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早発閉経と診断され、妊娠が難しいとわかり落ち込む日々。夫の出会いを経て、悩んでいる人の背中を押したいという気持ちが芽生えた【気象予報士・千種ゆり子インタビュー】

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映画撮影中の真剣な表情の千種さん。

24歳のときに生理不順から婦人科を受診し、26歳のときに早発卵巣不全=早発閉経と診断された千種ゆり子さん。千種さんは脱炭素キャスター、気象予報士、防災士、映画プロデューサーなどで活躍しています。インタビューの1回目では、自身の体のことにフォーカスして話を聞きましたが、今回は夫との出会いや、映画制作のことについて聞きました。

自身が妊娠が難しいと知って、どん底まで落ち込む日々

幼稚園時代の現在の夫さんと千種さん。

――早発閉経と診断されたときのこと、そのころの治療のことを教えてください。

千種さん(以下敬称略) 24歳で婦人科に行き始めて26歳の終わりごろにその診断がついたのですが、「やっと妊娠に向けてしっかりした治療が始められる」という気持ちと、最初の不調があったときから、ちゃんと病院に行っていたのに「なんで診断をつけてもらえかったんだろう」という悔しさの、二つの気持ちがありました。

「妊娠が難しいかもしれない」とわかってショックもありましたが、まだ卵胞が残っている可能性を信じて、未婚ではありますが不妊治療に取り組もうと決めました。結婚は何歳でもできるけれど、不妊治療は年齢があがるほど難しくなるという現実があるので、まずは結婚よりも自分の体への対応を優先しようと思って治療に専念することにしました。

そんな中で、もう治療をやめようと、気持ちに区切りをつけたのが、30歳を目前にしたときで、そのときからは、子どもを人生の目的にするのではなく、一緒に人生を歩んでくれるパートナーを探すことにしました。最初は婚活サイトに登録したりしていたんですが、まだ自分でも、自身の状況を受け入れられていない状態だったので、「まわりの人は自分みたいに悩んでいないように見えるし・・・」と人間不信になりながら婚活していました。

――現在の夫さんと出会われたのはそのころですか?

千種 はい。夫は幼稚園時代の幼なじみなのですが、不妊治療をやめたあとに再会した形になります。そのころは新しい人と出会って1から関係を築いてというのが、とてもハードルの高いことに感じてしまっていました。「自分の子どもを産むのが難しい自分は、だれにも受け入れてもらえないんじゃないか?」みたいな、マイナスなことばっかり考えていました。

そんなときだったから、私のことを昔から知っているという存在に対して、ものすごく安心感を覚えたんですね。30歳を過ぎるまで夫本人と直接連絡取っているわけではなかったんですが、親同士がずっと年賀状のやりとりをしていたので、久しぶりに私から彼に連絡してみたのがきっかけになりました。

再会するまでの20年間、全然連絡をとってなかったんですが、なんとなくずっと頭に片隅に彼の存在はあって・・・。あと、幼稚園のとき仲よしだったので、一緒に撮った写真がいっぱいあって、大人になってからもアルバムを見返すたびに思い出していたのもありますね。

――夫さんと結婚を意識したのはいつごろですか?

千種 何回か会ってごはんを食べたりして、お互いにいいなと思って、おつき合いが始まったんですが、おつき合いを申し込まれたその場で自分の体のことは打ち明けました。そうしたら、夫から「別に子どもとかではなくて、ゆり子ちゃんと一緒にいたいと思うから」と言っていただいてうれしかったのを思えています。なので、つき合い始めたときから結婚が視野に入っていましたね。


――2人の間で、特別養子縁組のような選択肢も話し合いましたか?

