育児本通りにはいかない!長男の赤ちゃん返りで悩んでいた時に救われたのは…。フリーアナウンサー・中野美奈子さんインタビュー
元フジテレビアナウンサーとして活躍され、現在は6歳の男の子と1歳の女の子のママとなった中野美奈子さん。2021年より、ご自身の地元である香川県で暮らし、お子さんたちとのびのびと暮らしています。今回は中野さんが2人目の子育てで悩まれたときに出合ったネントレの話や、子育てをする上でのモットーなどを伺いました。
育児本通りにはいかないと悩む日々…。 友人に出したSOSが脱却のカギに!
――子育てしていた大変だったこと、またうれしかったことを教えてください。
中野さん:長男が4歳のときに下の娘が生まれたのですが、本当に思いがけずという感じで、赤ちゃん返りがあったんです。それも、けっこう激しいものでした。妊娠中は、「赤ちゃんが生まれるの、楽しみ!」と言っていたのですが、実際に生まれてくると「今まで自分が一番だったのに!」「ママを赤ちゃんに取られた!」と思ってしまったようです。もう、何もかも「いや!」となってしまって、幼稚園も、遠足の日もパジャマで行っていたぐらい。幼稚園の先生も理解があって助かりましたが、その時期は私も本当に悩みましたね。
それで、市役所で無料のカウンセリングを受けてみました。カウンセラーの方からは、「自分だけのママだったのに、突然やってきた赤ちゃんに取られてしまった」という気持ちが今、爆発している状態だと教えてもらいました。そこで、お兄ちゃんに役割や空間を作ってあげてくださいと言われたんです。たとえば、授乳中にお兄ちゃんがちょっかいを出そうとしたら、「一緒に見守ってくれるんだね、ありがとうね」と声がけをすると、自分がそばにいてもいいんだと安心できるそう。それを、根気よく実践したり、できるだけ息子との時間を作る努力をしていきました。
最近は、「生まれてきてくれてうれしいね」とか「かわいいね」、「トマト好きだから買って行ってあげようよ」など、優しい言葉をかけてくれるようになったんです。
赤ちゃん返りってよく聞きますが、それは年齢差が小さい兄弟の話だと勝手に思っていました。うちは年齢が4歳以上離れていたので、まさか赤ちゃん返りをするとは想像もしていなくて。育児本を読んでも、自分の家のケースには当てはまらないことも多く、それ通りにはいかないんだな……と痛感しましたね。でも、みなさん共通しているのは、上の子に居場所を再確認させてあげることが大切なんだということ。今もそれは実践しています。
――息子さんとの時間を積極的に作ったのですね。
息子との時間を確保するためにはどうしたらいいだろうと迷っていた時に、ふと、赤ちゃんを早く寝かしつければいいんだと思ったんです。寝かしつけしている時間が長いと、その分、息子が一人になってしまう時間が増えてしまうんですよね。それで、ネントレ(ネンネトレーニング)を推奨している友人を思い出し、「これだ!」と思って、すぐにSOSを出しました。
ネントレは生後2か月ぐらいからはじめました。ベッドに寝かせて、絵本を読み、音楽を流してなど、寝かせるためのルーティンがあって、それを実践します。赤ちゃんにも、自分で眠る力は必ずあるそうで、最初は泣いたりもしましたが、だんだんとひとりで寝てくれるようになりました。ネントレは賛否あるようですが、私としてはやってみてすごくよかったと思っています。何より、息子との時間が確保できたことが一番うれしかったですね。我が家の場合は“赤ちゃん返り”という緊急事態がきっかけですが、それでネントレをすることができました。
仕事人間だった私が、 母になって、子ども中心の生き方に
――お子さんの叱り方で気をつけていることはありますか?逆に、褒める時はどうですか?
