出産3日後に夫が陽性に…コロナに振り回された産後育児『ハラが減っては育児はできぬ』大町テラスさんにインタビュー
漫画家の大町テラスさんは、2歳の男の子・ミロちゃんを育てている一児の母。書籍『ハラがへっては育児はできぬ』は、コロナ禍の出産や食生活を描いていて「リアルで共感できる!」「レシピが参考になる」と注目を集めています。
そんな大町テラスさんに育児×食をテーマにした漫画を描くようになったきっかけや、妊娠・出産・育児についてお話を聞きました。
帝王切開で出産後の3日目に夫がコロナ陽性に!?
――育児と食をテーマにした漫画を描いた理由はなんですか?
大町テラス「もともと自炊をするのも食べ歩きをするのも大好きでした。これまでの著作『お熱いのがお好き』『まにまに道草』の読者さんからもごはんの描写が良かったと感想をいただけることが多く、私自身も好きで興味の対象である“ごはん”をメインに据えた作品を描いてみたいなと思っていました。
コロナ禍での妊娠と出産を経て、赤ちゃんのお世話に明け暮れるばかりで、なかなか自由に出歩けない時期がありました。そんなときも生活の中での楽しみはやはりおいしいものを作って食べること。コロナ以前とは少し違う意味をもった“ささやかなおうちごはんの喜び”や、はじめての育児体験を題材にした作品を描くことでこの時代の雰囲気を残しておきたいという思いがありました」
『肉シュウマイ』①
<育児中はささやかな晩酌が最高に幸せ!>
――妊娠・出産中、大変だったことはなんですか?
大町テラス「単行本に収録されている2話、3話にも描いたのですが、帝王切開で出産後3日目に夫からコロナ陽性だったという連絡が入りました……。『あと数日で退院して夫とこどもと待望の3人での生活がはじまるんだ』と期待していたところだったのですが一気にこの先の生活が不安になってしまいました。
2023年の4月現在では、世間全体のコロナへの忌避感や恐怖感も段々薄れてきているように感じますが、当時(2021年1月頃)はまだまだ感染者も少なく、情報も少ない時期だったのと、出産後のナイーブな時期だったこともあり、赤ちゃん含めた家族の体調管理にはとても気を使っていました。
子どもが生後1カ月過ぎた頃に高熱を出し、尿路感染で入院することになってしまいました。その際もお見舞いは1日に1回だけ、もし自分に少しでも風邪症状が出たらそれも行けなくなる…と通常より厳しい制限がかかり、コロナ対策に振り回されたことが辛かったです」
『お祝い膳』①
<産後入院中、夫がコロナになり一気に不安が押し寄せてきた>
<全然お祝い気分になれないことを看護士さんに話すと……>
<「生まれてきておめでとう」息子を祝う“お祝い膳”>
<がんばろう!「ハラが減っては育児はできぬ」>
イヤイヤ期で食わず嫌いに突入、日々のメニューに苦戦
――育児をしていて「大変だなぁ」と思うのはどんな時ですか?
大町テラス「とにかくおっぱいをよく飲んでよく寝てくれるタイプだったので、0歳児の頃は良かったのですが子どもが2歳になった現在、食わず嫌いに困っています。
母親の私はこんなにも食べることが好きなのに、なぜ子どもは全然ごはんに興味がないのでしょうか(笑)。『これなら食べてくれるかな?』と思うものを色々と手作りしているのですがひと口も食べてもらえずお皿をひっくり返されてしまうこともよくあります。
とにかくなんでもイヤイヤ!の時期なので、食べなくても仕方ないと割り切ることも時には必要だなと思うのですが、ごはん好きの母としてはできれば食事の楽しさを知って欲しいし、もちろん栄養もしっかり摂って欲しいという気持ちも捨てきれず、日々のメニューに頭を悩ませています」
――産後おいしいと感じた食事はなんですか?また、産後よく食べていた(作っていた)食事はなんですか?
大町テラス「産後は母乳がよく出て、食べても食べてもおなかが空いていたので、何を食べてもおいしかったです!
