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「自分を大事に思ってくれている人がいる」と伝えよう!加害者にさせない、被害者にならないために、赤ちゃんのうちからできる安全教育

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赤ちゃんを高く抱いているママ
maruco/gettyimages

子どもが性の被害者となる事件や事故が後を絶ちません。これまでは性的な事件というと、連れ去りなどリアル上で起きることがほとんどでしたが、最近は、S N Sの台頭もあり、周りの大人が実態を把握することが難しくなっています。
だからこそ、「幼いうちからしっかりと安全教育をすることが大切。安全教育は生まれたときから始まっている」と、NPO法人体験型安全教育支援機構代表の清永菜穂さんは話します。「知らない人についていったらいけないよ」「あやしい人に声をかけられたら逃げるんだよ」と教えているつもりでも、「あやしい人ってどんな人?」「ママの友だちって言っているし」……。言葉で伝えただけでは幼い子どもがその怖さを理解するのは難しいかもしれません。

「性犯罪などの被害者にならないために身に付けておきたい力」に続いて、後編では、「加害者にさせない、被害者にならないために赤ちゃんのうちからできること」について、清永さんに教えていただきました。

安全教育は「人を信頼する」ことから。お父さん、お母さんとの信頼関係が全ての基本

駆け込んで助けを求める練習(安全教室より)/NPO法人体験型安全教育支援機構

―― 絵本『あぶないときは いやです、だめです、いきません』に書かれているような、いわゆる安全教育は何歳くらいから始めればいいのでしょうか?

清永奈穂さん(以下敬称略) 安全教育は、実は生まれたときから始まっています。
例えば、「お母さん、お父さんに抱っこされたときに安心できる」ことも安全教育のひとつです。なぜなら、安全教育は「人を信頼する」ことから始まるからです。

お父さんやお母さんからすると、「危ない人は誰?」「危ないところはどこ?」などを教えたいと思うでしょう。でも大切なのは、「安心する人がそばにいて、自分を大事に思ってくれている人がいる」とまず伝えること。泣いたらオムツを替えてくれたり、おなかがすいて泣いたらミルクをくれたり……。お母さんが赤ちゃんに当たり前のようにしていることからも伝わります。そして実は「助けを求めたら必ず助けてくれる人がいる」というその信頼関係が安全教育の基になるのです。

―― お母さんと赤ちゃんの信頼関係が安全教育の初めの一歩になるんですね。

実は、非行少年の多くは、殴られたり、首を絞められたりした経験はあっても、子どもの頃に抱っこされていたという経験がなかったという調査結果があるんです。

人を信頼できないから「助けて!」と言えないし、自分を大事にできないから他人を思いやれず、また一線超えたその先を考えることができず、悪いことに走ってしまうという子どもたちがいることがわかっています。

そう考えると、被害者にならないだけでなく、加害者にさせないためにも、お父さんやお母さん、周りの大人の普段の関わりがいかに大切かおわかりでしょう。
あえて「何かしなければ」ではなくて、少しだけで良いので子どもに安全基礎体力をつけていくことを頭の片隅に置き、子どもと遊んだり歩いたり、一緒に楽しみながら生活することが安全教育につながっていきます。

自分の足で歩くことが子どもの安全教育のはじめの一歩

3歳児も一人で歩く練習をする(安全教室より)/ NPO法人体験型安全教育支援機構

―― この時期の安全教育がいかに大切なのか、改めて考えさせられました。

清永:信頼感や愛着などの心理的な安全性だけでなく、体の力を育てていくうえでも幼児期からの安全教育は大切です。例えば、バギーで散歩に出かけたり、子どもがバギーから降りて歩きたいと言い出したりしたときが、安全教育を行うとても良いチャンスです。なぜなら、「前を向いてしっかり自分の足で歩くこと」=「子どもの安全教育のはじめの一歩」だからです。

子どもが「歩きたい」と言ったら、まず、安全な道をゆっくり歩かせてあげてください。そのときは、子どもを見失わないためにもできるだけ子どもの後ろを歩いたり、危ないところは並んでしっかり手をつないだり、保護者が安全に気をつけながら歩くことを楽しみ、自然に振る舞うことが重要です。お父さんやお母さんの様子を見ながら、子どもは「歩くルール」があることを理解していきます。そして自分の足でしっかり安全に歩く体力が育まれていきます。

性犯罪の被害に遭わないために、決して子どもから目を離さない

普段から近所の人とコミュニケーションをとっておけば、いざというとき助けになってくれる(安全教室より)/ NPO法人体験型安全教育支援機構

―― 幼児期の子どもが被害に遭う可能性のある犯罪にはどんなものがあるのでしょう?

清永:男の子、女の子に限らず、いかがわしい写真を撮られたり、トイレや建物の隅に連れて行かれて触られたりするような、いわゆる性的な犯罪、性暴力が多いですね。男の子だから大丈夫ということもありません。

ひどいケースになると、犯人が自分の性器を触らせるようなこともありますね。抵抗したり逃げたりするのが難しいケースもあるので、特に就学前のお子さんが公園等で遊ぶときなどには、決して目を離さないようにしてください。ちょっとした隙を見つけてどこかへ連れて行かれてしまう可能性は常にありますから。お子さんとも「お父さん、お母さんの見えないところでは遊ばない」ことを約束しましょう。

―― 大人でも、犯罪に巻き込まれてしまったらどうしていいかわからないのですから、幼い子どもはなおさらだと思います。

清永:大人がどんなに見守っていても、犯罪者はその隙間を見つけてきます。その隙間を埋められるような力を子ども自身に身に付けていってほしいのです。

もちろん、最初から全部できることは想定していません。だから『あぶないときは いやです、だめです、いきません』のような絵本を親子で繰り返し読んだり、絵本に書いてあることを実際に試してみたりすることが大切なんです。小学生になってひとりで歩くようになったときに、少しでもそれらの力が身に付いていればいいなと思います。

―― 小学校入学前までに、どんな力を付けておけばよいのでしょうか?