中野さん:うちの夫、びっくりするぐらい怒らない人なんです。怒ったとしても、静かに諭すという感じです。しかも、私がガーッと大きな声で怒っても子どもには響かないのに夫がボソッと言った言葉の方が、子どもには効果があるみたいで。それで、自分が声を荒げていることに、これって意味あるのかな?なんて思えてきちゃって。夫だって、朝から私がガミガミ言っているのを聞きたくないですよね。
最近は意識して、命に関わる危ないこと以外は、瞬間的に怒らないようにしようと心がけています。ちょっと冷静になってひと呼吸置いてから、子どもにはできるだけ静かに伝えるようにしています。あとは、自分が反対の立場だったらどんな気持ちになるのかを、考えさせるようにしています。
褒める時は、120%ぐらいの熱量で!息子もまだまだ単純だから、褒めるとすご~く喜ぶんです。褒める時もただ褒めるんじゃなくて、頑張ったことを言葉にして褒めるようにしています。子どもが「聞いて聞いて!」と言ってきたら、きちんと話を聞き、子どものテンションに合わせるようにしています。
――アナウンサー時代の経験が、子育てで活かされていると感じることはありますか?
中野さん:自分の経験というよりは、アナウンサー時代に出会った方々に、今でも助けられていますね。たまに幼稚園で読みかせをするのですが、子どもが楽しめる本のラインナップに、みなさんすごく詳しいんです。「今、この年齢ぐらいで読み聞かせをするのだけど、どういう本が読みやすくて、子どもの心に刺さるかな?」などと聞いてみると、私が思いつかないような絵本をチョイスしてくれたり。たとえば後輩の松尾翠さんは、京都で子育てをしながら、本にまつわる活動をされているので、いつも素敵な本を紹介してくれるんです。今って、SNSで人とつながっていられますよね。それで、個々の活動も見ることができるし、先輩や同僚たちにいつでも質問ができる環境は助かります。
――中野さんの子育てのモットーは何ですか?
中野さん:子どもが何かやりたいと言った時に、「それはできないよ」とは言わないようにしています。親が、「これはこの子にはできないだろうな」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、挑戦する前からできないとは決めつけないというのを、自分の中のルールにしています。やりたいと好奇心が向かっている時は、なるべくそれを止めないようにしたいですね。
――出産・子育てを経て、中野さんの生き方や考え方で何か変わったことはありますか?
中野さん:アナウンサーとして仕事をしていた時は、とにかく自分が中心で、「自分がしたいことをする」「こんな仕事をしたい」というのを優先してきました。どちらかと言えば、仕事人間です。
でも子どもができてからは、自分の中での優先順位が変わって、子どもが一番に。まだ小さい時期は、親が手を差し伸べてあげないと、どこに行っちゃうかわからないじゃないですか。すべての道筋を作ってあげるわけじゃないけど、正しい道筋を作ってあげられたらいいなと思いますね。そして、「自分がこうしたい」ではなく、「今、この子はどうしたいかな?」と考えるようになったんです。それと、子どもって、ちょっとしたことでも親の影響を受けているんだなと感じることが最近多くて、それって親として責任重大だなと思います。挨拶ひとつにしてもそうですし、私自身が子どもたちの見本にならないといけないんだなと感じています。
――今後、地元でもお仕事の幅を広げていきたいなど働き方のビジョンはありますか?
中野さん:今は、月に1~2回程度、東京に出張に行ったり、香川での仕事を受けたりという感じです。下の子が1歳半になって、やっとおばあちゃんに見てもらえるようになったので、東京出張もひとりで行くようになりました。
せっかく地元に帰ってきたし、あらためて香川っていいところだなと思うことがたくさんあるので、香川の良さを自分なりに発見して、テレビなどで発信していきたいです。ただ今は、子どもとの時間を大切にしたいし、しばらくは今のペースで仕事と育児が両立できたらいいかなと思っています。
息子さんの思いがけない赤ちゃん返りで悩んでいた時期もあった中野さんですが、ネントレを取り入れて、寝かしつけの時間を息子さんとの時間に変えることで、悩みも少しずつ解消していったそう。また、ずっと大切にしてきた人とのつながりを上手に活かしながら、“素”でいられる地元・香川の地で、子育てを自分らしく楽しんでいるようです。
取材・文/内田あり