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いつか来る災害のために。医療的ケア児の親や周囲が心がけておくべきこと

訪問診療をしているお子さんの自宅に「防災・減災のてびき」を手渡す中村先生

ワンオペ育児、孤育て、長時間労働、少子化…。本特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、誰ひとりとりこぼすことなく赤ちゃん・子どもたちの命と健康を守る世界のヒントを探したいと考えています。

シリーズ連載「医療的ケア児の防災」第2回は、前回の記事「もうだめかも、医療的ケア児を抱え、死を覚悟した母 防災に心血を注ぐ医師の反省と決意」い引き続き、岡山県で在宅医療に取り組む医療法人つばさ・つばさクリニック理事長の中村幸伸先生に、いざという時の災害に備え、医療的ケアが必要な子の家族や周りの人たちが心がけておきたいことを聞きました。

心構え① できるだけ早めに避難する

2018年7月、岡山県で戦後最大級の被害をもたらした西日本豪雨が発生しました。岡山県は「晴れの国」と呼ばれ、災害が少ない地域でしたが、その油断が多くの人の避難の遅れにつながったといわれています。

中村先生が担当する医療的ケア児の中には、避難が遅れて自宅が浸水・停電し、人工呼吸器のバッテリーがなくなりかけて、あと数分遅れていたら命を落としていただろう子もいました。中村先生はこの災害を機にクリニックの防災対策を強化し、在宅医療を行う患者さんや家族への「防災・減災のてびき」を作成。その中で特に強調しているのは、「できるだけ早めに避難すること」です。

「医療的ケアがある子どもたちの多くが、避難に車が必要で、かつ多くの時間がかかります。特に水害発生時はマフラーが水没すると車が動かなくなってしまいますから、大雨警報や洪水警報、氾濫警戒情報などが発令される『避難準備・高齢者等避難開始(警戒レベル3)』のうちに、すみやかに避難場所に移動してください。実際には空振りで終わることも多々あるのですが、命を守るためにも早めの避難行動をとることが大事です」

心構え② 病院に行けなくても3日間やり過ごすための準備をしておく

中村先生が担当している医療的ケア児の家族が、車に常備している「避難セット」

2018年の西日本豪雨の時、在宅医療をしている患者さんが、かかりつけの病院や大きな病院に避難させてもらおうとしたものの、その多くが断られたといいます。

「病院では大けがをした人や入院患者が優先です。特に医療的ケア児は災害拠点病院になるような大きな病院が主治医になっていることが多く、そういった病院では大けがをした人や入院患者が優先なので、避難のための入院は困難です。訪問看護師やヘルパーも、自分たちが被災したり道がふさがれたりして、救助に行けない可能性が高いでしょう。病院に行けなくても、何とか3日間やり過ごす用意をしておいてください。飲料水や薬、食事・栄養剤、おむつや口腔ケアなどのケア用品、吸引・経管栄養・導尿などに必要な医療用具を3日分、すぐ持ち出せるように置いておきましょう。バッテリーや、電源を使用しない吸引機なども準備しておくといいですね」

心構え③ 自分の家や地域の様子を把握しておく

地域のハザードマップを見て、住んでいる場所に津波や豪雨、土砂災害などの危険がどの程度あるか、前もって確認しておきます。

「どういった住まいでどのような生活をしているかで、災害時の動きは違ってきます。たとえば洪水が起こった時、一戸建てに住んでいる人はすぐに避難所に逃げたほうがいいですが、マンションの高層階に住んでいる人はそこにとどまったほうが安全です。ただし、人工呼吸器を使用している場合は、高層階に住んでいても停電の心配があるなら電源が確保できる場所に避難しなければいけません。非常時を想定して、前もって避難の方法や経路をシミュレーションしておきましょう」

心構え④ 地域の人たちに協力をお願いしておく

本人や家族だけでの移動や避難が難しい場合は、隣近所の人たちに協力をお願いしておくことも大切です。

「東日本大震災や西日本豪雨では、危ういところで助かった方の多くが、近所の人の手を借りていました。命の分かれ目の時、力を借りられるのはやはり近くにいる人です。ぜひ日ごろから地域の人たちとつながり、助けを求める声かけをしてください」と中村先生は強調します。

「多くの自治体が、災害時に支援が必要だということを登録できる『避難行動要支援者名簿』を作成していますので、登録しておきましょう。他にも自治体によっては独自の対策を実施しているところもあります。例えば岡山県の小児科医会では2019年から、災害発生時に電源・避難場所を提供する施設と、障害を持つ子どもや人をマッチングするシステム「ぼうさいやどかりおかやま」の運用を開始しました。どこにでもこういうサービスがあるわけではありませんが、地域でどんな対策をとっているか調べておくといいですね」

取材・文/武田純子

「災害はいつ自分事になるかわからない」。東日本大震災をきっかけに、幾多の災害が発生するたびに、私たちは強く実感するようになりました。特に医療的ケア児は、避難の遅れが命に直結する可能性があります。すみやかな避難と安全の確保のために、まずは日ごろの準備から始めることが大切です。

中村幸伸先生(プロフィール)
1977年島根県生まれ。2002年鳥取医学部医学科卒業後、倉敷中央病院に入職。2009年、岡山県初の在宅診療専門所「つばさクリニック」を開設。2014年「つばさクリニック岡山」を開業。著書に『畳の上で死にたい 「悔いなき看取り」を実現した8家族のストーリ―』(幻冬舎)がある。

(取材・文 武田純子)

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