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今年6月に経産省が発表。ネオジム磁石などのマグネットセットが製造・販売規制へ!子どもが誤飲して、腸管に穴が開く事故も【小児科医監修】

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磁気金属球からの組成、カオスから理想的な形状へ
●写真はイメージです
ExcellentPhoto/gettyimages

経済産業省は、2023年6月19日から強力な磁石「ネオジム磁石」などを使ったマグネットセットの製造・販売を規制すると発表しました。背景には、子どもの誤飲事故が後を絶たず、万一、誤飲すると磁気が強力なために、腸管に穴が開くという危険性もあるためです。なかには誤飲した磁石を取り除くために開腹手術をした子もいます。
ネオジム磁石などを誤飲したときの危険性について、子どもの事故に詳しい、小児科医 山中龍宏先生に聞きました。

小さいため子どもが誤飲しやすく、誤飲すると開腹手術することも

強力な磁石を2個以上、時間をずらして誤飲すると、磁石同士が図のように腸管を強くはさみ込んで動かなくなり、その部分に血液が流れなくなって壊死(えし)を起こし、腸管に穴が開くことも。

ネオジム磁石などを使ったマグネットセットの製造・販売が規制された背景には、子どもたちの誤飲事故があります。

――「ネオジム磁石」など強力な磁石の誤飲事故は、どのぐらい起きているのでしょうか。

山中先生(以下敬称略) 強力な磁石またはネオジム磁石のマグネットセットを子どもが誤飲した事故情報は、事故情報データバンク 、医療機関ネットワーク、日本小児科学会傷害速報において、 2017 年1月から 2021 年 12 月までの5年間で 10 件確認されています。

とくに問題なのは重症度で、ネオジム磁石は、一般的な磁石の10倍以上の磁力があり、2個以上時間をずらして誤飲すると磁石同士が腸管をはさみ込んでくっついて動かなくなります。ママ・パパが誤飲に気がつかず、時間がたってしまうと腸管に穴が開き、最悪の場合は、死に至ることもあります。また磁石同士が腸管をはさみ込んでくっついてしまうので、便の中にも出て来ません。誤飲した場合は、緊急開腹手術など、大がかりな処置が必要になります。

1セットで何百個も入っていて数が多くてママ・パパが管理しづらく、直径3~5ミリなど小さいので、子どもが誤飲してもすぐに気づきにくいのも問題です。

緊急手術によって、37個のネオジム磁石が取り除かれた例も

ネオジム磁石の誤飲によって、海外では死亡事故も発生しています。

――ネオジム磁石の誤飲による、事故の状況を詳しく教えてください。

山中 米国消費者製品安全委員会(CPSC)の報告によると、アメリカ、オーストラリア、ポーランドで死亡事故が発生しています。日本でも、日本小児科学会の傷害速報では、次のような事故事例が報告されています。

【事例1/1歳1カ月 男児】
嘔吐を繰り返すので、近所のクリニックを受診して胃腸炎が疑われる。しかし症状が改善しないため、嘔吐を始めて7日目に別の医療機関を受診する。腹部のX線撮影で、5ミリ大の球状の物体が5個連なっている影が確認されて、ネオジム磁石の誤飲が疑われた。誤飲から7日以上経過している可能性が高く、自然排出は期待できないため、緊急開腹手術を行った。小腸に穴が開いており、そこから5個のネオジム磁石が摘出された。術後9日目に退院した。
保護者に事情を聞いたところ「ネオジム磁石のマグネットボールは、13歳の長男のために購入したもので、下の子たちも手に取って遊んでいた。まさか誤飲するとは思わなかった」と話している。

【事例2/1歳9カ月 女児】
1歳5カ月ごろに、インターネット通販でネオジム磁石が200個以上入ったマグネットセットを購入。普段は、ふたつきの箱に入れて、ソファの下で保管していた。しかし、子どもが磁石を口にしているのを見て、子どもの手の届かない高い場所(高さ120cm)のところに、磁石の箱を移動した。
突然、嘔吐したため近所の医療機関を受診。胃腸炎が疑われて吐きけ止めが処方された。嘔吐が続いたため、翌日、かかりつけ医を受診。経口補水療法などを行ったが、嘔吐が続いたため、ほかの医療機関を受診する。腹部のX線撮影をしたところ、腸管内に数珠状に連なる異物を発見し、保護者に事情を聞いたところネオジム磁石の誤飲が疑われた。
すぐに外科対応が可能な医療機関に移って、腹部のCT検査などを行ったが、自然排出が期待できないため、緊急手術となった。腸管には穴が開いており、その穴の中から多数の磁石が見つかった。小腸を切開して磁石を取り除いたところ、37個の磁石を誤飲していた。術後9日目に退院した。
保護者は医師に「磁石が200個以上あるので、何個あるかは数えていない。口の中に入れると危ないとは漠然と思っていたが、まさかこのような事故になるとは思わなかった」と話した。

