【切迫早産】5人に1人が経験!妊娠22週以前のプレママは絶対に見て!
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ほうっておくと早産につながってしまう状態が「切迫早産(せっぱくそうざん)」。実は、自覚症状がないまま、切迫早産と診断され入院! ということがあるのです。たまひよアンケート(2017年11月実施)によると、5人に1人が切迫早産の経験者と判明。最近増加しつつあるという切迫早産について、昭和大学江東豊洲病院 周産期センター長 大槻克文先生に詳しく伺いました。
切迫早産とは?
「『切迫早産』とは、正期産(せいきさん)に入る前の妊娠22週以降37週未満に早産につながるような兆候があることをいいます。その原因は細菌感染、子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)などさまざまありますが、原因がはっきりわからないことが多いのが現状です」
「切迫早産」は「早産になりやすい状態」のこと
「切迫早産と診断されたからといって、必ず早産になるわけではありません。医師の指示を守り、必要な治療を受ければ正期産で生まれることもたくさんあります。
一方、早産で生まれ、おなかの中にいた期間が短い赤ちゃんは、正期産で生まれた赤ちゃんに比べて体の機能が未熟なことが多く、感染症にかかりやすい、合併症を起こしやすいなどのリスクがあります。ですから早産を予防して、できるだけ正期産に入るまで子宮の中で育てることが大切です」
切迫早産の症状には、自覚できるものとできないものがあります。次の症状を参考に、異常を感じたら、かかりつけ医に相談してみてください。
【自覚できる症状】
●おなかの張り
「細菌感染で炎症が進み、絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)を起こした場合や、多胎妊娠の場合、また子宮筋腫の位置や大きさによっては、おなかの張りを感じることがあります。ただ、おなかの張りがあったとしても、おなかの赤ちゃんが苦しいということはありません」
●出血
「胎盤が子宮口にかかっていたり覆っていたりする前置胎盤や子宮口の近くにある低置胎盤(ていちたいばん)の場合、また子宮筋腫がある場合に出血することがあります。もちろんその他の原因でも出血することはあるので、出血したらすぐ医師に連絡して受診しましょう」
【自覚できない症状】
●子宮頸管が短い
●子宮口が開く
「炎症が子宮内にまで進んでいる場合は、おなかの張りを強く感じることはありますが、基本的に子宮頸管が短い、または子宮口が開いているだけでは、自覚症状はありません。症状がない場合は、健診をきちんと受け、チェックしてもらうしかないのです」
早産の兆候を見逃さないために知っておくべきことは?
ここ最近、早産は増加傾向にあります。その原因で最も多いのが、細菌による感染です。本来、腟には自浄作用がありますが、免疫力の低下などにより細菌が増殖し、炎症が進み、子宮頸管に達すると、子宮頸管がやわらかく、短くなります。さらに進むと子宮口が開き、早産になることも。しかも、ほとんど自覚症状がないのが現実なのです。
ここでは、早産の原因となる「子宮頸管」の異変やその影響、治療法などについて、大槻先生に一問一答でお答えいただきました。
Q.子宮頸管が短くなる・子宮口が開く 原因は?
A.子宮頸管が短くなったり子宮口が開いたりするのは、細菌感染による炎症です(※)。このこと自体に自覚症状はありませんが、結果として張りを感じやすい妊婦さんを調べると、子宮頸管が短かった、ということはよくあります。
※もともとの体質や、過去の手術の影響で子宮口が開きやすくなる「子宮頸管無力症」のケースもあります。
Q.どのようにして診断されるのでしょうか?
A.切迫早産と診断されるのは妊娠22週以降ですが、実際はそれより前に兆候があることも。診断基準としては、子宮頸管の長さが25mmを切るかどうかが1つのポイントです。25mmを切ると早産リスクが6〜7倍、20mmを切ると10倍になるというデータもあります。
Q.診断を受けたらどうなるのですか?
A.いちばんの治療は安静にすることです。おなかの赤ちゃんや羊水による子宮の重みで、子宮頸管が短くなり、子宮口を開かないようにするためには、横になることが大切。また、強いおなかの張りが伴う場合は張り止め薬を併用することもあります。
Q.安静以外の治療法はありますか?
A.おなかの張りがある場合は、投薬や点滴による張り止め薬を使用します。また、子宮頸管が25mmを切るなど、早産につながるリスクが高いと診断された場合、子宮口を縛る手術を行います。赤ちゃんが十分に成長する37週前後に抜糸し、お産を待ちます。
Q.短くなった子宮頸管長は元に戻りますか?
A.一度短くなってしまった子宮頸管は、完全に元に戻ることはありません。ただ、しっかりと安静にすること、または手術で縛ることによって、子宮頸管長の見かけの長さは長くなります。出産までは、引き続き経過を見ていき、安静を守る必要があります。
Q.お産はどうなりますか? 赤ちゃんに影響はありませんか?
A.早めに生まれることが多いですが、正期産前後の出産で、子宮内感染が起こっていない限り、おなかの赤ちゃんに影響はありません。また、子宮頸管が短い、子宮口が開いているような状態でお産になった場合、分娩の所要時間は短くなることが多いでしょう。
Q.切迫早産の予防はできますか?
A.妊婦さん自身にできることは、無理をしないこと、そして早産のリスクについてよく知ることです。妊娠は病気ではありませんが、妊娠前と同じような行動をしていいわけではありません。早産で生まれると、赤ちゃんの一生に影響することもあることを知っておいてください。
切迫早産になった妊婦さんの多くが「まさか自分が!」と思った、と振り返ります。自分には関係ないと思わず、早産のリスクをよく知って、おなかの張りに注意したり、健診をきちんと受けて、チェックしてもらいましょう。そのことが、おなかの赤ちゃんを守ることにつながります。(文・たまごクラブ編集部)
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■監修/昭和大学江東豊洲病院 周産期センター長 大槻克文先生
■参考:『たまごクラブ』2018年3月号「自覚症状がなくても『切迫早産』…の危険」