息子の素直な言葉に“気づき”がある『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』の著者・まゆんさんにインタビュー
看護師でシングルマザーのまゆんさんは、自閉スペクトラム症で特別支援級に通う息子の太郎くん(中1)の母。じいじやばあば、まゆんさんの妹・はるんさんなどの温かい家族に見守られながら暮らす太郎くんですが、ふとした瞬間に発せられる太郎くんの素直な言葉には不思議な説得力があります。
まゆんさんが育児漫画を描くようになったきっかけや、太郎くんとの日常についてお話を聞きました。
3歳のころ保育園で指摘、自閉スペクトラム症と診断
――育児漫画を描き始めたきっかけはなんですか?
まゆん「2019年、太郎が小学生4年生の頃から描き始めました。育児に対して少し余裕が出てきたことで振り返る時間も増え、何か形に残そうと思い、最初ははてなブログさんで文章と挿絵を投稿していました。
それを読んでくれていた友人がInstagramでの漫画投稿を教えてくれました。もともと漫画を描くことが好きだったためハマりこんで描くようになりました」
まゆんさんが帰宅すると
<キャットタワーに顔を突っ込んでいる太郎くん>
――太郎くんはどういった症状があるのでしょうか?
まゆん「幼い頃は多動症状が強く出ていました。その他にも偏食、空間認識の困難さがありました。3歳の頃保育園からの指摘があり診断に至りましたが、前からそのような予感はありました」
アスパラベーコン炒めは食べるけど
<アスパラベーコン巻きは食べない>
そんな太郎くんにじいじが共感!
<じいじの例えにまゆんさんも納得>
会話は例え話を用いてわかりやすく
――特に大変に感じる時はどのような時でしょうか?
まゆん「現在は大変と感じることは減ってきましたが、幼い頃は癇癪やイベント前の体調不良が大変でした。イベント前の体調不良は、本人はイベントに対してストレスを感じていることを認識しておらず『大丈夫』『なんもない』と言っていました。そんなときは太郎を優先し、体調が崩れると仕事は休ませてもらっていました」
――太郎くんと話す時に家族が意識していることはありますか?
まゆん「会話の中でわからない言葉が出たとき、太郎は表情が変わります。その時々でばあばと私で『わかる?』『わかってない?』と確かめながら会話をしています。例え話をよく用いて説明します」
おいしさを表すとき
<星の数で表すのが太郎くん流!>
――まゆんさんが思う息子くんの好きなところ、いいところはなんですか?
まゆん「前向きな発言が多いところと、人の悪口を言わないところです」
太郎くんが自閉症であることを本人に告げる
<太郎くんがどう思うのかまゆんさんは内心ドキドキ…>
太郎くんから返ってきた言葉は…
<だれしもがみんな支え合って生きていることを気づかせてくれた>
中学1年生の太郎くん、交友関係に嬉しい変化…!
――書籍の中で特に思い入れのあるエピソードはどれでしょうか?
まゆん「『いろんな生命』は、はるん(まゆんさんの妹)と太郎のやり取りの話です。太郎は感情移入して涙を流すことが今までに1度もありません。はるんが子宮ガン宣告されて涙を流しているのを見ながら『はるん、泣いてるの?』という場面をはるんから聞いて描きました。太郎ははるんの涙をみて何を感じたのかとか、はるんは太郎から声をかけられて何を感じたのかとか。それぞれの気持ちを考えると何とも言えない気持ちになりました」
子宮ガン宣告されたはるんさん
<昔の太郎くんを思い出して「子どもが欲しい」と気付かされたはるんさん>
――最近嬉しかった太郎くんの成長はなんでしょうか?
まゆん「現在中学1年生ですが、初めて友だちと休日に外で遊びました。それまでは1歩も外へ出なかったのですが、友人との関係性に変化が出てきました」
現在は中学1年生の太郎くん。成長とともにまゆんさんが大変に思うことも減ってきて、休日に友だちと遊ぶなどの今までにない一面を見せてくれているようです。
日常生活の中で悩みにぶつかってしまうこともたくさんありますが「ふつうってなんだろう……?」「あたりまえって何?」と広い視野で考えてみると、なんだかちっぽけな悩みに思えてくることもありますよね。まゆんさんの新刊『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』は、型にはまらない考えを持った太郎くんが、凝り固まった考えを優しくほぐしてくれる……見ている人があたたかい気持ちになれる一冊です。(文・清川優美)
『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』
プロフィール /まゆん
看護師でありシングルマザー。自閉スペクトラム症で支援学級に在籍する息子・太郎くんとの日々を漫画にして主にInstagram(@mayun4311)で発信している。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。