「泣き叫ぶ声が病院中に響き渡る」「耳を塞いで待つことしかできなかった」レーザー治療に踏み切り断念するまで【異所性蒙古斑・体験談】
赤ちゃんの背中やお尻にある蒙古斑。そのほとんどが成長とともに消えていきますが、数が多かったりアザが濃かったりすると青アザが残ってしまうこともあります。蒙古斑を消すためにはレーザー治療が必要なのですが、その治療は子どもにとってはもちろん親にとっても過酷なもの。途中で治療を断念してしまう人も少なくないようです。1歳のわが子の異所性蒙古斑に悩み、レーザー治療に踏み切ったものの途中で断念したAさんに話を聞きました。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
4カ月健診で異所性蒙古斑と診断
――“異所性蒙古斑”と診断されたのはいつ頃ですか?
「息子の蒙古斑は産まれた時から手首、足首、膝、胸、背中全体と広範囲にあり、成長とともに少しずつ濃さが目立つようになりました。4カ月健診で“異所性蒙古斑”と診断され、その時は『成長とともに消えるかもしれないし、残るかもしれない』と言われて驚きました。しかし、その健診で命に関わる別の病気の疑いが発覚してしまったため、その病気のことばかりが気にかかってしまい、異所性蒙古斑のことはあまり気にかけず月日が経ってしまいました。
大きな病気の疑いが晴れた1歳頃、月齢の近い従姉妹が異所性蒙古斑のレーザー治療を受けたと聞き、一度専門の先生にみてもらおうと形成外科にかかることにしました」
「消えることはない」「すぐに治療を始めたほうがいい」と言われ焦りも
――治療に踏み切ることになった理由はなんですか?
「専門医には『広範囲に蒙古斑があり、けっこう目立ちます。将来皮膚が伸びて薄くはなるかもしれないけれど、消えることはないと思います』と言われたのを強く覚えています。
月齢の低い方が治療の効果が出やすいため『できればすぐにでも治療を始めた方がいい』と言われて焦りを感じました。また、大きくなると治療の痛みで抵抗するようになり、押さえ付けて治療を行うのも大変だったり、子どもの記憶にも残りやすいため、2歳くらいまでに終わらせた方が良いとアドバイスもありました。
息子の場合は蒙古斑の範囲が広く、治療開始も早くなかったため完全には消えないそうで、肌が露出しやすいところを中心に治療を進めるとのことでした。その時、『なぜもっと低月齢で治療できるように早く受診しなかったのか』『もっと早く治療していれば完全に治っていたかもしれない』と後悔しました」
治療する?個性として受け止める?周りの意見に揺れる親心
「夫は『やらなくても良い、これもこの子の個性として親が受け止めてあげないと』、義母は『顔にあるんじゃないんだから無理にやらなくていいんじゃない』と治療に否定的な意見が多く、どうすれば良いのかとても悩みました。
しかし、大きくなってから異所性蒙古斑がイジメの原因になったり、本人が少しでも悩むことになる可能性が少しでもあるのなら、『記憶が残らないうちにできる限り治療してあげた方がこの子のためじゃないか』『治療せずに後悔することはあるかもしれないけれど、今治療すれば後でやらなきゃ良かったなと思うことはないんじゃないか』と治療に対して前向きに考えるようになっていきました。夫も私の意見を受け入れてくれて、レーザー治療を開始することにしました」
病院中に響き渡る声で泣き叫び…耳を塞いで待つしかなかった
――治療中の子どものようすとその時のAさんの気持ちを教えてください。
「治療中は部屋から出て廊下で待つように言われました。子どもは私から離された時点で大泣き。治療中は助手の方2人に押さえつけられながら、病院中に響き渡る声で泣き叫び、私もとても聞いていられず耳を塞いで祈るように待つしかなかったです。
1回目の治療では、あまりの息子の泣き叫ぶ声に気分が悪くなってしまうほどでしたが、回数を重ねるごとに少しは慣れて何も考えずに耳を塞いで静かに待ちました。しかし、いたたまれない辛い時間であるのは変わらなかったです」
――レーザー照射後のお子さんのようすはどうでしたか?
「合計で両足首2回、膝2回、胸1回照射しました。もともと肌が弱いためか、照射し数時間で水疱が全体的にできてしまいました。見ていて痛々しかったですが、息子自身はさほど痛そうな様子はなく、お風呂でお湯がかかっても平気そうでした。むしろ患部に巻いているガーゼと包帯の方が気になるようで、触って取ろうとするのでレッグウォーマーをして照射部位を隠したりしていました」
夏になり治療を中断。消えない蒙古斑に「先が読めなかった」
――順調に進めてきたレーザー治療ですが、途中で断念したそうですね。治療を中断した理由を教えてください。
「1歳4カ月頃、夏になって洋服やレッグウォーマーで照射部位を隠すのが難しくなりました。露出も多くなり日焼けの心配もあったので『また涼しくなってから』と治療を見送っていました。
しかし、子どもに与えるストレスが大きいことと、私自身も苦痛になったこともあって、これを機に治療を中断することにしました。皮膚が弱く治療後の処置が大変だったり、前より成長して押さえつけるのが大変になったことも理由のひとつですが、1番の理由は治療による変化を感じづらく、あと何回治療すれば良いのか先が読めないことが途方もなく辛かったからです」
――今後の治療についてはどのようにしますか?
「照射部位は薄くはなりましたが、もともとが濃かったのでまだはっきり分かります。今後息子が大きくなり、異所性蒙古斑を気にするようになった時に、息子を交え家族で決めていきたいと思っています」
一度は異所性蒙古斑のレーザー治療に踏み切ったものの、過酷な治療に耐えきれず断念したというAさん。お子さんがもう少し大きくなり、自分の意思で「消したい」と思うときがきたら家族で話し合って決めたいと語ってくれました。
異所性蒙古斑のレーザー治療は、幼いうちから治療が始まるので、治療するか・しないかの判断はすべて親に委ねられます。Aさんの息子さんのように広範囲にある異所性蒙古斑だと、親子ともに根気強い治療が必要になるようです。取材を通して“子どもの将来”と“レーザー治療の過酷さ”の間で葛藤する親の気持ちが痛いほどに伝わってきました。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。