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育児の大変さは当たり前…?家族を諦めない“weメッセージ”とは。『ほしいのはつかれない家族』の著者・ハラユキさんにインタビュー

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東洋経済オンライン連載「ほしいのは『つかれない家族』」より。パートナーに違和感や不満を伝えたいときの主語の使い方「weメッセージ」を紹介して話題に。

 ハードワーカーな会社員の夫と、現在11歳の息子「ぽうちゃん」と暮らすハラユキさん。過酷な産後クライシスやワンオペ育児を乗り越え、2017年からの2年間のスペイン暮らしを経て、さまざまな気づきがあったといいます。ハラさんに、海外の育児事情や理想の夫婦関係について伺いました。

日本のママは、どうしてそんなに大変なの?

 ハラさんは夫の仕事の都合でスペイン・バルセロナに2年間滞在していたとき、現地の日本人ママたちから「日本で暮らすママは大変だよね。すごくがんばってる。私だったら無理かも」と言われたことがとても印象的だったといいます。

「同じ日本人のママから、そんなふうに言われるのはどうしてだろう?と思いました。よくよく話を聞くと、長時間労働や男女差別など、日本ならではの社会問題が理由だとわかったんですけど、日本にいるとそういう“大変さ”が当たり前だと思っていた自分にも気づきました。

 日本では周りにワンオペのママ友がいっぱいいるし、パートナーより忙しいのに家事育児をほとんどこなしているママも大勢います。私自身、『わが家も大変だけど、みんな頑張っているし…』と思っていたけど、そもそも日本のママ自体が頑張りすぎじゃないのかな?と考えるようになりました」

日本のパパが、育児にうまく関われない理由

「つかれない家族」(講談社)より。フランスのパパの産休事情を紹介。

 育児先進国と言われるフランスやスウェーデン、男女平等ランキング世界一のアイスランドなど、「本当のところはどうなの!?」と疑問を持ったハラさん。スペイン滞在中は、いろいろな国の人たちに、取材という形で産後や育児、夫婦関係について話を聞いて回ったそうです。

「フランスやスペインでは、産院で看護師さんたちが夫に『授乳以外は全部あなたがやるのよ!』などと指導することもあるそうです。日本では産後でボロボロになっているママがお世話を覚えて、徐々にパパに教えるケースが多いようなのですが、やっぱり外部のプロからビシッと言われる方が効果的ですよね。

 そういう話を聞くと、日本ではまだ海外に比べるとパパが育児指導を受けられる産院は少ないですし、育休の制度も変わりつつありますがまだまだ取りづらい印象ですし、保育園でもママにばかり連絡が来たりします。私も父に『夫に家事育児させたらあかんぞ!』と言われてハイハイ~って流していたんですけど、そもそも夫が育児の枠に入っていない。育児しないんじゃなくて、育児したいけどなかなか関われなくて苦しいパパもいることに気づきました」

「非の打ち所がない子育て環境の国」は、幻!?

「つかれない家族」(講談社)より。イギリス人パパと日本人ママの夫婦。スペインでは家政婦さんを雇う家族が多いそう。

 では、ハラさんが滞在していたスペインでの育児事情はどうなのでしょうか?

「たとえば私が話を聞いたイタリア人の地下鉄運転手のパパと、日本人の雑貨屋店員のママのご家庭は、息子さんが1人いて、夫婦2人でダブル時短を取っていました。残業がなくて休みを取りやすく、おなかの赤ちゃんのために妊婦検診にパパが行くのは当たり前。私が滞在していた当時のスペインは平均年収も高くなく、経済もうまくいっていない状況でしたが、家事サポートを定期的に呼ぶなど『自分たちの疲れをとるためにお金を使う』ことへの優先順位が高くて、そこが日本人とは違うなと思いました。

 日本ではまだそこまで会社の制度が整っていないし、移民の方々による安価な掃除サービスもないし、家に他人を入れることに抵抗を感じる人も多いので、同じ形で解決するのは難しいですよね。わが家は時短家電をフル活用していますが、真似できるところは真似て、ラクをすることも大事なのかなと思います」

 SNSなどでは、「あの国の子育て環境はすばらしい、日本も見習うべき」といった情報が目につきやすく、海外での育児のすばらしさがクローズアップされがちです。ただ、単純にそうとは言い切れないとハラさんは言います。

