令和7年5月の戸籍法改正!全国民に送付される「振り仮名の通知」とは?今後はキラキラネームが制限される?(令和6年10月現在のまとめ)
来たる令和7年5月26日に、戸籍に関する改正法が施行されることが決まりました。この改正戸籍法により、氏名の「フリガナ」が戸籍に記載されるようになるのです。世間では「キラキラネームが制限される!?」などのうわさもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。もうすぐ出産を控える人たちや産後のママ・パパにどんな影響があるのか、しなければならないことは何かなど、法務省民事局で戸籍を担当している青山さんに話を聞き、現時点でわかっていることをまとめました。
改正戸籍法の施行で、令和7年5月26日から戸籍にフリガナが記載される
令和7年5月26日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」の一部が施行され、戸籍法の一部が改正されます。これにより、今まで戸籍には記載されていなかった「フリガナ」が、記載事項として戸籍に追加されることになりました。つまり、戸籍の証明書(戸籍謄本や戸籍抄本など)を取ると、フリガナも明記されるようになるのです。
【ポイント1】なぜ氏名のフリガナを戸籍に記載する必要があるの? メリットは?
「現在、戸籍にはフリガナが記載されておらず、氏名は漢字、ひらがな、カタカナで記載されています。漢字は、正字、俗字などさまざまな字体があります。身近なところで言うと、わたなべさんの「なべ」やさいとうさんの「さい」の字にはいろいろな字体があることが想像できると思います。そのため、氏名を漢字で検索しようとすると煩雑で時間がかかっていました。戸籍にフリガナを記載し、これを公証することで、データベースでの検索が効率化され、また、間違いが防げるようになるメリットがあります。
また、戸籍の証明書にフリガナが記載されると、私たちはこれを本人確認資料として使えるようになります。そして、1つの氏名でフリガナを複数使用して別人を装おうとするなどの不正な行為を防ぐことも期待されています」(青山さん)
【ポイント2】戸籍にフリガナが記載されるためには、だれが・どこで・何をすればいいの? 必要なものは?
今回の改正戸籍法による戸籍へのフリガナの記載は、改正戸籍法の施行後に生まれる赤ちゃんだけでなく、全国民、つまり、すでに戸籍のある人も対象になります。実際には、フリガナは、どのように戸籍に記載されるのでしょう。
「まず、改正戸籍法の施行後に出生した赤ちゃんについては、出生届に記載したフリガナが戸籍に記載されます。
次に、私たちのように、すでに戸籍に記載されている人については、令和7年5月26日から順次、本籍地の市区町村長から、戸籍に記載される予定のフリガナが記載された通知が郵便で届きます。この『戸籍に記載される予定のフリガナ』は、出生届の提出時に書かれ、住民基本台帳に登録されている『よみかた』が参考にされています。
この通知が届いたら、正しいフリガナが記載されているか、確認する必要があります。もし、通知に記載されているフリガナが実際のフリガナと異なる場合は、改正戸籍法の施行日から1年以内(令和8年5月25日まで)に、正しいフリガナの届出をする必要があります。フリガナの届出は、以下のいずれかの方法ですることができます。
1)マイナポータルを使用したオンラインによる届出
2)市区町村への郵送による届出
3)市区町村の窓口へ出向いての届出
なお、『氏』のフリガナは原則として戸籍の筆頭者が、『名』のフリガナは戸籍に記載されている各人が、それぞれ届出人となります」(青山さん)
【ポイント3】届出を忘れてしまったらどうなる? 間違えた場合は?
「フリガナの届出をしなくても、令和8年5月26日以降に、通知に記載されたフリガナがそのまま戸籍に記載されることになります。
なお、通知に記載されたフリガナが正しい場合でも、早期の戸籍への記載を希望する方は、フリガナの届出をすることができます。
また、フリガナの届出をせず、実際と異なるフリガナが記載されてしまった場合は、1度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに変更の届出をすることが可能です。しかし、届出をした後のフリガナを変更するには、氏名を変更するときの手続と同じく、家庭裁判所の許可を得て届出をする必要があります」(青山さん)
改正戸籍法の施行後は、記載できないフリガナがある。
これから出産を控えたママ・パパが気になるのは、出生届の出し方がどう変わるのか、また、フリガナについてはどう判断されるのか、ということでしょう。この点についても、青山さんに聞いてみました。
【ポイント4】つけたいフリガナが却下されることはある?どんなフリガナがNG?
