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赤いサイコロなのに「黒いサイコロだ」と言った2歳の息子。色覚異常の子どもに気づける5つのサインとは?【眼科医】

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子供の手に目を見る
※写真はイメージです
Tetyana Linnik/gettyimages

色覚異常は珍しい病気でなく、日本人男性は20人に1人の割合で発症するといわれています。2人の息子さんがいて長男に色覚異常がある、東京女子医科大学病院 眼科で色覚外来を担当する中村かおる先生に、自身の経験と色覚異常をもつ子の子育てポイントについて聞きました。

産後、実の父親から「自分は色覚異常だから」と告げられる

中村先生が、長男の異変に気づいたのは、2歳のときだったと言います。

――中村先生の息子さんは色覚異常とのことですが、わかった経緯を教えてください。

中村先生(以下敬称略) 先天色覚異常は、ほとんどが遺伝性です。
私が長男を出産したとき、父に「自分は色覚異常なんだ」と言われました。男の子には遺伝する可能性が50%だからちゃんと伝えてくれたのでした。
私が父と一緒に生活していたころには、父が色覚異常とはまったく気づきませんでした。

――息子さんの色覚異常に気づいたのは、何歳ごろでしょうか。

中村 父からそのように言われたため、息子の様子にアンテナを張っていたので比較的早く気づきました。当時、色覚専門ではありませんでしたが、私も眼科医だったので、それなりに知識はあり、よりアンテナを張っていたと思います。

最初に「おや?」と思ったのは、息子が2歳のときです。ペンの先の透明なケースの中に入っている小さな赤いサイコロを見て、息子は「黒いサイコロだ」と言いました。
また、言葉の発達は少し遅かったのですが、色の名前を覚えるのはさらに遅かったです。ほかにも気をつけているといろいろな色間違いに気づくようになり、そのため4~5歳ごろまでに私が検査をし、さらに色覚専門の先生に診てもらい、色覚異常と診断されました。息子は赤を感じる細胞がない「1型2色覚」でした。

――中村先生が息子さんとのかかわり方で気をつけたことを教えてください。また、息子さん自身が困っているなと感じたりしたことはありますか。

中村 色覚異常は、現代の医療では治療できない病気です。また色覚異常にはいくつか種類がありますが、ほとんどの場合は日常生活に支障はありません。そのため息子のことは、見守っていた感じです。

息子本人にも、とくに困っている様子はなかったです。紺色のシャツを、よく紫と言うので、「その色はほとんどの人には紺色に見えるよ。あまり紫って言わないほうがいいね。あなたは、色の見分けはちょっと弱いからね」と、幼いころから伝えていました。
そういうふうに伝えることで、苦手な色を意識してもらう目的がありました。

――息子さん自身が、色覚異常と知ったのは何歳のときでしょうか。先生が伝えたのでしょうか。

中村 私は前述のような言葉をかけていたので、息子自身は理解していると思っていたのですが、高校生になったある日、ふとした会話から「色覚異常よ」と伝えたら、「えっ? おれってそうなの?」と驚き、それに私も驚きました。色が見分けにくいことは理解し、対策も講じていて、専門家の目で見ても色間違いは非常に少なくなっていて生活にも支障はないのですが、色覚異常という診断名には結びついていなかったようです。

「色の名前だけ覚えられない」「色をよく言い間違える」がサイン

小さい子は、言葉の言い間違いなどはよくあることなので、家庭で色覚異常に気づくのは難しい、と中村先生は言います。しかし注意して子どもの様子を見ていると、気づけることもあるそうです。

――息子さんの場合は、遊びの中で色覚異常を疑ったとのことですが、ほかにはどんなことで気づけるのでしょうか。

中村 もし次のような様子が見られたときは、念のため眼科を受診してください。とくに遺伝の可能性がある場合は、よく注意して子どもの様子を見てみるといいと思います。

1)言葉の発達に遅れはないけれど、色の名前だけ、なかなか覚えられない。
2)色の名前をよく言い間違える。
3)お絵描きのときに、暗い色を多用する。
4)木を描くときに、幹、枝、葉をすべて茶色など、同じ色で塗る。
5)おもちゃの整理などで色分けをするときに、特定の色だけ間違える。


――もし色覚異常と診断されたとき、家庭ではどのようにかかわっていくといいのでしょうか。

中村 私は診察のとき、未就学の子をもつママやパパには穏やかに見守ってあげてくださいと伝えています。色の言い間違いなども、いちいち指摘する必要はありません。ただママやパパには、対策を講じていくように伝えています。

――対策とは、どのようなことでしょうか。

中村 子どもが苦手な色を把握して、色だけで見分けない対策を考えていくことです。たとえば赤信号などが、日光の当たり具合によって見えにくい子もいます。「歩行者用の信号は、上が赤、下が緑だよ」と位置で覚えて確かめるように教えていくことが大切です。
またママやパパは「その赤いの取って」など色だけで言わずに、「その赤いペンとって」など、物の名前とセットで伝える習慣を作りましょう。そのほうが子どもにはわかりやすいです。
また幼稚園などの先生にも、色覚異常であることは伝えておいたほうがいいでしょう。文部科学省の啓発によって、幼稚園などでも理解が深まっています。

――教育現場などでは色のバリアフリーは進んでいるのでしょうか。

中村 ユニバーサルデザインという考え方で、すべての人に情報が正しく伝わるように配慮されたデザインが普及しており、教科書などでも、色覚異常に配慮した見やすい色を使用する取り組みが進んでいます。
たとえば磁石のN極とS極は、昔は茶色と緑とか赤と黒などで色覚異常の子には見づらかったのですが、今は赤と青でNとSの文字が大きく表示されるなど見やすいように配慮されたりしています。
ただ先生たちの色覚異常への理解や配慮には、まだ個人差があるようです。
日常生活には大きな支障はないけれど、見えにくい色がある子どもはいます。そのような子どもたちが迷ったり、困ったりしないような声かけや授業の進め方をしてほしいと思います。

取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

お話・監修/中村かおる(なかむら かおる)先生

中村先生は診察のとき、就学後の子には「友だちを作って、困ったときは友だちに聞くといいよ」とアドバイスしています。中村先生の長男は、IT関係の仕事をしていたときに、細い配線で色がわからないと、その業務だけ、同僚に頼んで代わってもらっていたそうです。

※色覚に関しては、学術用語以外に作られた用語があります。この記事は日本医学会や日本眼科学会が現在使っている「色覚異常」という表現を用いました。

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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