アラフォーママならわかる、カセットテープの思い出【御手洗直子のコマダム日記】
今回は直子の耳のお話。大センセーションを巻き起こした「婚活コミック」著者、御手洗直子さんが結婚して2児の姉妹の母に。あいかわらずのつっこみどころ満載の日々、渾身のひとコママンガ&エッセイでお送りします。「つっこみが止まらないコマダム日記」#64
今だったら絶対にフォルダから外す曲順
今は音楽データをフォルダに入れて編集も自由自在になったが昔はCDからカセットテープにダビングしていたため、編集はほぼ不可能であった。借りてきたCDをそのまま順番にカセットにダビングし、曲順を入れ替えることもできずに最後はツメを折っていた。ここまで読んで『カセット?』『ツメ?』と思った若人はまあ、そんな遺物が過去にあったという事だけ頭に入れておいていただけるとありがたい。つまり昔の音楽メディアは実質再編集不可能であったのだ。
アッ、でもツメを折ってもセロテープを貼れば再度録音できるんですよ。この知識が再度日の目を見ることがあるのだろうか。
さて、それでも音楽にこだわりのある人はアーティストごと、またはジャンルごとにカセットを変えてカテゴライズされた編集をしていたのかもしれないが、私は違った。その時借りてきたCDをそのまま適当に一本のカセットに入れていくという労力ゼロの編集(?)をしていた。
さて、そういうことをしているとどうなるかというと曲順が『PipeLine/The Ventures 』→『Take On Me/a-ha』→『だんご3兄弟/速水けんたろう』という感じになるのであった。せめて洋楽と邦楽を分けるべきなのである。その後は『スーパーユーロビート'02』→『Born Slippy Nuxx /Underworld』→『ドリフのズンドコ節~ヒゲダンスのテーマ』と続く。違うんだ。聞けばわかるんだけどリズム的には同フォルダなんだ。たぶん。
その後のMD、MP3の登場によってデジタル化された音楽データでは『アッ違うな』と思った曲は曲順もフォルダ分けも自由自在になった。しかし気分次第で編集できてしまうと固定フォルダとして確立せず少しずつ違うフォルダへと変わっていってしまう。大変流動的であり、つまりは唯一無二の状態で固定された自分だけの音楽フォルダは存在しづらくなってしまった。
そして絶対的に固定されスキップもろくにできず強制的に聞かされ続けていた曲順にはその曲順でしか摂取できない感情が含まれている。昔のカセットには音楽とともに当時の感情がそのまま収録されているのである。なぜ当時の私はジャネットジャクソンのアルバムの後にテープがちょっとだけ余っててもったいないからと『おさかな天国』を入れてしまったのであろうか。『だんご3兄弟』といいハヤリ物に弱い。
昔は良かったと不便を肯定してしまうわけではない。
しかし、不便の中にあった青春はたしかに存在するのだ。(おわり)
御手洗直子
Profile pixivで大人気。累計閲覧数1100万を誇る爆笑コミックエッセイスト。なんでそんなにネタ満載人生を・・・という謎の人。既刊に「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」「31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる」(共に新書館)、「腐女子になると、人生こうなる!~底~」(一迅社)、「つっこみが止まらない育児日記」「さらにつっこみが止まらない育児日記」(ベネッセコーポレーション)など。たまひよのサイトで、数話限定公開中。
御手洗直子twitter:@mitarainaoko