この夏も暑さに注意!子どものマスク着用、熱中症対策ではこの症状に気をつけて!【小児科医】
気象庁によると、今年の夏も平年より暑くなると予想されています。新型コロナウイルス感染症の第6波のころから、2才以上の子どもたちもマスク着用が日常になりつつありました。ただ、現在気温が高くなる季節に向けて、マスク着用やコロナ禍での過ごし方による熱中症のリスクについて心配されています。
両国キッズクリニックの小児科医、黒澤照喜先生に今年の熱中症予防のポイントについて聞きました。黒澤先生は「屋外などの感染のリスクが低く熱中症などのリスクが相対的に高い場所ではソーシャルディスタンスがある程度保たれていることを確認してマスクを外すという考え方もありだと思います」と言います。(※当記事の内容は2022年5月24日現在の情報です。)
小児のマスク着用と熱中症の関連は?今年心配なこと
2022年2月からは、オミクロン株への対応として保育所等でも一時的にマスク着用がすすめられてきましたが、2022年5月20日、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は子どものマスク着用の考え方について、オミクロン株への対応以前の取り扱いに戻す、との見解を発表しました。2才未満の子どもは「マスク着用をすすめない」、2才以上から就学前の子どもについては「他者との身体的距離にかかわらず、マスク着用を一律には求めない」としています(※)。
気温・湿度が高くなる季節、子どもがマスクを着用していると「呼吸中の熱や水分が放出されづらくなるため、熱中症になりやすくなる恐れがある」と黒澤先生は言います。
「子どものマスク着用によって、熱がこもりやすくなったり、顔色不良に気づかないため熱中症が増えることが予測されています。屋外などの感染のリスクが低く、熱中症のリスクが相対的に高い場所では、ソーシャルディスタンスがある程度保たれていることを確認してマスクをはずすほうがいいと思います。
一方で、風邪症状があったり体調不良のときには、登園やお出かけを控えたりして体調回復を優先するという意識が、昨年と比べてやや乏しくなってきている印象があります。体調不良の際には余力がなく熱中症も起こりやすくなるため注意が必要です」(黒澤先生)
熱中症予防のために、状況を見て子どものマスクをはずしてあげることも大切です。合わせて、各自治体が発表する「熱中症警戒アラート」も活用しましょう。「熱中症警戒アラート」は熱中症の危険性が極めて高いと予想される当日や前日に発表されます。ニュースや天気予報などの情報をチェックし、アラートが出ている日は外出を避けるなどの対策をしましょう。
熱中症予防のためのマスク着用のポイントは?
子どものマスク着用について、熱中症予防の観点から、以下のことに気をつけましょう。
・赤ちゃんや2才未満の子どもは、窒息の恐れがあるため、マスクを使用しない
・水分補給ができているか、おしっこをしているかなど脱水症状に注意する
・人が少ない屋外ははずす、人込みや室内では着ける、など、大人が一緒のときは臨機応変にマスクを着脱させる
・屋内・屋外を問わず運動するときは、可能ならマスクをはずす
さらに、マスクをしているときには子どもの顔色に注意する必要があります。
「気温が高い場所でマスクをしているとき、元気がなくなるなどの症状が出ている場合には危険信号です。小さな子どもは予備力が少なく、自ら訴えられないこともあり熱中症のリスクは高くなります。ただし、顔色が悪くなってもマスクで見えづらいため、より意識をして観察する必要があります。
また、マスクをはずして遊ぶときには、一緒に遊ぶお友だちの保護者にマスクをはずしてもいいかどうかを確認しておくのも、エチケットとして大切かもしれません」(黒澤先生)
レジャーでは車内の熱中症に注意!黒澤先生の体験
この夏は人込みを避けつつ家族でレジャーの計画を立てる人もいるでしょう。車でのお出かけの際、気をつけたいのが車内での熱中症です。小児科医である黒澤先生も、家族旅行の際に家族みんなで熱中症になりかかった経験があるのだそうです。
「10年ほど前のこと、レンタカーで私、妻、当時1才の長女、義母の4人で北海道を家族旅行していました。8月のくもりの日で、湿度も高くなく気温も20度前後。体感では東京の5月ごろのような陽気でした。スーパーで買い物をするため、ドライバーの妻が車のカギを持って、ロックをかけて一人で買い物に行き、残りの3人は車内に待機していました。エアコンはかけていませんでしたが、窓は全開でした。
