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「もう何を切り詰めていいのか分からない…」2人に1人といわれるひとり親家庭 の「見えない貧困」事情①

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認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが行う食品支援(フードバンク)事業「グッドごはん」の配布拠点

厚生労働省の国民生活基礎調査(2020年公表)によると、大人1人で子どもを育てている母子(父子)家庭などの貧困率は48.1%。子ども全体の貧困率も13.5%と、先進7か国の中でも極めて高い水準にあります(※)。さらに最近ではコロナ禍による不安定な雇用や物価高騰が重なり、毎日の食事にも困り果てている家庭が増えています。

本シリーズでは2回に分けて、ひとり親家庭への食品支援を行う認定NPO法人「グッドネーバーズ・ジャパン」の飯島史絵さんに、ひとり親家庭の実態と支援活動の内容について話を聞きました。

※貧困率とは、所得が国民の中央値の半分に満たない人の割合。子どもの貧困率は、中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合を示し、日本では1985年の10.9%に比べて2019年には13.5%と上昇している。

もはや豊かではない日本で、見えない貧困が急増している

グッドネーバーズ・ジャパンでは定期的に東京・大阪の拠点で食品を配布している

――グッドネーバーズ・ジャパンは、これまで途上国への支援に取り組んでこられた団体です。2017年からは日本でひとり親家庭へのフードバンク事業を始めましたが、きっかけは何だったのでしょうか?

「2015年から徐々に、日本国内の子どもの貧困がメディアで盛んに取り上げられるようになりました。途上国等で見られる、必要最低限の生活水準を維持するのも困難なほどの貧困状態は“絶対的貧困”と言われていて、1日1.9ドル未満の生活を強いられ、時に生存を脅かされる状態です。一方で現在の日本で深刻化している”相対的貧困”とは、周りの平均水準に比べて困窮している状態を指します。日本は生存を脅かされるほどの貧困とは言えない場合が多いのですが、海外の貧困のほうが大変だとか、日本はまだましだとか、比べることに意味はありません。実際に多くの人たちが暮らしに困っている状況を、何とかするべきだと私たちは考えています。

日本の子どもの貧困率は7人に1人と言われていますが、ひとり親家庭に絞るとおよそ2人に1人です。例えば親1人、子1人の例で言うと、世帯の約半数が年間172万円未満で暮らしているという状況で、日本の貧困はもはや見逃せない問題です。家庭の貧困が子どもの自己肯定感の低下や居場所のなさにつながり、その子の持つ豊かな才能や能力が発揮できないとしたら、社会にとっても大きな損失になります。それが私たちがフードバンク事業を始めたきっかけです」

「ブドウを初めて食べました」の声も

フードバンク事業「グッドごはん」ではお米や調味料、肉、加工食品、お菓子など様々な食品を提供。支援者がメッセージカードをつけることも

――数ある支援の中でも、フードバンクを始めたのはどうしてですか。

「子どもの貧困対策には教育支援や子ども食堂、保護者の就業支援など、いろいろなアプローチがあります。その中で食の支援に目を向けたのは、やはり、食べるということは全ての始まりだからです。勉強も遊びも、おなかがすいていたら何もできません。食の支援は長期的に見るとあくまで応急処置的なものですが、これをきっかけにさまざまな支援が広がればと考えて始めました」

――家計が厳しく、真っ先に食費を削る家庭も多いと聞きます。

「そうですね。昔は、食費といえば『エンゲル係数の大小で貧富の差が分かる』と言われていました。でも今は、単純にエンゲル係数が高い=貧困というわけではなくなっていて、食費以外に削れない支出が増えています。例えばスマホは皆にとってなくてはならない必需品になり、これがないと就職もできないし家も借りられないという人もいます。だからこそ食品の支援があればお金を他の必要不可欠な支出に回せますし、実際に『家に食べものがあることでとても安心できる』という感謝の声も多くいただいています」