千種 現時点では検討からははずしています。
自身の経験から映画のプロデュースをさせてもらっているのですが、普遍的な話にして届けたかったので、子どもがいる人の気持ちにも思いをはせるようにしました。その過程で“養子”という血のつながりのない子を家族として迎えることを検討した時期もありましたが、今は、映画制作などを通して社会全体で子どもを産み育てることに貢献するほうが自分らしいかな、という方向で気持ちが落ち着いています。ただ、今後の自分の環境によっては考えるかもしれず、そのときの状況に応じて柔軟に考えていけたらと思っています。

自分の体の"今"を知ることが、これからずっと先の未来につながる

仕事で忙しい中、プライベートでは趣味のカメラを楽しむことも。

――映画を制作することにしたのはどうしてでしょうか?

千種 若い女性に「婦人科に行くきっかけ」を聞いてみたところ、身近な人との会話がキッカケで、婦人科受診につながっているケースが多いことがわかり、映画はエンターテインメントなので、見たあとに友だちとかとも話しやすいかなと考えました。身体や婦人科について話すことの心理的ハードルを、この映画を通して、下げられたらと思っています。
みなさん、自分で思うよりずっとまわりから影響を受けているので、まわりの人とそういうことを話すきっかけを作ってもらえたらいいなと思って、『わたしかもしれない(仮)』という映画を作ってみようと思いました。
逆に、身近な人だからこそ打ち明けにくいという人もいると思うので、だからこそ、映画の登場人物という架空の存在の体験を届けることで、悩んでいる人の背中を押せたらと思っています。

――映画制作の話はどのようにして進んでいったのですか?

千種 まず、野本梢さんに脚本・監督をお願いして、次に、野本さんと一緒に映画を作ってきた映画プロデューサーの稲村久美子さんにエグゼクティブプロデューサーとして統括をお願いしました。

野本さんの作品は、あまり世の中に認知されていない悩みや思い込みを描いています。婦人科をめぐる女性の悩みは、多くの方が経験するものではあるけれど、自分の内に引っ込めてしまう方が多いと思ったので、野本さんに映画で描いていただきたいと思いました。

上尾市議会議員でもある稲村さんは4児の母で、心身に障害をもつ児童、不登校児にも開かれた教育という理念の基で、地域の子どもたちの居場所と教育の場を私塾として提供しています。10代の子どもたちと接する機会も多い方だったので、若い世代や母親世代の視点も入れていただいています。私は映画制作が初めてなので、2人にはたくさん助けていただきながら進めています。2023年に無事撮影がおわり、現在は完成・劇場公開に向けて動いているところです。

――映画の内容を少し教えてもらえますか?

千種 この作品の主人公は仕事やボランティアにいそしみ、彼との結婚を夢見てアクティブに過ごす「深山はるか」という女性です。はるかは友人から不妊治療中であることを告げられ、すすめられるがままに婦人科を受診し、「女性なのに男性ホルモンが多い」と診断を受けます。なんとなく不調ながらも日々をあわただしく過ごしながら迎えた、はるかにとってのある大事な日、予期せぬ出来事に襲われてしまいます。

1979年NHK朝の連続テレビ小説『マー姉ちゃん』で主役を演じた熊谷真実さんなど、20名以上のキャストに出演いただきますが、それぞれの人物像や人間関係などは、今後少しずつ公式SNS等で発表していけたらと思っているのでぜひフォローいただけたらうれしいです。

映画館は普段の日常的な空間とも距離があって、そういうところで見て感じることによって、登場人物の体験を自分の体験として追体験しやすいと考えています。
映画『わたしかもしれない(仮)』も、ぜひ映画館で見ていただけたらいいなと思います。

映画制作に携わってみてわかったのは、とにかくたくさんの方が映画制作にはかかわっていて、だれ一人欠かすことができないということです。スタッフ、俳優さん、マネージャーさん、協賛企業、ロケ地や衣装を提供してくださった方、医療監修をしてくださった医師、エキストラの方、クラウドファンディングをしてくださった方も含めると、もう数百人単位の人がこの映画にかかわってくださっています。その方々が「婦人科受診の大切さ」や、「自分の身体を知ることの大切さ」について考えてくれて、制作している今の時点でも、この作品に込めた私たちの願いが広がっていく様子をじかに感じられています。

――この作品をどんな人に見てほしいですか?

