生まれたときから背中に色の濃いあざが2つ。「自然には消えない」と言われ、レーザー治療を決意【異所性蒙古斑・体験談】
佐川愛美さん(30才・専業主婦)は、祐介さん(30才・公務員)、さきちゃん(4才)、男女の双子のあんちゃん、いつきくん(1才4カ月)の5人家族(名前はすべて仮名)。公式たまひよインスタグラマーとしても活動し、インスタグラムで子育ての様子も発信しています。1才4カ月の女の子、双子の1人あんちゃんは、生まれつき腰のあたりに2カ所の色の濃いあざがあります。異所性蒙古斑といわれるものです。
愛美さんと祐介さんはいろいろと情報を集め、相談した結果、あんちゃんのあざのレーザー治療を決めました。愛美さんに、あんちゃんのあざの様子や、治療を決めた理由について聞きました。
生まれたときから、あんちゃんの腰に2つの色の濃いあざが
――あんちゃんといつきくんを出産したときのことについて教えてください。
愛美さん(以下敬称略) 1人目のさきは2018年に出産しました。産後1年で保育士の仕事にフルタイムで復帰したんですが、パパの転勤による引っ越しで私は仕事を辞めることに。それで2人目を考え始めていたら、双子を妊娠しました。2人を出産したのは2021年の4月です。
妊娠中の経過は順調でしたが、予定日の1カ月前くらいに羊水に細菌が入ったのが原因で陣痛が来てしまい、張り止めなどの薬でギリギリまで頑張ったものの、少し早い出産となりました。あんが2229g、いつきが2369gで生まれ、NICUに1カ月ほど入院しました。NICUを退院するまで健康面では2人とも問題ありませんでしたが、現在も成長経過を見てもらうためフォローアップ外来に通っています。
――2人が生まれたときにあんちゃんのあざに気づいたのですか?
愛美 はい。あんは生まれたときから腰の広い範囲に青っぽい蒙古斑と、さらに色の濃い異所性蒙古斑が2カ所あります。1つは1cm×4cmぐらいのだ円形、もう1つは約1cm四方くらいの大きさです。写真ではわかりにくいかもしれませんが、実際に見るとかなり濃い色です。NICUの先生に聞いたら、もう少し大きくなってみないとどうなるかわからない、と言われましたが、私は濃い色のあざを見て、レーザー治療してあげよう、と考えました。
痛い記憶が残らないうちに治療を受けさせてあげたい
――あざがレーザーで治療できるということを知っていたのでしょうか?
愛美 上の子が赤ちゃんのころ、足の裏に真っ赤な血管腫と、肩に青あざがあり小児科で相談したんです。そのときに、あざはレーザー治療できると聞きました。結局は、血管腫は場所が足の裏でしたし、大きくなるにつれて薄くなってきたのと、肩のあざも薄く目立たなくなってきたので治療はしませんでした。
ただそのときに医師から、レーザー治療は輪ゴムではじくような痛みがあること、治療をするなら表面麻酔が使える1才以降にできるだけ早い段階で治療したほうがいいということを聞いていたので、夫とは「あんに痛い思いの記憶が残らないうちに早く治療してあげたいね」と、相談していました。
おしりの蒙古斑は、成長とともに薄くなったり、皮膚の成長とともに見えにくくなると聞きますが、9~10カ月健診で、予防接種を受けているかかりつけの小児科の先生に相談すると、「これは自然に消えるあざではない」と言われたことが決め手に。さらに、成長によってあざも一緒に大きくなり、治療が必要な部位が大きくなってしまうともわかり、あんが生まれた病院の皮膚科に紹介状を書いてもらって、治療をすることにしました。
――レーザー治療をするにあたり、皮膚科の医師からはどんな話がありましたか?
愛美 最初に言われたのは、「レーザー治療で子どもが泣いて痛がる姿を見るのがつらくて、途中で治療をやめる親が多いから、パパとしっかり話し合って決めてください」ということでした。
あとは、レーザーによって、治療後に炎症による一過性の色素沈着があることや、皮膚が脱色してしまうことがあるので、3カ月おきに皮膚の状態を見ながら治療を進める、という説明がありました。
消えない、大きくなるあざ。治療には親としての葛藤(かっとう)も
――その話を聞いて夫婦で話し合いましたか?
愛美 夫は仕事で長期間家をあけることが多いので、治療につき添うのは私になります。私が子どもの痛がる姿に耐えられるかどうか・・・。だけどあんの将来を考えると、あざを気にして好きな服や水着が着られなかったり、学校であざが原因でいじめにあったり、ということは避けたいな、と。少しでも薄くなるなら、小さいうちに治療をしよう、という意見は夫と一致していました。
――将来、見た目を理由にしたトラブルやつらさを経験させたくなかったということでしょうか。
愛美 そうですね。もしかすると、子どもからしたらそんなに気にしないかもしれないし、子どもには親が決めて痛い治療を受けさせてしまってるな、という気持ちもあります。
だけど、あんの異所性蒙古斑は消えないし、成長によって皮膚が伸びることで大きくなります。そうなってからレーザー治療をすると、照射部位も広くなり、治療で痛みを感じる時間も延びてしまいます。彼女が成長して思春期を迎えるときのことを考えたら、赤ちゃんの今のうちに治療できるならしてあげたい。色が目立たなくなるくらいまで一緒に頑張ろうと思っています。
彼女が成長して「なんでこんなことしたの」って言われたとしても、「あんちゃんのためにやってあげたいと思ったからだよ」って、私たちなりの理由をしっかり伝えられる覚悟もあります。
――1回目の治療を受けられたそうですが、変化はありましたか?
愛美 2022年の5月に1回目の治療を受けました。1カ所は脱色してしまっていますが、もう1カ所は1回の照射でも、前と比べて薄くなっています。これから1年半くらいかけてあと4回ほどレーザー治療をする予定なので、気にならないくらいになればいいな、と期待しています。
【矢加部先生から】色が濃く消えない異所性蒙古斑はレーザー治療することも
蒙古斑は生後1週から1カ月ころまでの赤ちゃんのおしりや腰に出現する青あざで、日本人にはほぼ100%見られます。6才ごろまでに自然に薄くなるため問題になることはありません。ところが、おしりや腰以外に青あざが出ることがあり、これを異所性蒙古斑と呼びます。濃淡の程度の差はありますが、青あざは割と多く見られます。大半は幼稚園や小学校などの学童期までに薄くなっていきますので経過観察が基本となります。しかし、色調が濃いものは大人になっても残ることがあります。また、見える所に青あざがあると、人から「けがをしてるの?」と心配され、患者さんや親御さんがストレスに思うときにはレーザー照射を行います。
お話・写真提供/佐川愛美さん(仮名) 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
「レーザー治療を受けるのは子どもだから、親が治療を決めることに葛藤もあった」と愛美さん。子どもが嫌がる治療を受けると決めるには、愛美さん自身にも強い決意が必要だったことでしょう。これからの治療も「あんちゃんと一緒に頑張りたい」と愛美さんは言います。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。