「当時スペインには学童はなかったし、路地でタバコを吸っている人も多くて、やっぱり日本のほうがいいな、と思うことも多々ありました。スウェーデンも福祉は進んでいるけど税金はとても高いし、そのわりにはまだ足りないなと思うところもいろいろあります。一方で、日本の会社員の育休制度は世界トップレベルだし、子育て支援が充実している自治体も結構ありますよね。どこにも完璧な国はないれけど、自分たちに合う国や自治体はあると感じています」

 また、取材を通じて、ハラさんは海外のママたちにも人それぞれの事情や悩みがあると感じたといいます。

「どんなに仲良さそうでオシャレな夫婦でも、子どもが生まれてバタバタになると『毎日が戦争よ!』と揉めていて、それぞれの家庭で家事育児の分担バランスや方法を話し合って、大変な中でも各々のやり方を見つけて、どうにかやってきたんだと分かりました。

 たとえば『フランスの子どもは1人ですぐに寝て夜泣きをしないから、夫婦でゆっくり大人の時間を持てる』って、よく聞きますよね。国際結婚をしたフランス在住の日本人ママに話を聞いたら、お子さんが全然寝てくれないタイプで、夜泣き対応もしたし7歳までずっと添い寝し続けていたそうです。仕事もホワイトかと思いきや、会社の上層部には長時間働く人もいます。当たり前ですがどんな国でも、結局は各家庭によって状況が違うんだと知りました」

決めつけずに話し合い、寄り添う夫婦関係に

ハラユキさんが運営するオンラインコミュニティ「バルハラユキ」。
ハラユキさんが運営するオンラインコミュニティ「バルハラユキ」。

 世界共通で、家事育児のベストなやり方は違う。だからこそ夫婦間での話し合いが大切――ハラさんは、東洋経済オンラインの連載『つかれない家族』で、そのことを繰り返し読者に伝えてきました。日本に帰国したハラさんは現在、『つかれない家族』に連動した『バルハラユキ』という“仮想バル”のオンラインコミュニティで、家事育児分担やパートナーシップ、お悩みなどについて話し合う場を設けています。

「国内外いろいろなパパママのお話を聞くたびに思うのですが、本当に、育児や夫婦関係の正解ってなかなか出ないんです。ただ共通しているのは、育児の考え方やスタンスをよく話し合って、自分たちにとってのベストを見つけることです。話し合いの方法で私がいいなと思ったのは、『私たち(we)はこうなんだ』っていう“weメッセージ”です。『あなた(you)はこうだから』と相手主体で伝えると責めてる感じで逆効果だから『私(I)はこう思う』と伝えましょう、というのはよく言われることですが、夫婦間では『私たち(we)』で伝える。“私たち夫婦”の共通の問題として、どちらかが決めつけずに相手と一緒に考え、寄り添うことが大事なのかなと思います」

 最後に、育児中のママ・パパに向けてメッセージをいただきました。

「育児中は自分のつかれに気づかなかったり、気づいても無視しちゃったりしがちです。私も、子どもは1人だし、もっと大変なママたちはいるし、私がそんなワガママ言っちゃいけない、がんばろう!って思っていたんですけど、結局体調不良でダウンしてしまいました。つかれは人と比べちゃいけないし、自分のこともパートナーも、つかれたと感じたら認め合い、お互いをいたわってほしいと思います」

(取材・文 武田純子)

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年5月の情報で、現在と異なる場合があります。

ハラユキさん

コミックエッセイスト&イラストレーター。編集プロダクション勤務を経て2003年に「カワハラユキコ」名義でイラストレーターとして独立。2017年、現在の「ハラユキ」に改名。2008年に結婚、2012年に男児出産。一児の母。著書に「ほしいのはつかれない家族」(講談社)など。家事育児と家族のコミュニケーションをテーマとしたオンラインコミュニティ「バル・ハラユキ」運営中。

コミックエッセイスト&イラストレーター・ハラユキ公式サイト

東洋経済オンライン ハラユキさんページ

バル・ハラユキ(ハラユキさんがオーナーを務める“架空バル”のオンラインコミュニティ)

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