千種 少しでも体の不調を感じている女性や、将来子どもが欲しいかもと思っている女性にまず届いてほしいです。たとえば、「生理不順があるけどなんとなく放置しちゃってる」とか「子どもが欲しいとは思っているけど、まだ何もしてない」という人たちに見ていただきたいです。婦人科にかかることで、自分の体の”今”を知ることができ、当たり前だと思って我慢していたことを和らげる筋道が見つかるかもしれない。さまざまな選択肢を持って、日々を過ごしていけますように、との思いを込めています。

あとは、親世代です。10代のころは病院へ行くにも親と一緒に行くことがあると思います。なので、親世代が「婦人科受診なんて・・・」という考え方だと、そこで選択肢がなくなってしまうんです。なので、今10代20代の子を持つお母さん、お父さんにも知ってもらいたいです。
親が婦人科受診に否定的な意見だと、子どもも「あー・・・、これは話しちゃいけないことなんだ」と感じてしまうかもしれません。体のことを話すということは、子どもにとっても勇気のいることなので、まわりの大人が温かく受け入れてあげられたらいいのかなと思います。

そして男性にも、女性の身体に起こることを知ってもらいたいです。映画制作にあたっては、クラウドファンディングで資金を募りましたが、支援してくれた人の半分は男性で、私と同じ30代も多かったんです。将来自分の娘にも伝えていきたい、という言葉もいただきました。エグゼクティブプロデューサーの稲村さんが映画制作にあたって「国籍性別立場世代関係なく、すべての皆さまへ」と言っていて、まさにその言葉どおり、壁なくすべての人に見ていただきたいです。そして、自分の体のことを見つめなおしたり、まわりの人と話すきっかけになってくれたらうれしいです。

お話/千種ゆり子さん 取材・文/たまひよONLINE編集部

女性の体は10代から大きく変化していきますが、自分で変化を感じていても、なかなかまわりの人とは話しづらい雰囲気や、話すのが恥ずかしいと感じてしまう方も多くいると思います。千種さんの、つらい経験を発信していくという選択も、とても勇気のいる決断だったと思います。さらに、そこでは足を止めず、より多くの方に届くようにとクラウドファンディングを行い、映画制作するという行動力は、キャスターという伝える仕事をしている千種さんならではないでしょうか。

千種ゆり子さん(ちくさゆりこ)

PROFILE
脱炭素キャスター、気象予報士、防災士、富士見市PR 大使。1988 年 3 月 23 生まれ。埼玉県富士見市出身。一橋大学法学部を卒業後、一般企業に就職。幼少期に阪神淡路大震災で被災したこと、東日本大震災をきっかけに防災の道に進むことを決意。2013 年に気象予報士資格取得。 NHK 青森を経て、テレビ朝日「スーパー J チャンネル(土日)」や、 TBS 「 THE TIME, 」に出演。2021 年より東京大学大学院に進学し、地球温暖化と世論について研究。26歳のときに難治性の不妊症である早発閉経と診断されたことを公表、経験を語る活動も行っている。

映画『わたしかもしれない(仮)』

仕事やボランティアにいそしみ、彼との結婚を夢見てアクティブに過ごす深山はるか(25)は友人から不妊治療中であることを告げられ、すすめられるがままに婦人科を受診する。「女性なのに男性ホルモンが多いー」そう診断を受けたものの、忙しさの中で対症療法的に片づけてしまう。なんとなく不調ながらも日々をあわただしく過ごしながら迎えた、はるかにとってのある大事な日、それは襲いかかってくる。さまざまなすれ違いが起こり、気に病む中で、薬局で万引を疑われている中学生・優佳里と出会う。しだいに理想の一つであった“母になること”に固執をし始めるはるか。それは優佳里も同じであった。

映画『わたしかもしれない(仮)』公式

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年1月17日の情報であり、現在と異なる場合があります。

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