妊産婦の尿漏れ問題。妊娠・授乳中の治療薬の服薬は、赤ちゃんに影響する?
「妊娠や出産を経て尿漏れが気になる」といった人もいるのではないでしょうか。しかし、尿漏れはデリケートな悩み。なかなか相談できる相手もいませんよね。妊娠中や授乳中に尿漏れの治療薬を飲んでもいいのか? 自宅でできるトレーニングはあるのか? 今回はそんなギモンに焦点を当てた内容です。ぜひ最後までチェックしてください。
若いのに尿漏れ?
一般的に、尿もれは女性に多いといわれています。女性は男性より尿道が短く尿がもれやすいからだの構造になっており、妊娠・出産で起こる尿漏れは8割が腹圧性尿失禁といわれています。
腹圧性尿失禁とは、「咳やくしゃみをする」「重いものを持ち上げる」など、おなかに力が入ったときに漏れるタイプで、尿意がなくても不意に漏れてしまうのが特徴です。原因としては、肥満や妊娠・出産などによる骨盤底筋(膀胱を支えている筋肉)の緩みなどが挙げられます。(※1)
つまり、尿漏れは若い世代にも起こり得る症状なのです。
尿漏れ予防には骨盤底筋を鍛えよう
尿漏れに効果的なセルフケアのひとつは、骨盤底筋のトレーニングです。家でもできるトレーニングなので、ぜひ一度実践してください。
ヒップリフト
(1)仰向けで足を腰幅程度に開き、ひざを立てる。
(2)両手はからだの横に置き、お尻を持ち上げる。膣を締めながら肩からひざまで一直線にした姿勢を10秒キープする。
(3)ゆっくりお尻を下げる。
まずは10回×1日3セットを目標にし、余裕がでてきたら1セットごとの回数を増やします。慣れてきたら足を閉じて左右のひざをくっつけて行いましょう。強度が上がります。
イスに座ったままできるトレーニング
背筋を伸ばし、足は腰幅程度に開いてイスに腰掛けます。肩の力を抜いて、膣を締める・緩めるをそれぞれ5〜10秒×10回行います。1日5セットほど実践してみましょう。
骨盤底筋トレーニングの注意点
骨盤底筋トレーニングは尿漏れ予防に効果的ですが、産褥期(産後約2か月間)には控えましょう。産褥期は安静にしていないと、会陰や帝王切開の傷の回復が遅れたり、傷の回復が遅れることで感染症を引き起こしたりする可能性もあります。また、産後はホルモンバランスの急激な変化があるため、体調不良を起こしやすいといわれています。
したがって、トレーニングを行うのは産褥期を過ぎてからがおすすめです。ただし、産褥期が過ぎていても、痛みや不調がある場合は無理に行わないでください。(※2)
尿漏れを治療するお薬はある?
腹圧性尿失禁には保険適用のクレンブテロール塩酸塩(スピロペント)などが用いられます。これは尿道括約筋の収縮力が上がり症状が改善する可能性があるお薬で、一般臨床試験での臨床改善度は48.8%と、約半数の人に改善傾向が確認されています。(※3)
服用の注意点
クレンブテロール塩酸塩(スピロペント)は、腹圧性尿失禁以外の尿失禁には使用してはいけません。また、妊娠中・授乳中は、治療による有益性が薬の服用によるリスクを上回ると判断される場合にのみ使用可能です。動物実験では、妊娠後期に投与すると「子宮筋の収縮を抑制して分娩遅延を起こす」「胎盤通過性を有する」「乳汁への移行性を有する」ことが報告されているため、薬を服用する場合は必ず医師・薬剤師の指示を守りましょう。(※3)
副作用について
クレンブテロール塩酸塩(スピロペント)を服用することで、下記のような副作用があらわれる可能性があります。
・振戦(手、頭、声帯、体幹、脚などのからだの一部に起こる震え)
・発疹、頭痛、動悸、吐き気など
とくに、キサンチン系気管支拡張剤、ステロイド剤、利尿剤の併用により、血清カリウム値が低下する可能性があるため、これらの薬剤を普段から使用している重症喘息患者は注意が必要です。
こちらのお薬は医師の処方箋が必要ですので、まずは医療機関を受診してご自身の症状について相談しましょう。薬を処方してもらう際は必ずお薬手帳を提出し、普段服用している薬について医師・薬剤師にしっかり伝えてください。(※3)
尿漏れはセルフケアで解消できる!
腹圧性尿失禁は薬物治療だけに頼るのではなく、骨盤底筋の筋力アップのトレーニングも並行することが改善のカギです。今回ご紹介したトレーニングはイスに座りながらできるものもあるので、家事や仕事の合間など、ぜひスキマ時間を見つけて試してください。
<参考文献>
※1 河内美江 日本看護研究学会雑誌「出産後3年以内の女性の尿失禁と出産との関連性」
※2 医療法人やすだ 堀口記念病院「産後にやってはいけないこととは?産褥期の正しい過ごし方について解説」
※3 KEGG MEDICUS「医療用医薬品 : スピロペント」
PROFILE
ヨガインストラクター・ライター
高橋かなこ
2021年よりRYT200(全米ヨガアライアンス認定)修了インストラクターとしてオンラインを中心に幅広い年齢層へのヨガレッスンを担当。企業での事務経験から、デスクワークで疲れた部位や崩れた姿勢のためのレッスン組み立てを得意とする。自身のダイエット成功経験から、美しい体を作るためには食の大切さや思考も大切だと痛感。同じように悩む人に向けて精力的にメディアでの情報発信を行う。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行っている。
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-Youtubeチャンネルで簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010005
●Medical Health CH:https://www.youtube.com/playlist?list=PLha9jt4tT7-xa-y83vBY8Ir-1-FqAYyWj