消費者庁も注意喚起!子どものキックスケーターでの事故に気をつけて。守ってほしい7つのこと【小児科医】
子どもたちに人気の遊具「キックスケーター」「キックバイク」。しかし大けがにつながる事故も発生しており、なかには亡くなった子もいます。遊ばせるときの注意点について、子どもの事故に詳しい小児科医 山中龍宏先生に聞きました。
側溝にキックスケーターの前輪がはまり、顔から転倒した事故も
キックスケーターは幼児から乗れるものもありますが、日本小児科学会の傷害速報によると、次のような事故事例が報告されています。
【キックスケーターの事故/5歳】
2012年、5歳の女の子が友だちの家のガレージ前で、子どもだけでキックスケーターで遊んでいた。走行中に側溝に前輪がひっかかり、前に倒れて顔から地面に転落。救急車で搬送された。
口の中を切り、歯が何本かぐらぐらしており、頬の打撲なども認められた。
歯はレントゲンを撮ったところ、根っこが折れている歯が1本確認されたため、局所麻酔をして抜歯。今後、歯の変色や永久歯の変形の可能性があることなどを保護者に説明し、9日間の外来通院となった。
[事故の原因となった側溝]
キックスケーターの前輪が側溝にはまっている(参考写真)。モデルは事故を起こしたものと異なる。
キックバイクで坂道を走行中、電柱に激突
またキックバイクの事故は、消費者庁が、2019年7月のリリース「ペダルなし二輪遊具による子どもの事故に注意!」の中で、次のような事故事例を紹介しています。
【その1 キックバイクの事故/2歳】
ヘルメットを着用せず、歩道を走行中、交差点で止まろうとしてよろけて右側に転倒。その際、走行中の自転車のスタンドに右側頭部をぶつけて打撲。頭を切って1針縫うけがをした。
【その2 キックバイクの事故/4歳】
ヘルメットは着用していたものの、坂を下りるときに止まれず、電柱にぶつかり顔を打撲。下唇が腫れ上がり出血。上の歯ぐきからも出血があった。
「キックスケーターもキックバイクもバランスをとるのが難しい遊具なので、万一の時、大きなけがにつながりやすいです。
また紹介したキックバイクの事故は、自転車や電柱にぶつかっていますが、一歩間違えれば車にぶつかる危険性もあります。
2018年、岡山県では4歳の男の子がキックバイクで、ゆるい下り坂を走行中に車にはねられて死亡した痛ましい事故も起きています。
そうした事故を防ぐためにも、遊ばせるときは次のことを守ってください」(山中先生)
事故を防ぐ7つの注意点
①ヘルメットを着用する
②子どもだけで遊ばせない。必ず親がつきそう
③道路や駐車場など車やオートバイが通る場所や人通りの多い場所では遊ばせない
④坂道や側溝、段差がある道では遊ばせない
⑤遊具の対象年齢や適応身長などを守る
⑥部品が壊れたり、ゆるんだりしていなか確認する
⑦遊ぶときは靴を履かせる。サンダルはNG
首から上のけがは約8割。ヘルメットなどで守れない部位は要注意
前述の消費者庁のリリースによると医療機関ネットワーク事業(※)を通じて、キックバイクに関する事故情報は2010年12月から2018年度末までに 106件寄せられています。
キックバイクの事故でけがをした部位を調べたところ、顔が70件(66%)と突出しており、次は頭が14件(13.2%)でした。とくに4歳以下は頭部と顔をけがした割合が高く、これは頭が重いことが影響しているようです。
キックバイクでけがをした部位
「頭のけがはヘルメットをしっかりかぶっていれば大抵防げます。しかし顔や首、腹部など防御できない部位を打ったり、ぶつけたりするのは大変危険です。
2014年に起きた、5歳の男の子によるキックスケーターの事故は、ハンドル部分のカバーがはずれていて、金属がむき出しになっていました。転んだときに、そのハンドル部分に首をぶつけて、空気の通り道である気管を損傷。皮下組織の中に空気がもれてたまる皮下気腫が腹部にまで拡大していて、命に関わる危険があったため、緊急手術が行われました。
気管挿管が困難な事態を考慮し、緊急気管切開と体外式膜型人工肺(ECMO)の準備までするという大きな手術でした。幸い、この子は助かりましたが、当たり所が悪くて亡くなる子もいます。
記憶に残っているママやパパもいると思いますが、2022年6月、滋賀県で小5の男の子が、スケートボードに似た遊具に乗って遊んでいたところ、首から血を流して帰宅。病院に搬送されましたが翌日、亡くなっています。現場となった駐車場では、屋外灯のガラスが割れ、血だまりができていたということで、屋外灯にぶつかったのではないかと報道されました。死因は出血性ショックということなので、頸動脈を切ったのではないかと考えられます。これは、キックスケーターやキックバイクでも起こりうる事故です」(山中先生)
もしキックスケーターやキックバイクで転んだときには軽症でも、子どもの状態を1日程よく見ることが必要だそう。
「すり傷や切り傷など、目に見える傷は軽くても、転んだ拍子に、ハンドルにおなかをぶつけたりしている場合もあります。顔色が悪かったり、おなかが痛いと言ったり、つらそうな様子があるときは、診察時間外でも急いで受診して、転んだ時の状況を医師に説明してください」(山中先生)
協力・図版提供/消費者庁、国民生活センター、日本小児科学会 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
「幼児が乗るキックスケーターやキックバイクって、そんなに危険なの?」と思ったママやパパもいるかも知れません。
国民生活センターでは「ペダルなし二輪遊具による坂道の事故に注意-衝突や転倒により幼児がけがを負う事故が発生―」というタイトルで、キックバイクの事故の実験動画を公開しています。動画では、坂道だと想像以上にスピードが出て、ママやパパが止めようとしても止められない様子や、ぶつかったときの衝撃などがわかります。
※医療機関ネットワーク事業は、参画する医療機関から事故情報を収集し、再発防止にいかすことを目的とした消費者庁と国民生活センターとの共同事業。2010年12月から運用を開始。2022年3月末時点で30機関が参画。
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