大人が見守るだけでは、子どもの事故は防げません

これまでも消費者庁や国民生活センターなどから、ネオジム磁石などの誤飲事故の危険性は知らされていました。今回の製造・販売規制は、山中先生は「適切な判断」と言います。

――ネオジム磁石などの誤飲の危険性は、日本小児科学会と消費者安全調査委員会が連名でリリースを作成するなどして、注意を呼びかけていました。

山中 子どもの事故は、リリースを作成して注意を呼びかけたり、通達を出したりしても、ママ・パパに周知されにくいというのが一つの課題です。

また製品の安全基準や安全対策に対して最も厳しい地域はヨーロッパです。日本は「大人が見守っていれば、子どもの事故は防げる」と考える傾向があります。そうしたなかで、ネオジム磁石などを使ったマグネットセットの製造・販売規制は、迅速で適切な判断だったと思います。

――大人が見守るだけでは、子どもの事故は防げないのでしょうか。

山中 ヒューマンエラーは必ず起きるので、見守りだけでは子どもの事故は防げません。

たとえば昨年や一昨年に起こった園バスの置き去り死亡事故もその一つです。2022年9月、3歳の女の子が園バスに置き去りにされて、重度の熱中症で亡くなってしまうという、痛ましい事故が起きました。前年の2021年7月にも、同じような事故が起きていて、5歳の男の子が亡くなっています。

2023年4月から、送迎バスの置き去りを防ぐために安全装置の取りつけが義務化されましたが、それまでは対策の柱といえば見守りでした。人の見守りだけに頼っていては、事故は防げません。

マンションのベランダなどからの子どもの転落事故が後を絶たないのも、根底には「大人が見守っていれば大丈夫」という考えがあるからです。ママ・パパが毎日ずっと、子どもを見守り続けることは不可能です。人の目だけに頼らない、有効な対策が必要です。

――ネオジム磁石などのマグネットセットの製造・販売が規制されたということは、「もう購入できない」と考えていいのでしょうか。

山中 店舗では販売されませんが、個人輸入はできるので、インターネットのショッピングサイトなどで購入できてしまうことは考えられます。またフリーマーケットなどで販売されることもあるでしょう。お下がりでもらうこともあるかもしれません。

そのためママ・パパが「製造・販売が規制された危険なもの」という認識をしっかり持ち続けることが必要です。

――時間の経過とともに、だんだんネオジム磁石などのマグネットセットは見かけなくなりますか。

山中 時間がたつとSNSで取り上げられて、再び話題になることもあります。

たとえば足入れつき浮き輪は、何件も溺水事故が発生していて、リコール商品となっています。消費者庁のリコール情報サイトでも確認できます。一時は、販売されていなかったのですが、年月がたつにつれ、同じようなタイプの足入れつき浮き輪がインターネットのショッピングサイトなどで販売されるようになりました。

子どもの事故は、何も手を打たなければ同じような事故が繰り返し起きます。そのためママ・パパが「危険な製品」ということを忘れないことが大切です。

お話・監修/山中龍宏先生

協力/消費者庁、日本小児科学会 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

すでにネオジム磁石などのマグネットセットを持っているという方もいるでしょう。また「上の子用に購入したから、上の子だけが使うように注意すれば大丈夫」と考えるママ・パパもいるかもしれません。しかし7歳でもネオジム磁石を誤飲している子がいます。その子は、ママ・パパに怒られると思い、誤飲したことを言えなかったそうです。
山中先生は「子どもが万一、誤飲すると危険ですし、ママ・パパが管理するのは難しい玩具なので、この際処分したほうが安心」と言います。

●記事の内容は2023年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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