清永:小学校入学前くらいの年齢になったら、幼稚園や保育園とお家との間の道を覚えさせたり、ある地点からある地点の間は自転車から降りて歩かせたりするなどを意識的にやるといいですね。

保育園と小学校が近くても、いざ学校に通い始めたら迷子になって家に帰れないという子もいますから。そうならないためにも、普段から自分の歩く道をしっかり歩く。そして、子どもたちを見守ってくれている近隣の人に挨拶しておくことがとても重要なんです。
最近、多くの人は近所づきあいも、周りに住んでいる人と挨拶をすることも少なくなっています。犯罪者にしても、みんなが見ている商店街の真ん中で悪いことはできませんから、近所やお店の人と顔見知りになっておくことはとても有効です。

そして「いやです」ときっぱり断る力や、走って逃げる力、大声を出す力、この三つの力は鬼ごっこなど遊びのなかでも身に付けることができるので、気軽に試してみてください。

乳幼児期にだからこそできる安全教育は?

大人が子どもの視野を体感できるチャイルドビジョン

―― たまひよ読者が子どもたちにできる安全教育はありますか?

清永:抱っこしたり手をつないだりして歩く、お散歩をしながら交通ルールを教えるなど、乳幼児期だからこそできることはたくさんあるんです。

「この公園は子どもを遊ばせるのに安全だろうか」「この道は散歩するのに適切だろうか」などを考えながら、子どもをバギーに乗せて街をパトロールしてもいいですね。自分たちだけでなく、子育てするのに安全な街かどうかを見極められます。
子どもと散歩していると、近所に住んでいても話したことのなかったような人に話しかけられることがあります。小さい子どもには人を惹きつける力がありますから、いざというときに応援団になってくれる可能性もありますよ。

一方で、しつこく話しかけてきたり、じっと見ていたり、プライベートに踏み込んできたりするなど、違和感を感じるような人がいたら、そのときはちょっと距離を取った方がいいかもしれません。お母さんやお父さんにとっても人を見る目を養う良い機会かもしれません。

また、自治体や警察の不審者情報を受信できるようにしておくなど、自分の住んでいる地域でどのような犯罪が起きているのかを把握しておくことも大切だと思います。

―― 最近は、リアルだけでなく、ネットの世界でもいろいろな事件が増えていて、不安に感じている親御さんも多いと思います。

清永:だからこそ、お父さん・お母さんは、自分の愛情に自信をもってほしいと思います。お父さん・お母さんの声かけや、わが子を大事に思う気持ちは必ず子どもの安全につながっていきます。

家族の愛情を感じて育った子は、何かあったときに、「お母さんのところに帰りたい」「お父さんがダメだって言ったからやめよう」などと思えます。毎日の生活のなかでの温かい声かけや子どもへの愛情が子どもを守ることになるんです。そして、お父さん・お母さんの抱っこや手の温かさから感じる安心感をたっぷりと体感しておくことで、しつこい声かけや性的な行為に対して、不審感や不快感を持ち、警戒できるようになっていきます。

どれもが普段当たり前にしている親子のコミュニケーションですから、ぜひ自信をもってほしいと思いますね。
でも、ひとつお願いしたいことがあります。お子さんと向き合うときは、スマホから目を離してほしいということ。いざとなったときに、子ども自身が「お母さん(お父さん)、助けて」「こんなことされていやだった」と言えるかどうかの信頼関係につながっていきますから。

散歩中に犯罪者が近づいてきたときに子どもを守るためにも、周囲を見ながら歩く癖をつけておくことはとても大切なんです。もし、周囲に犯罪者がいても、スマホを見ていたら子どもを守ることはできませんからね。
そして、もししつこく話しかけてくるような人がいたときは、お父さん、お母さんがまずキッパリ断る姿をお子さんに見せてくださいね。


お話・写真提供/清永奈穂 取材・文 ・写真/米谷美恵、たまひよ編集部

■記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

清永奈穂さん

PROFILE
株式会社ステップ総合研究所長、特定非営利活動法人体験型安全教育支援機構代表理事、日本女子大学学術研究員、博士(教育学)。

日本女子大学市民安全研究センター研究員、文部科学省資質の高い教員養成(GP)研究員、科学技術振興機構(JST)研究員等務める。事件現場に赴いての現場分析や、犯罪者行動調査、被害調査を基にして、安全教育、地域安全等について研究。警察庁持続可能な安全安心まちづくり検討委員会委員、内閣府「子ども若者育成支援推進のための有識者会議」委員等歴任。主な著書に、「少年非行の世界」(共著、有斐閣1999)、「世界のいじめ」(共著、信山社2000)、「犯罪からの子どもの安全を科学する」(共著、ミネルヴァ書房2012)、「犯罪から園を守る!子どもを守る!」(単著、メイト社2018)、「いやです、だめです、いきません 親が教える子どもを守る安全教育」(単著、岩崎書店2021)、「あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本」(単著、岩崎書店2022)他。

NPO法人体験型安全教育支援機構

「あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本」(単著、岩崎書店2022)

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