「改正戸籍法で、氏名の振り仮名は氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない、という規律が設けられました。一般に認められている読み方かどうかは、我が国の命名文化や名乗り訓などが用いられてきた歴史的経緯も念頭に入れて、社会において受容され又は慣用されているかという観点から判断されることになります。具体的には、漢和辞典など一般の辞書に掲載されているものについては幅広く認められ、一般の辞書に掲載されていない読み方についても、届出人から個別に説明を聴いた上で、一般に認められているものといえるかどうかを判断することになる予定です」(青山さん)
たとえば、漢字の読みの一部を削除した読み方(例:心を「ここ」と読ませるなど)や、正式な読みではなくても、名に使った漢字と意味的に関連性のある読み方など、社会において受容されていることの説明ができるフリガナであれば、基本的には受理される予定とのことです。
ただし、下記のようなものは、社会を混乱させるものとして、認められない場合があるそうなので、注意が必要です。
・漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方:「高(ヒクシ)」など
・読み違い、書き違いかどうかがわかりにくい読み方:「太郎(ジロウ)」など
・漢字の意味や読み方と全く関連性のない読み方:「太郎(ジョージ)」「次郎(マイケル)」など
そして他の戸籍の届出と同様に、フリガナについても、市区町村の窓口の担当者によって審査が行われるとのこと。
「現在、市区町村における審査などの運用をお示しする通達等を検討中です。窓口担当者が判断に迷うものについては、管轄の法務局が判断をし、さらに判断に迷う場合は、法務省が判断を行うことになりますが、いずれにしても、全国の市区町村の窓口で統一的な審査が行われるようにしたいと考えています」(青山さん)
【ポイント5】フリガナを受理してもらえなかったら、出生届は提出できないの?
出生届は、赤ちゃんが生まれた日を含めて14日以内に提出することとなっており、正当な理由なく、この期限に遅れてしまった場合には、5万円以下の過料が科せられる場合があります。しかし、誕生から14日目ギリギリで出生届を提出した場合に、市区町村の窓口で「フリガナの判断に時間がかかる」と言われた場合は、出生届はどうなるのでしょうか。
「赤ちゃんが生まれた日を含めて14日以内に届出をすれば、市区町村の審査でフリガナの判断に時間がかかる場合であっても、これが理由で過料が科せられることはないので、安心してください。また、この場合で、仮にフリガナが認められなかった場合であっても、補正をすることが可能です。ただし、最初からフリガナを空欄にして出生届を出すことはできません」(青山さん)
【ポイント6】すでにつけてしまった上の子の名前が難読なフリガナだった場合は?
すでに出生届を出している上の子が、もし難読のフリガナだった場合、対応はどうなるのでしょうか。現在使用している読み方を認めてもらうための資料などの提出が必要になるのでしょうか。
「すでに戸籍に記載されている人については、フリガナが一般に認められている読み方でなくとも、『現に使用している読み方』がフリガナとみなされます。本籍地の市区町村長からの通知に記載されている、戸籍に記載される予定のフリガナは、住民基本台帳に記録されているものを参考にしていますので、基本的には、通知に記載されていることをもって『現に使用している読み方』と判断されます。したがって、通知に記載されているフリガナから変更がなければ、他に資料の提出を求められることはありません」(青山さん)
お話/青山琢麿さん(法務省民事局民事第一課補佐官・戸籍担当) 取材・文/酒井有美、たまひよONLINE編集部
現在、令和7年5月の改正戸籍法施行に向けて、法務省令や通達などを準備されている真っ最中とのことですが、基本的には「フリガナを幅広く認める」という方向性であるとのこと。これから出生届を出す予定のママ・パパには、安心された方も多いのではないでしょうか。また、これから法務省のホームページでも情報を充実させていくとのこと。WEBサイトで「戸籍 振り仮名」と検索をし、表示される「戸籍に振り仮名が記載されます」ページを随時チェックすると、情報をいち早くキャッチできるようです。
●掲載している情報は2024年10月現在のものです。