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男性の育休取得率が5%も増加、その3つの理由って?

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若いアジア系の家族の肖像画
itakayuki/gettyimages

特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

今回のテーマは、男性の育児休業取得について。
「こどもを社会全体で育てる文化を作る」ために活動を続ける『みらい子育て全国ネットワーク』代表の天野妙さんにお話を聞きました。

前編では、「令和2年度雇用均等基本調査」で男性の育児休業取得者の割合が1年で5%も増加したことについて、天野さんとさまざまな角度から考えます。

男性育児休業取得者増加の3つの要因

――― 「令和2年度雇用均等基本調査」において、男性の育児休業取得者の割合が7.48%から12.65%、同様に育児休業者がいた事業所の割合も10.5%から15.8%となりました。その背景をどのようにとらえていますか?

天野妙さん(以下天野、敬称略):たった1年で5%上昇するのは、本当に驚異的な数字なんです。これまでの約10年で5%しか上がりませんでしたからね。

増加の要因は三つあると考えています。

一つ目は新型コロナ感染症の影響で多くの人が在宅ワークや、休業をせざるを得ない状況ができました。その結果、以前に比べて働き方が多様となり大きく変わったことから、育児休業を取得しやすく変化したことがあるかと思います。

二つ目は当事者の変化です。この数年で、SNSなども含めて男性の育休に対する発信がとても増えています。特に、「育休とりたい」から「育休とるの当たり前」といった新しい価値観の世代に男性育休のバトンが渡されてきたことが大きいと感じています。

三つ目は企業側の変化です。2019年6月に「男性の育休義務化をめざす議員連盟」ができて、メディアにも大きく取り上げられました。同時期にカネカのパタハラ(パタニティハラスメント)事件が炎上したこともあって、企業側がその必要性やリスクを実感し、世の中の空気を一気に変えていったのだと思います。

――― 業種によって取得率の差はあるのでしょうか?

天野:顕著に現れています。例えば、業界内競争の激しい生命保険や金融は、取得率がとても高いです。人材獲得競争が盛んな業界では、どこか1社が始めれば、ライバル会社も追従しなくてはなりませんから。取得日数の期間が短いケースが多いですが、まずはたとえ1日でも対象者が育休を取得したことに大きな意味があります。

新卒採用の場合はもちろん、最近は業界内を渡り歩く転職も活性化していますから、業界内競争はとても重要なんです。

取る・取らないではなく、「男性も育休が取れる」という事実を知ることから

――― 2023年4月1日から、育児・介護休業法が改正、段階的に施行されます。そのなかで従業員数が1,000人を超える企業は、育児休業等の取得状況の公表を義務付けられています。そうすることで、公表を義務付けられていない中小企業との育休取得率の差が開いてしまいませんか?

天野:従業員数が100人-300人の中小企業は、大企業に比べれば育休の対象となる人数は少ないはずなんです。それなら他のライバル企業に先んじて育休100%取得を打ち出していく方が、「この会社は働きやすい」と思ってもらえますよね? 同じ業界の同じ規模の会社への就職を考えている人にとって、男性も育休が取れることは大きな魅力になるはずですから。競争に打ち勝つためには、他の企業がやるのを待つのではなく、先に始めた方が得です。

――― 2023年4月1日に「育児・介護休業法」が施行されると、取得率はさらに増加すると思われますか?

天野:やはり法律には大きな効果があると思っています。実際に現段階でもまだ「男性は育休を取れない」と思っている人もたくさんいますので、まずは「男性も育休が取れる」という事実を知ってほしいです。実際に「取る」「取らない」はそのあとの話です。

「男性も育休が取れる」ことが認知されれば、当然取得率は上がると思います。

言い続け、やり続け、仲間を作った先の奇跡

――― 2019年3月には、天野さんご自身が参議院予算委員会公聴会で「男性の家庭進出」について話されています。

天野:私が国会の場で伝えたり、それまでに言い続けてきたりしてきたことは、男性育休の流れを変える一つの契機になったのかもしれません。しかし、その後に、カネカパタハラ事件が起きたり、小泉進次郎さんが結婚、育休をとられたりするなど、この話題は途切れることはありませんでしたし、同時多発的に色々な場所で、このイシューに関する発信が複数起きていたと思います。

なかでも、私が国会で話した後に国会議員の方が主体的に「男性の育休義務化をめざす議連」を設立され、現役の国会議員メンバーが54人も集まったことは驚きでした。それは多様な考えを持つ議員の皆さんであっても「男性の育休取得率を上げること」は、多くの社会問題を解決に導くということに気がついていたからなのでしょうね。

たとえそれが小さな流れでも、言い続けて、やり続けて、仲間を作っていった結果が、法改正という小さな奇跡を起こしたのかもしれません。

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記事後編では、天野さんのご経験を基に、男性の育児休暇取得のメリットについて話を聞いていきます。

取材・文/米谷美恵

Profile【天野 妙】

合同会社Respect each other代表、みらい子育て全国ネットワーク代表。日本大学理工学部建築学科卒業。株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)等を経て、性別・役職・所属・国籍に関係なく、お互いが尊敬しあう社会づくりに貢献したいと考え、起業。ダイバーシティ/女性活躍を推進する企業の組織コンサルティングや、研修など、企業の風土変革者として活動する傍ら、待機児童問題をはじめとした子育て政策に関する提言を行う政策起業家としても活動中。

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