児童精神科医役の山崎育三郎「原作を読んで、自分の子育てで共感する部分が多くて泣けました」【インタビュー】
1月20日(金)より全国テレビ朝日系にて放送される『リエゾン-こどものこころ診療所-』。ドラマにはさまざまな生きづらさを抱える子どもとその家族たちが登場します。彼らの困りごとに寄り添う児童精神科医 佐山卓を演じるのは、ミュージカル・歌手・俳優・トーク番組のMCなど多彩な活躍を見せる山崎育三郎さん。「まさにたまひよ世代のママやパパたちに見てほしいドラマ」と話す主演の山崎さんに、ドラマを通して考える個性や子どもとの向き合い方などについて聞きました。
人と違う個性にこそ価値がある
――今回は児童精神科医の役ですが、発達障害(ASD=自閉スペクトラム症、ADHD=注意欠如・多動症、SLD=限局性学習症など)について聞いたことはありましたか?
山崎さん(以下敬称略) はい。僕も子どもがいるので、そのお友だちや親御さんと交流する中でも耳にします。僕にとってはこの原作に会う前から身近に感じていたことではありました。“発達障害”という言葉を、僕たちはドラマの中では“凸凹(でこぼこ)”と呼んでいます。
この役を演じるにあたっては、児童精神科医の先生の本を読んだり、もらった資料を読み込んだり、ドキュメンタリー映像を見たりして自分なりに勉強させてもらいました。
――発達の特性を持つ人の生きづらさについては、どんなふうに感じていますか?
山崎 撮影現場では、ASDとADHD当事者の方が演技指導をしてくれています。その方が子どものころ、空気を読む、静かにする、まわりに迷惑をかけない、みんなと同じようにしないといけない、といったある意味日本的な文化や教育に合わせることが苦手でずっと生きづらかったそうです。
近年、発達障害という言葉が少しずつ認知されてきたり、今回ドラマ化されたりすることで、自分と違う個性を持つ人のことを受け止めてくれる、寄り添ってくれる社会になってほしいと話していました。
僕自身も共感する部分はあります。みんなと同じようにちゃんとできる子がよしとされて、人と違うことをやるのはダメなこと、という側面には疑問を感じる部分も。エンターテインメントの世界で生きてきた僕にとっては、人と違う個性こそ価値があると思っています。
子どもたちの才能や魅力が輝くように受け止めてあげたい
――山崎さん自身も凸凹の特性がある人と出会ったことはありますか?
山崎 以前、音大で学んでいたときに、普段は人とコミュニケーションを取るのが苦手でも、ピアノを弾いているときはものすごい集中力で素晴らしい演奏をする人に出会ったことがあります。今回のドラマでも、凸凹がある子どもたちには、何か一つのことに秀でていたり、豊富な知識があったりする場面が見られます。その人にしかできないこと、その人だからこそ持てる強み、それこそに価値があることではないかと思っています。
みんなと同じにできる子もすばらしいけれど、みんなと同じじゃないことが一つある子もすばらしい。みんなそれぞれ凸凹があって、その凸凹が大きいほど、可能性や価値を秘めているんじゃないかと思っています。どんな子どももみんな才能があって、魅力がある。大人として、その個性が輝くように受け止めて育ててあげたいですよね。
日々頑張って子育てしているママやパパたちの心に届くような、寄り添えるようなドラマにしていきたいと考えています。
子どもとの向き合い方のヒント
――子育て中のママ・パパにはどのようなことを伝えたいと考えていますか。
山崎 佐山は子どもたちの病気を治したり、困難をずばっと解決したりすることはありません。子どもの目を見て、ただ話を聞いてあげることや、子どもが何を言いたいかを受け止めてあげること、その子自身が持っているありのままを受け止め、そして心ごと抱きしめてあげること。それが、佐山が子どもと向き合うときに大事にしていることです。
そういった子どもとの向き合い方に、子育てする上でのヒントも隠されているような気がします。親だからって、父親としてこうしなきゃとか、母親はこうするべき、と思う必要はないと思うんです。親と子である前に、人と人として、自分が感じていることを伝えて、子どもが感じていることを受け止める。その心のつながりが大切なのかもしれません。このドラマを見たあとは、きっと自分の子どもをただ抱きしめたくなると思います。
コロナでたくさんの機会を失ってしまった子どもたちに思うこと
――山崎さん自身の子ども時代と、現代の子どもたちとで、違いを感じることはありますか?
山崎 今いちばん違うのは、新型コロナウイルス感染症のことだと思います。ずっとマスクをつけている生活なんて、自分の子ども時代では想像もできなかったようなことです。子どもたちはマスク生活でお友だちの顔もちゃんと見えないし、外でマスクをして走れば呼吸も浅くなるし、健康面でも心配です。
運動会などの行事もなくなったりして、みんなで何かを一緒にする機会が削られてしまって・・・そういう意味では本当にかわいそうだと思います。授業参観や懇談会といった親同士が集まる機会がなくなってしまったのも残念です。
学校でいろんな機会を失ってしまったぶん、僕もなるべく子どもと過ごす時間を増やすようにしています。家族でピクニックをしに行こうとか、スポーツをしに行こうとか、せめて家族で楽しみを見つけて、子どもたちにいろいろと経験させてあげたいと思っています。
お話/山崎育三郎さん 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
原作を読んだ感想を「自分も子育てをしていて、原作を読んで共感する部分が多く、泣けました」と山崎さん。現場で子役の子どもたちと一緒になると、セットの診療所のおもちゃで遊ぶ姿を見て和ませてもらっているのだとか。山崎さんの話からは、優しいパパとしての一面も垣間見えました。
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山崎育三郎さん(やまざきいくさぶろう)
PROFILE
1986年、東京都出身。2007年ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。以降『エリザベート』『モーツァルト! 』など数多くの舞台に出演。ドラマ代表作に『下町ロケット』(2015年・TBS系)、連続テレビ小説『エール』(2020 年・NHK)、大河ドラマ『青天を衝け』(2021年・NHK)などがある。実写映画『美女と野獣』では、野獣の日本語吹き替え版を担当。日本テレビ系『おしゃれクリップ』ではMCを担当。
金曜ナイトドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』
1月20日(金)より、全国テレビ朝日系にて毎週金曜 夜11:15〜0:15放送。(※一部地域で放送時間が異なります)累計120万部を突破し、「モーニング」(講談社)で現在も連載中の大人気同名漫画が原作。自らも発達障害=凸凹(でこぼこ)を抱える児童精神科医と研修医が、生きづらさを持つ子どもと親に正面からまっすぐ向き合う、感涙必至の医療ヒューマンドラマ。