泌尿器科医がChatGPTに聞いてみた「子どもの包皮をむくべきですか?」その回答は?【ママ泌尿器科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第38回。今回は、今話題のChatGPTに岡田先生が普段相談を受けるような質問を聞いてみたら…というお話です。「お母さん(お父さん)のためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#38です。
「子どもの包皮をむくべきですか?」ChatGPTの回答は?
「乳幼児や幼児の包皮は、癒着していることがあります。包皮の癒着が自然に解けるまで、無理に引っ張らないでください。
一般的には、乳幼児や幼児の包皮を剥く必要はありません。包皮は陰茎の先端を保護し、感染から守る役割を果たしています。
包皮の癒着が問題となっている場合や、狭窄が進んでいる場合など、特定の状況では医師の指示に従う必要があります。」
今話題のChatGPTに「子どもの包皮をむくべきですか?」と聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。
医療専門家による回答ではないため、最終的には医師や専門家に相談してくださいね、という断りを入れつつも、医学的な知見を取り入れ、かなり分かりやすくまとまった回答を提示してくれることに驚きました。
ほかにも、「子どものおねしょは何歳まで様子を見てもいいですか」「子どもが性器を触ります。適切な対応を教えてください」といった、私が普段よく相談を受けるようなテーマについても「悪くない」と感じる回答を出してくれました。
今後、人には話しづらいテーマについてAIに助けを求める方も増えてくるかもしれませんね。
まだまだ完璧な情報を持っているわけではない
一方で、危ないなと感じる回答もありました。
「子どもが陰嚢(いんのう※たまたまのことです)を痛がります。何科に行けばいいですか。」
という質問に対しては、
「子供が陰嚢の痛みを感じている場合、小児科医に相談することが適切です。
小児科医は子どもの健康に関する専門家であり、幅広い症状や状況に対応する能力を持っています。(以下略)」
という回答が返ってきました。
もし人間の医師がこの質問を受ければ、「精巣捻転」について必ず言及し、
「陰嚢の痛みの原因として、精巣捻転という緊急性の高い病気の可能性があります。その場合、一刻も早く手術が可能な総合病院の泌尿器科への受診が必要です」といった回答をするでしょう。
「まずはかかりつけの小児科に行って、紹介状を書いてもらえばいいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。普段はそれで問題ないのですが、精巣捻転に関してはとにかく時間が勝負です。
この病気は、精巣にいく血管がねじれてしまうことで、精巣に酸素やエネルギーが供給されなくなります。このねじれを解除することで再び血流が戻れば精巣は救済されますが、時間が経つと壊死してしまい、摘出することになります。
精巣を救済するためには、発症から6時間までがゴールデンタイムと言われており、少しでも早く手術可能な施設にたどり着くことがきわめて重要なのです。
そう考えると、「子どもの陰嚢の痛みは小児科へ」というChatGPTの回答は、危険な誤りであると言わざるを得ません。
最後に、「岡田百合香という人物について教えてください」と聞いてみたところ、ご存じないようでした。ちょっとがっかりしたので「『おちんちんの教科書』(※私の著書です)とはどのような本ですか」とも聞いてみましたが、
「申し訳ありませんが、『おちんんちんの教科書』というタイトルの本について、私のデータベースや知識には情報がありません。」
と言われてしまいました。
ChatGPTもまだまだ知らないことだらけなんですね。
AIとはいえ、誤った知識を伝えてくることもあるし、完璧な情報を持っているわけではないことをちゃんと理解しつつ、うまく活用する方法を探っていきたいと思います。
構成/たまひよONLINE編集部
●記事の内容は2023年7月の情報で、現在と異なる場合があります。