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「子どもが病気のときに預ける場所がない」、途方にくれた自身の経験から一念発起、20年間走り続けたその先に

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株式会社マザーネット代表取締役の上田理恵子さん

特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

激戦の保活や子どもの体調不良など、自身のつらい経験から「働くママをサポートしたい」と、2001年に育児支援会社を設立した上田理恵子さん。第2回では、ママたちの悩みに向き合い続けて見えてきた社会の課題や、これからの取り組みについて話を聞きました。

変わらない現状を変えた、病児保育サービス

上田さんが代表を務める育児支援会社では、産後の手伝いから病児保育、家事代行まで行う「マザーケアサービス」を筆頭に、悩み相談、自然体験スクールなど、ママのための様々なサービスを全国展開してきました。企業との法人契約も結び、保活コンシェルジュサービス・育児休業復帰セミナーなどを通じて、働くママの復職をサポートしています。

「実は、自分たちで考えたサービスは1つもないんです。行政にも民間にもなかった、リアルなママたちの『こういうサービスが欲しい!』という声を元に、事業を展開してきました」(上田さん)

会社設立は39歳のとき。当時、二児の母としてフルタイムで会社に勤務しながら「『キャリアと家庭』両立を目指す会」を運営していた上田さんの元には、2万件ものママたちの悩み相談が寄せられていました。その中で最も多かったのが「子どもが病気の時に預ける場所がない」という悲痛な声です。いてもたってもいられず「ママたちのために」という思いが高じて創業した会社・マザーネットで、まずは子育て経験のあるベテラン主婦を派遣する病児保育サービスを開始することにしました。ところが…。

「最初に病児保育サービスを始める時に、行政から電話があって、『もし、何かあったらあなたの人生が終わります。やめたほうがいい』とストップがかかったんです。

でも、リスクを心配して誰もやらず、何も変わらない現状を長年ずっと見てきました。私たちの欲しいサービスは、私たちで作らないといつまでたっても世の中にないまま。そんな思いで作ったマザーネットのサービスが新聞で紹介された時には、『スタッフとして協力したい』『利用したい、助けてほしい』という方々からの電話が鳴りやまないほどでした」(上田さん)

こうして始まった「マザーケアサービス」。実際に病児のケアを担当する「ケアリスト」と呼ばれるスタッフの採用には細心の注意を払い、上田さんと副社長だけが面接して、上田さんは1時間、副社長は1人3時間もの面接を行います。

「安心して自宅にケアリストを迎えられるように、面接時に長時間の厳しいチェックをした上で、さらに採用後の指導も行います。おかげさまで多くのお客様から『マザーネットからはどんな人が来ても安心』と評価していただいています。家族ぐるみのお付き合いで、お子さんが0歳から18歳になるまで継続してご利用いただくご家庭もいらっしゃいます」(上田さん

コロナ禍で増えた「孤独」の悩み

20年以上の長きにわたり、多くのママの悩みに向き合ってきた上田さん。最近のママの悩みに変化はあるのでしょうか。


「病気なのに預ける場所がないという悩みは昔と変わらず、病児保育のニーズは高いですね。また、コロナ禍なので公園をお散歩しても誰とも出会えないという話をよく聞きます。何気ない子育て相談ができる場所が少なく、ママ友もできず孤独を感じている人が多いことが気になります。私たちも会員同士のオンラインサロンを開いたり、直接ママたちに電話して様子を伺ったりしています」(上田さん)

ただ、コロナ禍でせめてもの幸いだったのは、テレワークが進んだことだと上田さんはいいます。

「週1,2回程度でも、通勤時間がなくなって楽になったという声はよく聞きます。ただ、コロナが落ち着いてきたら、テレワークを元に戻そうという企業も多いようです。実際、誰もやめようとは言い出していないのに、何となくの雰囲気の中でテレワークが終了するケースも出ています。

テレワークは育児と仕事の両立を大きく後押しします。私自身、もしうちの子たちが小さい時にテレワークができていたらどんなに良かっただろうと思います。子どもが小学校から帰って来たとき、『お帰り!』と声をかけたかったです。ママだけでなく、いろいろな人の多様な働き方を尊重する上でも、テレワークはぜひ残してほしいと企業の方々に働きかけています」(上田さん)

「女性活躍の時代」のために私たちができること

近年、育児と仕事の両立を支援する企業が増えています。上田さん自身も各企業に働きかけ、病児保育の利用料の補助制度を実現するほか、講演・セミナーも積極的に実施してきました。ただし、本当の意味での「女性活躍の時代」を迎えるまでには、かなり時間がかかりそうだと上田さんはいいます。

「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)という言葉がありますが、女性がいくら頑張っても、周囲がいくらサポートしても、いまだに『男性は仕事優先、女性は家事・育児』といった根強い思い込みがあり、なかなか世の中は変わりません。また、管理職になりたいと思う女性が増えるには、企業がもっと働きやすい環境を整えることも大切です。社会の変化のスピードを速めるために、より企業が変化していけるような取り組みに力を入れていきたいと思います」(上田さん)

2020年5月には、関西経済同友会の「子育て問題委員会」の共同委員長に就任して、国や企業に子育て支援の大切さを訴えてきた上田さん。 2021年9月には、著書「女性活躍が企業価値を高める~子育て中の部下を持つ経営者・上司のためのマニュアル」を出版し、経営層への働きかけも行っています。

「誰かが一歩を踏み出さないと、世の中は結局変わらないことをこれまでの活動で実感してきました。1人では言いにくいことでも、大勢の声として伝えることで大きな変革の力になります。これからもママたちの声を代弁して、アクションを起こしたいと思います」(上田さん)

最後に、上田さんに「どんな時にやりがいを感じますか?」と聞きました。「会員数は1万人以上と規模は大きくなりましたが、創業当時と同じく1人1人に向き合い、助けることができた時に一番の喜びを感じます。その初心を忘れず、これからもママたちをサポートしていきます」と力強く語った上田さん。私たちも、ママ同士お互いに支え合いながら、より良い未来のために自分にできることから地道に取り組んでいきたいですね。

上田理恵子さん(プロフィール)

1961年生まれ。鳥取県米子市出身。大阪市立大卒業後、ダイキン工業にエンジニアとして入社。2人の子を育てる。2001年に同社を退職し、ワーキングマザーを総合的に支援する株式会社マザーネット(大阪)を創業。育児・家事代行をはじめ、急な子どもの発熱時にも対応するマザーケアサービスを中心に、育児休業中や管理職を対象にしたセミナーなどを展開している。著書に「女性活躍が企業価値を高める~子育て中の部下を持つ経営者・上司のためのマニュアル」(神戸新聞総合出版センター)など。関西経済同友会「女性活躍委員会」の共同委員長を務める。

株式会社マザーネット

(取材・文 武田純子)

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