は以前は感覚が過敏なところがあって、粘土や絵の具など手が汚れそうなことは苦手だったんです。でもそれも徐々に克服してできるようになりました。

リハビリは遊び感覚だったから本人も毎回楽しみにしていたし、私も愛乃の成長を相談できて、アドバイスをもらえたこともとても安心できました。2歳になったころはまだ言葉が出ていませんでしたが、道南の病院で2年間リハビリに通った結果、言葉の力もかなり発達し、体を使ってできることも増えました」(日奈さん)

さらに2023年の春、道南から道北に引っ越しした日奈さん一家。道北では、週に1回の療育機関でリハビリを受けることになり、幼稚園にも通い始めました。

「幼稚園に通い始めてから急激な勢いで成長していると感じます。自分でやりたい欲求が強くなり、いろんなことにチャレンジしてできることが増えました。今はトイレトレーニングを頑張っています。つい最近、初めて家のトイレでおしっこをできたことが、最近でいちばんうれしかったできごとです」(日奈さん)

サークル立ち上げから1年経たずに、リトルベビーハンドブックの配布を開始

リトルベビーサークルの共同代表の小倉さん(右)と、子ども同士も同い年で仲よしに。

日奈さんは、愛乃ちゃんの成長についての情報を集めるのに苦労した経験から、リトルベビーサークルを作って同じ境遇の人たちとつながりたいと考えていました。

「でも私は転勤族だからなかなか1人では踏み切れずにいたんです。そんなとき、SNSで相互フォローをしていた北海道のママの小倉さんから声をかけてもらい、共同代表として2022年の2月にリトルベビーサークル『北海道リトルベビーサークル ゆきんこ』を立ち上げることになりました。

サークルを立ち上げてすぐに15人のメンバーが集まり、北海道にも同じような仲間がいる、と心強く思いました。サークルではオンラインでのお話会と並行して、リトルベビーハンドブックという、低出生体重児向けの母子健康手帳のサブブックを作成する活動も始めました。活動を通してテレビや新聞などのメディアで取り上げてもらえたことで、今は76人のメンバーと公式グループLINEでつながっています」(日奈さん)

リトルベビーハンドブックは2022年6月には道議会で取り上げられ、7月に作成が決定。毎月1 回の会議を重ねて 、サークルの立ち上げから1年も経たない2023年1月、念願の「ほっかいどうリトルベビーハンドブック」が完成しました。初版の2000部が各市町村に届けられました。

「北海道は179市町村あるので、各市町村にたとえば10冊送るだけで1790冊が必要になります。初版はすぐにほぼなくなってしまったので、2023年5月に第2版を増刷しました。このハンドブックは、生まれたばかりから6歳になるまでの、出生体重が1500g未満のお子さんとその家族がもらえます。

リトルベビーハンドブックは赤ちゃんの成長を記録するだけでなく、低出生体重児ならではの心配事についての情報や、先輩ママやパパからのメッセージものっています。かつての私のようにだれにも気持ちを打ち明けられない人の心にも、1人じゃないよ、というメッセージが届いてほしいです。完成した今、各地からたくさんの感謝の声をいただけて、それだけで私たちは取り組んで本当によかったと思っています」(日奈さん)

サークルの仲間と出会い、心が救われた

愛乃ちゃん3歳7カ月。日奈さん手作りのくまちゃんは、愛乃ちゃんが生まれたときの身長・体重と同じ大きさです。

リトルベビーサークルの活動を通して、日奈さんは初めて、産後に苦しい思いを抱えていた胸の内を人に打ち明けることができたそうです。

「愛乃が生まれて4年の間、出産当時のできごとや思いを振り返ることもしていませんでした。でも、サークルの活動を始めて、共同代表の小倉さんやメンバーと一緒に語り合う中で、自然と感情をさらけ出して素直に泣けるようになりました。

同じ境遇の人にわかってもらえる、ただ聞いてもらえる、それだけですごくほっとしたんですよね。言葉だけじゃなくて、わかってもらえる人がいる環境がすごくうれしかったです。だれかに感情を素直に出せると、心が軽くなるんだな、とわかりました。

私はずっと1人で泣いていたけれど、もうちょっと自分の気持ちに素直になっていたらもっと楽だったのかもしれません。だから、サークルを立ち上げて、私自身が救われたと思います。もし今、小さく生まれたお子さんをお持ちのママやパパが不安を感じていたら、各地のリトルベビーサークルにぜひ連絡してみてほしいです」(日奈さん)

【早坂先生より】みんなとつながるリトルベビーハンドブック

低出生体重児の赤ちゃんは、発達や発育など長期的なフォローが必要となりますが、最寄りの地区で無理のなく通える療育やリハビリの情報を得ることが困難な場合もあります。病院のみならず、療育や地域支援などの、赤ちゃんとその家族をとりまく継続的な支援は課題の一つです。ご家族が中心となって作成されたリトルベビーハンドブック(浅沼秀臣先生監修)の存在は、赤ちゃんとご家族にとって大きな支えになることと思います。

お話・写真提供/髙橋日奈さん 監修/早坂 格先生 協力/板東あけみ先生  取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

小さく生まれた赤ちゃんの子育てで悩んだ経験から、同じように悩む人たちの力になりたいと、リトルベビーサークルの活動を始めた日奈さん。「今はインスタグラムのお知らせが中心なので、S N Sを利用していない人にも届くように活動していきたい」と話してくれました。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年6月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

北海道リトルベビーサークル ゆきんこ ホームページ

北海道リトルベビーサークル ゆきんこ インスタグラム

早坂 格先生(はやさか いたる)

PROFILE
2006年 旭川医科大学卒業。室蘭日鋼記念病院、小児科長。医学博士(北海道大学大学院 医学院)。
日本小児科学会認定 小児科専門医・指導医。日本周産期・新生児医学会認定 周産期専門医(新生児)・指導医。日本周産期・新生児医学会認定 新生児専門医・新生児蘇生法「専門」コースインストラクター。

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