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「不妊も出産も当事者になって初めて自分事になる」 鈴木おさむにインタビュー

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放送作家として、ドラマや映画など数々のヒット作を生んできた鈴木おさむさん。男性不妊がテーマの小説『僕の種がない』で描きたかったことや自身の家族について、じっくりお話を聞きました。

男性不妊は大切なテーマ。だから小説で描きたかった

――小説で男性不妊を描こうと思ったきっかけはなんでしたか?

鈴木さん(以下敬称略) 僕は2015年に子どもを授かったんですけど、妻がその前に2回、流産を経験しているんです。うちって不妊?と思い始めたころに、まわりの同年代の人たちからも不妊治療の話が出てくるようになって、子どもを授かることの難しさを感じていたんですね。僕は11年に『生まれる。』っていうドラマの脚本を書くため不妊治療のことを調べていて、妊活中に僕も精子検査に行ったら、精子の運動率や形に問題があるという結果が出て、自分に不妊の原因があったのかもしれないと思ったんです。

そのとき『生まれる。』で知ったこととか、いろいろなことが点と点でつながって。赤ちゃんって女性の体の中で育つものだから、女性に不妊の原因があると思われがちですが、精子と卵子のことなので、当然、その要因はフィフティー・フィフティーだということに僕自身、初めて気づいたんですね。それを世の中に伝えたいと思ったのがきっかけです。命や男性不妊は自分が大切にしているテーマなので、いちばん手のかかる方法で伝えるため、小説で描こうと思いました。

人を傷つけるかもしれないエンタメの作り手の功罪

――この小説には、命や出産、また人生に対する、鈴木さんのどんな思いを込めたのでしょうか?

鈴木 いちばん伝えたかったのは、子どもが生まれるのは奇跡だということ。みんな普通に生きてますけど、生まれてきたから生きているわけですよね。不妊とか流産に直面して、初めて出産って奇跡だと思いますけど、普段はなかなか実感しにくくて。そういう思いもあって、産婦人科医の先生が主人公に堕胎とは何かを説明するところは、かなり気合を入れて書きました。

もう一つは、小説内の登場人物の2人、エンタメの作り手であるディレクターの勝吾と芸人の一太の生き方です。一太は自分の生きざまで人を笑わせてきましたけど、勝吾には自分が命をかけてやっている仕事でだれかを傷つけているっていう問題があって。僕は、『めちゃイケ』(『めちゃ×2イケてるッ!』)っていう番組をやっていたときに、加藤浩次さんのお子さんの出産に密着したことがあったんです。当時のスタッフはみんな若くて子どももいなかったから、迷いなく「面白いじゃん!」ってやりましたけど、出産の難しさを知っている今だったら、絶対に止めてます(笑)。

ある時期から、バラエティー番組が出演者の人生に深く介入するようになりましたけど、今だったらどうだろう??ということや、ディレクターの功罪について考えるんですよね。面白いものを作ろうとする者の正義は、別の視点から見たら悪になることもあって。だから、主人公の勝吾って少し悪者に見えると思うんですけど、あえてそういう存在として描きました。

――この物語でも描かれる「生と死」は鈴木さんの表現の大きなテーマの一つですよね。お仕事の中で、このテーマはどんな位置付けなのでしょうか。

鈴木 よく、簡単に人を死なせて、って言われるんですけど(笑)。でも、死って人生最大のドラマですし、死を描くことでいちばん、人間が見えるんです。僕は最近よく「自分事と他人事」って言うんですけど、たとえば、流産はある程度の確率で起こりますけど、経験するまでは、自分がその確率に入るとは思いにくくて。親が病気になることもそうだし、だれかの身に起きて「大変だね」って言ってきたけど、自分が当事者になって初めてその大変さを知って、前は本気でそうは思ってなかったことに気づくんですよね。そのいちばん大きい出来事が、死だと思うんです。だからこの小説でも、人が死ぬことと命が生まれることを同時に描きたいっていう気持ちが強かったですね。


撮影/なべ 取材・文/川辺美希 構成/ひよこクラブ編集部

不妊の原因は男女ともにあるといわれますが、男性不妊についてはまだあまり理解が広まらない現状があります。パートナーと一緒に調べることや知ることが大切なのかもしれません。



参考/『ひよこクラブ』2022年3月号「鈴木おさむさん SPECIAL INTERVIEW PLUS」

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

鈴木おさむ(すずきおさむ)

PROFILE
1972年、千葉県生まれ。19才で放送作家デビュー。バラエティーを中心にテレビ番組の構成・演出を手がけるほか、映画・ドラマの企画・脚本・監督や舞台の作・演出、小説の執筆でも活躍。2002年に森三中の大島美幸さんと結婚。1児の父。

『僕の種がない』

テレビ業界で生きる主人公を中心に、妊娠・出産をめぐり悩み、生きる人々の姿や男性不妊治療の実情をリアルに描く、著者渾身(こんしん)の物語。(1650円/幻冬舎刊)

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