妻が車から離れてから早々に雲間から太陽がわずかに顔を出し、風はない状態でした。間もなく車内の室温が上がったためドアを開けようとしましたが、ロックがかかっていてどうしても開きません。私と義母はうちわを使って車内の空気を動かして暑さから逃れようとしましたが、室温はどんどん上がり、妻が10分後に買い物から帰ってきたときに3人は熱中症気味になってしまいました。
この経験から、気温が20度前後で窓が開いていたとしても、たった10分で車内の室温は上昇しやすく、熱中症が起こりやすいとわかりました。車のエアコンをつけていたとしても何かの理由で止まってしまうかもしれません。基本的には駐車している車の中に人は残してはいけないということを身をもって体験しました」(黒澤先生)
JAF(一般社団法人日本自動車連盟)もキーとじ込みによる熱中症事故の注意喚起をしています。車で出かけた際に「車内にいる子どもにカギを持たせたらロックボタンを押してしまった」などの理由による救援依頼が毎年あるそうです。とくに真夏はエンジンをかけてエアコンを入れていても、車内は熱中症を引き起こしやすい状態に。日中だけでなく、夜間も同じです。「少しの時間だから」「寝ているから」等の理由で車内に子どもを残したまま車を離れることは避けましょう。
熱中症の症状や応急処置、予防のために準備したいこと
赤ちゃんは体の不調を言葉で伝えられないため、熱中症を予防するには大人が注意してあげることが大事です。熱中症の症状や予防のために気をつけたいことを黒澤先生に教えてもらいました。
赤ちゃんの熱中症、どんな症状?
熱中症とは、体内に熱がこもり、体温が急激に上昇することで引き起こされる症状の総称のこと。体温調節機能が未発達な赤ちゃんの場合、最悪の場合には命を落とすこともあり、とくに注意が必要です。
「赤ちゃんの熱中症の初期症状には、顔が赤い、機嫌が悪い、ひどく汗をかいている、おしっこの色が濃い、などの様子が見られることがあります。このようなサインに気づいたら、涼しい場所へ移動する、衣類を減らす、ぬれタオルや保冷剤をガーゼで包んだものなどで首すじやわきのしたを冷やすなど、体を冷やす処置を行います。水分が取れるときは、赤ちゃん用イオン飲料などを与え、水分・塩分を補給します。2〜3時間ほど安静にして、回復しないようなら受診しましょう。
万が一熱中症に気づかずに重症化してしまった場合には、顔色が悪くぐったりする、体は熱いが汗をかかず、皮膚が乾燥している、おしっこが6時間以上出ていない、などの症状が見られます。このような場合は、夜間・休日でもすぐに受診してください。また、意識がない、けいれんを起こしている場合には、すぐに救急車を呼びましょう」(黒澤先生)
熱中症になりやすい場所は?
熱中症は屋外だけでなく、屋内にも危険が潜んでいます。
「ベビーカーは地面から近いため照り返しの熱を受けやすくなり、日ざしの強い時間帯の長時間の外出は熱中症のリスクが高まります。こまめに赤ちゃんの様子に気を配りましょう。部屋の中でも、赤ちゃんが寝る場所に直射日光が当たらないかチェックを。また、熱が出たから熱中症、というわけではなく、風邪などのほかの病気が隠れている可能性も。熱が出たら頭などを冷やしつつ受診をして、医師の指示に従ってください」(黒澤先生)
暑さが本格化する前に、備えておきたいものとこと
急に気温が上がる日もあるため、早めに熱中症予防のための帽子や暑さ対策グッズがあるかも確認をしましょう。
・経口補水液やスポーツ飲料を常備しておく
・帽子がサイズアップしていないかチェック
・ベビーカーのほろ
・保冷マットなど、お出かけのときの暑さ対策になるもの
・風通しがいい衣類 など
・エアコンの試運転
「熱中症は夏に起こるのだけでなく、急に暑く熱くなり始めて、体がまだ暑さになれていない時季でも起こります。
急に熱中症になってしまったときのために、経口補水液や、体を冷やす保冷剤・保冷マットなどを冷凍庫に常備しておくといいでしょう。とくに、エアコンは7〜8月になると修理や設置工事が込み合ってしまうため、本格的に暑くなる前に試運転をし、異常がないか確認しておくことが大切です」(黒澤先生)
取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
以前より外遊びが減ったことやマスクの着用など、コロナ禍の影響からも暑い時期の子どもの熱中症が心配です。急な変化に対応できるよう、症状や予防対策を知って備えておきましょう。
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。