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日本人男子の20人に1人はいるといわれる色覚異常。治療法はない、それでも早期発見が重要なワケ【眼科医】

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描画する親子
※写真はイメージです
yamasan/gettyimages

色覚異常は珍しい病気でなく、日本人男性は20人に1人の割合で発症するといわれています。東京女子医科大学病院 眼科で色覚外来を担当する中村かおる先生に、色覚異常と早期発見が必要なのかどうかなどについて話を聞きました。中村先生には2人の息子さんがいて、長男が色覚異常と診断されています。

男の子に多いのは、色覚に関する遺伝子が原因

色覚異常では、色が異なって見えたり、色を異なって感じたりします。とくに男の子に多いことがわかっています。

――色覚異常の発症頻度を教えてください。男の子に多いとも聞きますが、それはなぜでしょうか。

中村 先天色覚異常は日本人男性の20人1人。日本人女性は500人に1人といわれており、珍しい病気ではありません。
女の子の場合は、母親と父親から1つずつX染色体を受け継ぎ、両方のX染色体に色覚異常の遺伝子があると、色覚異常になります。しかし男の子の場合は、父親からはY染色体を受け継ぐので、母親から受け継いだX染色体に色覚異常の遺伝子があるとそのまま発症します。そのため男の子のほうが多いのです。

――色覚異常はなぜ起こるのでしょうか。

中村 網膜には色を感じ取る3種類の細胞があります。この3種類が機能して、すべての色を認識します。しかしうまく機能しないと、色が識別しにくくなります。
色覚異常の種類は次のとおりです。

【1色覚】は、3種類がすべて機能しない場合や1種類だけ残っている場合で、視力も悪く、見るものすべてがほぼモノクロの世界と考えられています。以前は「全色盲」と言われていました。

【2色覚】は、3種類の視細胞のうち1つが欠けている状態です。以前、俗に「色盲」と言われていたのがこれにあたります。赤を感じる視細胞がないのは「1型2色覚」、緑を感じる視細胞がないのは「2型2色覚」。青を感じる視細胞がない「3型2色覚」は非常にまれです。

【異常3色覚】は、一般的には色弱ともいわれます。3種類の視細胞のうち、いずれかの機能が正常とは異なって起こり、赤を感じる視細胞に問題があると「1型3色覚」、緑を感じる視細胞の場合は「2型3色覚」となります。

――色が識別しにくいとは、どういうことでしょうか。

中村 色覚異常は、見分けにくい色の組み合わせがあります。また薄暗い場所で見たり、小さいものだと色の誤認を起こしやすいです。

見分けにくい色の組み合わせ例

この図は検査表ではありません。色覚異常にはタイプや程度の違いがあるうえ、使用している端末などにより色がずれるため、ここに載せた色の組み合わせは目安です。

小学校などでの色覚検査は任意。家庭で気づける場合も

平成14年学校保健法施行規則一部改正の通知で色覚検査が必須項目から削除され、全国の多くの小学校で色覚検査は任意検査となりました。

――今、小学校などでは色覚検査は任意検査となっていますが、検査はどのように行われているのでしょうか。

中村 平成14年学校保健法施行規則一部改正によって、学校での色覚検査はほとんど行われなくなりました。そのため大人になってから判明するケースが相次ぎ、平成26年、文部科学省から学校保健安全法施行規則の一部改正等についての通知が出され、学校における色覚検査が適正に実施できるよう体制を整えるように学校関係者に周知されました。
現在、学校における色覚検査は任意検査ですが、ほとんどの学校が色覚検査の意義を説明したお知らせを配布して、同意をいただいた場合には検査をしています。
検査時期は学校によって異なっています。小4で行う学校が多いのですが、小1で行う場合や、中学校や高校でも行う学校が増えています。低学年だと応答が不安定で正確には検査できないともいわれていますが、私はなるべく早期に検査をして発見したほうがいいと考えています。
とくに低学年は、色を使って考える学習があり、色覚に異常があると理解できないこともあるので、早くわかれば早く配慮もできます。

――検査方法を教えてください。

中村 ママやパパも見たことがあると思いますが、専用の図から数字を読み取る「石原色覚検査表」を用います。石原色覚検査表は大正時代に作られたものですが、世界でも高く評価されており、世界標準の検査表となっています。

――早期に発見すると、効果的な治療が受けられるということなのでしょうか。

中村 残念ながら、現代の医療では有効な治療法はありません。

――それでは早期に発見するメリットとは何でしょうか。

中村 早期に発見することで、親も子どもも早くから対策を講じることができるようになります。
色の間違いでなにかと誤解されることもありますし、極端な場合ですが、赤信号がついていることに気づかず道路を渡り始めてしまった色覚異常の子もいますので、そうした危険から身を守るためにも、私は早期発見が必要だと考えています。色の名前を覚えるのが遅い、色の名前をよく言い間違える、おもちゃなどを色分けするときに、ある色だけ間違えるなど気になる様子があるときは、念のため眼科を受診してください。
色覚異常は、現代の医療では有効な治療法がないと言いましたが、多くの場合は日常生活に困ることはありませんし、その子に合った対策を講じれば、より困らなくなります。また学校や社会でも、みんなが見やすいように配色のバリアフリーが進んでいます。

図版提供/公益社団法人 日本眼科医会 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

監修/中村かおる(なかむら かおる)先生

中村先生の長男は色覚異常ですが、気づいたのは2歳のとき。小さい赤いサイコロを見て「黒いサイコロ」と言ったのがきっかけだったそうです。『見分けにくい色の組み合わせ例』でも紹介していますが、赤と黒は見分けにくい色の一例です。中村先生によると、子どもの言葉や様子にアンテナを張っておくと、家庭でも気づけることもあるそうです。

※色覚に関しては、学術用語以外に作られた用語があります。この記事は日本医学会や日本眼科学会が現在使っている「色覚異常」という表現を用いました。

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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