――支援はどのように行っているのでしょうか。

「『グッドごはん』という、低所得のひとり親家庭(※)を対象にした食品配布プログラムを実施しています。個人や企業から寄贈された食品を月1回、配布拠点に取りにきていただいてお渡ししています。配布する食品は毎回違うのですが、お米はなるべく全世帯に配れるようにしています。野菜や果物などの生鮮食品、冷凍のお肉・お魚を配ることもあり、ブドウを配った時は『ブドウを初めて食べました』という声もいただきました。親が働いている時にお子さんが一人で食べられるレトルト食品も喜ばれています。

 ジュースやお菓子なども入れているのですが、普段は買えないというご家庭も多いです。小学生くらいのお子さんだと、お友達と遊ぶ時にお菓子を持参する習慣がありますが、『いつもは友達からお菓子をもらうばかりだったけど、配られたチョコを友達と交換できてとても嬉しかった』という喜びの声もいただきました」

※「ひとり親家庭等医療費助成制度医療証」をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、通常は首都圏および近畿圏の配付拠点に直接取りに来られる人が対象

「母は水のみがほとんど」…コロナ禍と物価高がダメージに

――相対的貧困は「見えない貧困」とも言われますが、ブドウを食べたことがない、お菓子も買えない子どもたちが身近にいるという現状を、なかなか想像できない人も多いと思います。

「およそ7人に1人が貧困状態だとすると、単純計算で35人のクラスに5人はいるはずです。でも、それほど親しくないママ友に『うちは生活苦しくて…』とは言いませんよね。それに、皆さん食費などを切り詰めてでもスマホは持っていたり、今はフリマアプリなどで新品のお洋服やブランドものを安く購入することのできる時代です。見た目では貧困に気付きにくい状況だといえます」

――2020年からのコロナ禍や最近の物価高騰で、支援活動に変化はありましたか。

「新型コロナウイルスの影響で、2020年は首都圏では『グッドごはん』の利用登録が前年比5倍に増えました。また、利用者さんを対象にしたアンケートを見ると、2019年調査では世帯年収200万円未満のご家庭が47%でしたが、2022年調査では54%に増加しました。さらに100万円未満と回答したご家庭の割合も11%から23%に増加しています。なお、これは収入だけでなく、児童手当や児童扶養手当、養育費なども全て含めた金額ですので、とても厳しい状況です。

 さらにパートやアルバイトなどの非正規雇用で働いている利用者さんも2019年の51%から2022年には56%に増え、正規雇用も37%から21%にまで減っています。コロナで社会全体が大きな影響を受けましたが、特にひとり親家庭はたび重なる子どもの休園や休校で仕事を休まざるをえず、収入が激減した人も多くいます。それに加えて、2022年3月頃からは物価高の影響から『子どもには給食でおかわりをしてきてもらい、夕食は小皿一品だけもしくはゼロで済ませています』『普段から節約していて、もう減らすところがほとんどない』『母は水のみがほとんどです』という切実な声も寄せられています」

コロナ禍や物価高を受けて、困っている子育て家庭を助けるための様々な支援活動が行われています。グッドネーバーズ・ジャパンでも、2020年に新たに大阪に拠点を立ち上げ、2021年後半から複数個所での食品配布を開始。2022年6月時点で、首都圏・近畿圏合わせて23か所での食品配付を実施しています。

「食べるものがあるということが、お金の余裕や心の余裕にもつながると私たちは考えています」と飯島さん。次回は引き続き飯島さんに、貧困状態にあるご家庭の声について詳しく話を聞きます。

特定非営利活動法人 グッドネーバーズ・ジャパン

自然災害、飢餓、紛争などで傷つき苦しんでいる世界中の人々の人道・開発援助を目的に、1991年に韓国で設立された国際NGO。国連の「子どもの権利条約」を理念とし、アジア・アフリカ・中南米など世界40カ国以上において、子どもの権利を守るための支援や地域開発を行うほか、自然災害発生時などは活動国に限らず緊急支援を実施している。2017年からは日本でひとり親家庭に焦点を当てたフードバンク事業を展開。

グッドネーバーズ・ジャパン 公式ホームページ

(取材・文 武田純子)

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