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子どもの転落事故、減らないのはなぜ? 2歳以下の救急搬送は、毎年1500人以上【専門家】

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彼女の小さな女の子の娘の世話をしているアジアの若いシングルマザーは、病院の廊下で話している間に怪我をして車椅子に座ります。医療、事故、保険の概念。
●写真はイメージです
Pornpimon Rodchua/gettyimages

2022年7月23日、「事故による子どもの傷害を予防する――子ども中心の新たな予防システムの構築へ――」と題した、日本学術会議主催によるオンライン公開シンポジウムが開催されました。「事故による子どもの傷害は多発していて、同じ年齢層の子どもたちに同じような事故が起こり続けている」という大きな問題点の共有とその現状を打破するための方法について議論されました。シンポジウムの内容をリポートします。

0歳の転落は、6年連続ベッドからが1位。予防活動が機能していない証し

シンポジウムは3部構成で、第1部の「傷害予防の現状と課題」において、子どもの事故に詳しい小児科医でNPO法人Safe Kids Japan理事長 山中龍宏先生は、「わが国の子どもの傷害の実態と課題」について発表しました。山中先生によると、2000年ごろから、専門家の間では子どもが転落したり、誤飲したり、窒息したり、溺れたりするようなことを「事故」とは呼ばなくなってきたと言います。

「2000年ごろから子どもの事故に対する考え方が変わってきていて、『事故』とは言わずに、『傷害』と言うようになってきました。事故とは英語ではAccidentです。その意味は予測できない避けられない事象です。
しかし子どもの転倒や落下、溺れ、誤飲などは予測可能です。そのため最近では、傷害と表現するようになってきました。
傷害は英語では『Injury(インジャリー)』で、意味は予測ができて予防可能な事象です。予測して防ぐべきものだからこのように呼ばれ始めましたが、予測はできるのに予防につながっていないのが現状です」(山中先生)

予防ができていないとは、どういうことなのでしょうか。

「東京消防庁が発表したデータに“日常生活事故の救急搬送数”があります。
2014年から2019年までの転落のデータを見ると、
0歳は477~556件/年
1歳も571~676件/年
2歳も533~567件/年
となっており、どの年齢も減少傾向にはなっていません。同じぐらいの数字を前後しています」(山中先生)

0~2歳年齢別・転落による救急搬送数

東京消防庁によるデータ。2014~2019年の6年間、乳幼児の転落件数は一向に減らないことがわかる。

また山中先生は事故の件数だけでなく、事故の原因を見ても問題が浮き彫りになっていると言います。

「前述のデータで転落について、さらに詳しく見ると“どこから転落したか”を分析しているデータがあります。そのデータを見ると、0歳は6年間連続でベッドが1位です。1歳、2歳は6年間連続で階段が1位です。
6年間、転落の原因についても変わっていないのです。これらの結果から見ても、子どもの傷害の予防活動が機能していないことがわかります」(山中先生)

山中先生は、事故を予測して予防することは可能だと言います。その理由の一つが交通事故による死者数の減少です。

「交通事故は、1970年に交通安全対策基本法が制定され、50年にわたる交通安全基本計画が作られ、2020年までに交通事故による24時間以内の死亡者数を2500人以下とするなど目標が掲げられました。
その結果1970年には1万6765人だった24時間以内の死亡者数が、1979年には8466人になっています。10年で半減しています。さらに2020年には2839人までに減っています。
子どもの傷害の予防対策も、科学的に取り組めば減らすことができるはずです」(山中先生)

国内で、子どもの傷害予防につながるビッグデータはありません

前述のとおり、子どもの傷害の予防活動が機能しない理由の一つには、データ収集の問題があると言います。
東京都立小児総合医療センター救命救急科医員 岸部峻先生は「医療機関におけるデータ収集の課題」について発表しました。
東京都立小児総合医療センターは、2019年度は9143人の子どもたちの骨折ややけど、中毒、窒息、おぼれなどに対応。日本で最も多く、子どもの外傷対応を行っている病院です。

「国内で継続して実施している子どもの傷害に関する医療機関からのデータベースは、実は一つしかありません。それが厚生労働省の人口動態調査の死亡統計です。
しかし死亡例は、子どもの傷害の中ではごく一部です。命は取り留めても重症度が高い子どもたちはたくさんいます。しかし国内では、子どもたちの傷害とその予防に関するビッグデータをまとめている機関はありません。
アメリカ、オーストラリア、中国、韓国などでも子どもの傷害に関するデータはあるものの、予防につながるデータは不足しています」(岸部先生)

それではなぜ、子どもたちの傷害予防につながるデータが構築されないのでしょうか。そこにはシステムの課題などがあると言います。

「まずは基本的なことですが、電子カルテの問題です。医療機関によって電子カルテシステムが異なるため、情報共有できない現状があります。
また予防に必要な情報を集めるには、傷害が起きたときの状況を保護者に詳しく聞いたり、製品や事故が起きた環境に関する情報収集が必要です。これらの作業は専門知識を要したスタッフが必要ですし、人手がたりません。また個人情報の問題もありますし、データベースの管理をどこが行うかという課題も出てくるでしょう。

しかし、こうした課題をクリアし、予防につながるデータ収集を継続的に実施できれば、子どもたちの傷害を減らすことにつながるはずです」(岸部先生)

地域レベルで、子どもたちの安全・命を守る対策が必要

2022年1月、節分を前に消費者庁では子ども安全メールなどで、「Vol.580 硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで!」というタイトルで、5歳以下の子どもにはかたい豆は食べさせないように注意を呼びかけました。5歳以下だと、かたい豆のかけらが気管に入り込んでしまい肺炎や気管支炎を起こしたり、窒息で亡くなる危険性があるためです。

2020年の節分には、認定こども園で、4歳の子が豆をのどに詰まらせて窒息して亡くなった事故もありました。しかし山中先生によると、いまだに、節分のときに子どもたちにかたい豆を食べさせる保育園などがあると言います。

「園の先生たちに話を聞くと“注意して、よく子どもたちを見ているので大丈夫です”と言われることもあるのですが、それでは子どもたちの命は守れません。転落や溺れなどの傷害も同様です。地域レベルで子どもたちの安全や命を守る対策を検討する必要があると思います」(山中先生)

お話・監修/山中龍宏先生

お話・監修/岸部峻先生

協力/NPO法人Safe Kids Japan 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLNE編集部

山中先生は、子どもたちの傷害を防ぐには、ママやパパが「他人(ひと)ごと」とは思わないことも大切だとも言います。たまひよONLINEでも、注意してほしい子どもの傷害の記事を多く取り上げていますので、ぜひチェックしてください。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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