妊娠前はお酒が好き、お酒のおつまみみたいな食べ物が大好き、デザートには興味なし…というタイプだったのですが、産後はケーキが大好きになってしまいました。単行本の4話目にも描いたのですが、夫がタルトタタンを焼くようになったり、桃にバニラアイスを詰めたデザートをつくってくれたものもうれしかったです。
子どもが2歳前に卒乳してくれたので、最近はお酒やおつまみが好きな気持ちも復活しているのですが、ケーキが好きなのも変わらず…そろそろ体重増加を気にしないとまずいかなと思っています」
『タルトタタン』
<コロナ禍育児でナーバスに…夫が作ってくれたタルトタタン>
ごはん作りは食のこだわりがあるママが担当、お皿洗いはパパ
――旦那さんとの家事分担(特に料理)はどのようにしていますか?
大町テラス「産後すぐの頃は夫にも料理をしてもらっていたのですが、最近は結局ごはんは私の担当に戻ってきました。私の方が食事に対するこだわり『今日はあれが食べたい』『これを作ってみたい』というのが強いので『得意な方がやったほうがいいよね』ということで私が作って夫がお皿を洗う、というスタイルに落ち着いています。
夫は夜が弱く、朝早起き、私は逆なので、朝の子どもの簡単な朝食を作ったり、保育園への送りを担当してもらい、夕方のお迎えと夕食はわたしが担当しています。
私はお酒を飲むことが最大の息抜きなので、週末や土日は子どもも入店OKの居酒屋さんに行ったり、ファミリーレストランでお酒がすすむメニューを開拓したりと、外食も週に1〜2回くらいは楽しんでいます。夫婦ともに疲れてどうしようもないときは、子どもと3人でスーパー銭湯へ行きおふろに入り施設内の食事処でごはんを食べてあとは寝るだけ!で帰るのが最高のコースです」
――育児中でも簡単にできるオススメの料理はありますか?
大町テラス「単行本の6話に描いた汁なし温しゃぶは簡単で野菜もたくさん摂れておすすめです。 葉物野菜としゃぶしゃぶ用の豚肉をさっと茹でてポン酢とおろしにんにく、オリーブオイルであえるだけ!食べるラー油や麻辣醤などで味変するのも楽しいです。
大人用にはテイクアウトの焼き鳥を買ってきて、子どもには鶏そぼろを手作りするなど一部テイクアウト、一部手作りで手を抜くこともあります。食べたいものを食べたい時にできるだけ楽をして食べられるようにしています。
決してラクではないけどどうしても食べたい時は春巻きを具からつくって揚げたりすることもあります。そんな日の副菜はつくりおきのナムルやレトルトスープで簡単にしています」
『ワンオペ日の汁なししゃぶしゃぶ』
<ワンオペの日にぴったり!10分以内で食べられる温しゃぶしゃぶ>
――最後にたまひよの読者のみなさんとこれから出産・育児を経験するパパ・ママたちにひと言お願いします。
大町テラス「赤ちゃんがうまれてみるとかわいくてかわいくて、もうなんでもしてあげたい!と夢中になって自分をないがしろにしてしまいがちでした。が、やはり自分の好きなものをなにもかも封印すると徐々にストレスが溜まるものだと思います。ママやパパが楽しそうに暮らしているのが子どもにとってもいいことなんじゃないかと自分に言い聞かせて、適当に手を抜いたり好きなことをして楽しく子育てしていきましょう!そして、子どもの成長は本当に早いのでかわいい仕草や発言を覚えておけるように、たくさん動画を撮っておくことをおすすめします」
産後すぐに夫がコロナになるというハードなスタートダッシュを経験した大町テラスさん。今より感染対策が厳しかった時期なので、産後メンタルと重なってとても不安な日々を送っていたと思います。
忙しい毎日を送っていると、日々のごはんも楽しむ余裕がなくただ胃袋に放り込んでしまうこともあると思います。そんなときにテラスさんの本を読むと「なんだかおなかが空いてきた!」「何か作ってみようかな?」と食べることの喜びや幸せを蘇らせてくれます。(文・清川優美)
『ハラがへっては育児はできぬ』
プロフィール /大町テラス
漫画家。サウナと居酒屋が好き。フォアミセス(秋田書店)にて「ハラがへっては育児はできぬ」を連載中。単行本も発売中。既刊に「お熱いのがお好き?」(イースト・プレス)「まにまに道草」(講談社)。Twitter(@te_rra_ce)。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年4月の情報で、現在と異なる場合があります。