消費者庁も注意喚起!子どもの耳掃除中のけがに要注意。綿棒や耳かきが奥に入って鼓膜損傷の事故も【専門家監修】

東京消防庁調べでは、2018年から2022年の5年間で、耳掃除中にけがをして救急搬送されたのは230人にのぼり、中でも0~4歳が突出して多いとのことです。
意外に多い、子どもの耳掃除中のけがについて、小児の事故に詳しい小児科医 山中龍宏先生に聞きました。
耳掃除中にけがをして救急搬送されたのは0~4歳がトップ
東京消防庁調べでは、2018年から2022年の5年間で、耳掃除中にけがをして救急搬送されたのは230人。そのうち0~4歳は73人(約32%)と最も多く、次いで5~9歳が33人(約14%)でした。
「うちの小児科にも年に1~2人は、『耳掃除中に、耳かきを奥に入れ過ぎてしまったのですが、大丈夫でしょうか?』と、子どもを連れて診察に来るママ(パパ)がいます。子どもの年齢は1~3歳ぐらいです。
普段の診察や乳幼児健診のときに耳の中を見ると、少し血のかたまりがついている子もいます。ママ(パパ)に聞くと『この間、耳かきを奥に入れ過ぎてしまったんです』といわれることもあります。
東京消防庁が発表したデータは、救急搬送された人数ですが、救急車を呼ぶほどではなくても、耳掃除中にけがをしたことがある子は、意外と多いのではないでしょうか」(山中先生)
鼓膜に穴が開き、聴力が低下した事故も
消費者庁が発表したリリース「vol.620 耳掃除中のけがに注意!」では、次のような事故事例が紹介されています。
●「泣き声で気づくと、耳に綿棒が刺さっていた。抜いた綿棒に血がついていたため受診したところ、外耳道に傷があった。綿棒を片づけ忘れていた」(1歳)
●「竹製の耳かきを使って保護者が子どもの耳かきをしていて、ほかの子どもが接触した拍子に奥まで入ってしまった。出血、嘔吐、ふらつきなどがあり受診したところ、鼓膜に穴が開き、内耳や耳小骨も損傷しており入院となった。聴力が低下した」(3歳)
●「保護者が子どもの耳掃除をしていたところ、急に動かれ綿棒が奥に入り、出血したため受診した。鼓膜に穴が開いており、通院が必要となった」(6歳)
「紹介した事例では、綿棒でも事故が起きています。綿棒なら大丈夫とは考えないでください。
また親が目を離したすきに、子どもが1人で耳かきや綿棒を耳に入れてけがをした事例もあるので、綿棒や耳かきは必ず子どもの手の届かない場所にしまってください」(山中先生)
耳あかは自然に排出されるので、多少の耳あか程度ならば取る必要はありません
耳介の汚れや耳介の後ろの汚れは洗ったり、ふき取ったりする必要があります。しかし多少の耳あかは、耳かきなどを使って取る必要はありません。
「人の耳には、耳あかを自然に排出する機能が備わっているので、週1回など決めてルーティンで耳掃除をする必要はありません。家庭で耳掃除をするときは、綿棒を使って耳の入り口付近だけをきれいにする程度で十分です。
前述のように、耳掃除中の事故もあるので耳あかが気になる場合は、耳鼻咽喉科で取ってもらうといいでしょう。
またベタベタしてやわらかい耳あかは自然には取れにくいので、耳の中を見て耳あかがたまっていたら、耳鼻咽喉科を受診しましょう」(山中先生)
耳掃除中の事故は、子どもが急に動いたり、きょうだいの接触で起こっている
子どもの耳掃除中のけがは、突然、子どもが動いたり、耳掃除中にきょうだいがぶつかってきたりして起こっていることが多いようです。
「耳介や耳の入り口の汚れを綿棒などでふき取るようなときでも、きょうだいがいる家庭では、絶対、近づかないように言い聞かせましょう。
また嫌がる子に、無理に耳掃除をするのは危険です。突然、動かれたりすることもあります。
『子どもが寝ているうちに、耳掃除をすれば大丈夫なのでは?』と思うママ・パパもいるかもしれませんが、突然、寝返りをしたり、耳がくすぐったくて、急に手で耳を払いのけることもあるので、寝ているときならば安心とは一概には言えません。
もし家庭で耳掃除をするときは、子どもが動かないようにパパがしっかり抱っこして、ママが耳掃除をしてあげてもいいでしょう。ただし嫌がって動くときは、無理せずに耳鼻咽喉科で取ってもらいましょう」(山中先生)
耳からの出血が止まらない、嘔吐する、痛がって泣きやまないときは至急受診を
もし耳掃除中に、耳かきを奥のほうまで入れてしまった場合は、どうしたらいいのでしょうか。
「耳の中が傷ついていないか、念のため耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
診察時間外で、次のような様子が見られるときは救急車を呼ぶか、休日・夜間診療をしている耳鼻咽喉科を至急、受診してください」(山中先生)
【診察時間外でも、受診が必要なサイン】
1.耳からの出血が止まらない
2.嘔吐する
3.顔色が悪い・元気がない・食欲がない
4.痛がって泣きやまない
5.ふらつく
「耳から出血したときは、清潔なティッシュを耳に詰めて15分ほど様子を見ましょう。15分たっても血が止まらないときは、急いで耳鼻咽喉科を受診してください。
また小児のふらつきは、1人でしっかり歩けるのに転びやすい、左右に蛇行して歩くなど、歩き方を見て判断してください」(山中先生)
協力/消費者庁 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
山中先生は「大人は耳あかが取れるとすっきりして気持ちいいと思うでしょうが、子どもは気持ちいいとは思いません。動かないように体を押さえつけられたり、耳を触られたりして、痛かったり、怖かったりする気持ちのほうが強い」と言います。この機会に、耳掃除のしかたを見直してみましょう。
●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。