【薬剤師が解説】防災バッグに入れておくべき薬はコレ! ママ・パパ必読の子どもの防災ガイド
9月1日は防災の日。「子どもが生まれてから防災意識が高まったけれど、何から始めたらいいの?」そんなママやパパの声をよく耳にします。とくに、子どもを連れての避難は、大人だけの避難とは異なる準備や知識が必要です。
今回は、薬剤師の視点から、子どもの防災について解説します。
防災計画を立てる
防災計画は、家族全員で共有することが重要です。とくに、子どもがいる家庭では、素早く行動するのが難しかったり、荷物が多くなったりするため、避難場所・避難所や避難経路、住んでいる地域で起こりうる災害を事前に把握しておくことが求められます。
以下に、防災計画を立てるうえで大切なことを2つお伝えします。
避難場所・避難所や避難経路の確認
いざ災害が起きたときにあわてずに避難するためにも、お住まいの自治体のホームページや国土交通省「ハザードマップポータルサイト」、防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」などで居住地域で起こる災害の種類を事前に把握し、避難場所・避難所や避難経路を事前に確認しておきましょう。
避難場所・避難所までの避難経路は家族で実際に歩いて確認し、経路上に古いブロック塀やガラス張りの建物、落石しそうな場所など、危険がないか確かめておくことも大切です。その経路が被害によって塞がれることも想定して、避難場所・避難所までの経路はいくつか把握しておきましょう。
病歴や体質の事前共有
避難先で体調が悪くなったとき、病歴や体質の情報が重要になります。
家族のアレルギー情報や服薬歴、子どもの体重、重要な連絡先などをスマホのメモや電子お薬手帳などに記録したり、必要な情報を書いたメモを財布やカード入れにしまったりしておくなど、普段持ち歩くものに情報を入れておくと安心です。
防災バッグに入れるもの
防災バッグに入れるべき基本的な持ち物と、とくに子どもが必要とするアイテムのチェックリストを以下に示します。(※1)
<基本的な持ち物>
飲料水(最低3日分、1日3L/1人)
非常食(最低3日分)
医薬品・衛生用品(救急キット、必要な処方薬、コンタクトレンズや眼鏡、女性は生理用品、口腔ケア用品、紙石鹸、マスク、ティッシュ類など)
貴重品(マイナンバーカード、現金、通帳など)
衣類・タオル類・防寒具
雨具
ラジオ・懐中電灯・予備電池
携帯電話・充電器・モバイルバッテリー
ホイッスル
マッチ・ライター
地図・メモ帳・ペン
<子どもの持ち物>
離乳食・おやつ・携帯カトラリー
授乳用品
ミルク(乳首付き液体ミルクであれば、授乳用品・お湯が不要)
子ども用の医薬品
抱っこひも
おむつ・おしりふき
衣類・靴
お気に入りのおもちゃやぬいぐるみ、おしゃぶりなど(安心感を得るため)
身分証明(母子手帳や健康保険証など)
これらのアイテムのほかに、家族の状況や地域の特性を考慮して荷物をまとめておきましょう。また、子ども用の離乳食やおやつは月齢によって食べられるものが異なったり、季節によって必要な衣類に変化があったりするため、荷物の中身は定期的に確認するようにしましょう。非常食の賞味期限や医薬品の使用期限にも注意し、必要に応じて交換することが重要です。
また、子ども用の離乳食は防災バッグに詰める前に一度試食をさせて、問題なく食べられるか確認しておきましょう。災害時は必要物資が手に入らない場合もあるため、味や歯ざわりが苦手で食べてくれないとなると、代替品を探すのが困難です。
災害時に最低限持っておくと安心な薬
薬剤師の視点から、防災バッグに入れておくと安心な医薬品についてご説明します。
<大人と子どものための薬>
治療薬にもよりますが、持病がある人は災害用に少し多めに処方してもらい、その治療薬を持っておくことが重要です。
また、災害時のストレスは体調変化を引き起こすことがあります。ストレス時に胃痛や頭痛、腹痛など、自分がどんな症状を起こすのかを日頃から把握しておき、各症状に合う薬を入れておきましょう。
子どもは環境の変化や疲労から熱を出すことがあるので、解熱鎮痛剤や風邪薬を入れておくと安心です。小児喘息やアトピー性皮膚炎のような症状に対する処方薬も、普段より多めに処方してもらい、防災バッグに入れておきましょう。
<何日分必要か>
最低でも3日分、できれば1週間分の薬を入れておくと安心です。
<薬の代用について>
薬の代用については、一般的には推奨されません。
薬は特定の症状や疾患を対象に作られ、その効果と副作用は特定の用途に基づいて評価されています。したがって、頭痛薬を腹痛に使うといった目的外の使用は、予期しない副作用を引き起こす可能性があるため、手元に必要な薬がなかったとしても代用は推奨できません。また、大人の解熱鎮痛剤を子どもに使うことは決してしないでください。
薬のことで判断に困ったときは、医師や薬剤師に相談してください。電話がつながらない状況のときには、避難所に設置された救護所を訪ねてみるといいでしょう。
<薬の使用期限について>
使用期限が切れた薬は品質の保証ができかねるため通常使用はできませんが、やむを得ず使用しなければいけない状況である場合は、服薬する前に医師や薬剤師に相談したり、救護所を訪ねて確認したりしてください。
備蓄しておくもの
<基本的な備蓄>
以下のものをできれば1週間分用意しましょう。(※2)
食料品:
主食(炭水化物)と主菜(たんぱく質)の組み合わせで確保します。保存性の高い食料品(缶詰、レトルト食品、乾燥食品など)を選ぶといいでしょう。
水:
飲料水と調理用に1人あたり1日3L程度が必要です。
熱源:
ライフラインが停止する可能性を考慮し、カセットコンロなどの熱源とガスボンベを確保します。
<子ども用の備蓄>
以下のものを最低2週間分用意しましょう。(※3)
ミルク:
お湯が不要でそのまま飲むことができる、乳首付き液体ミルクがおすすめです。
おむつ:
1日に何枚程度おむつを使用しているかを確認し、必要な枚数を確保します。
離乳食・おやつ:
固形食に移行している場合は、アレルギーに注意して保存性の高いものを確保します。子どもが日ごろから好んで食べたり飲んだりしている商品を選ぶと、災害時にリラックスさせるのに役立ちます。
<備蓄しておくと安心な薬>
処方薬:
睡眠薬や鎮静薬など投薬日数に制限がある医薬品もありますが、持病がある人は備蓄用に多めの処方を医師に相談してみましょう。
市販薬:
頭痛薬、胃腸薬、解熱鎮痛剤、風邪薬などの一般的な症状を和らげる薬を一通り常備しておくと安心です。また、絆創膏やガーゼ、包帯、テープ、消毒など、怪我の手当ができる医薬品も準備しておきましょう。
子ども用の市販薬:
子どもが発熱や痛みを感じたときに使用するアセトアミノフェンの解熱鎮痛剤は必ず用意しておきましょう。そのほかにも、総合風邪薬など風邪症状に対応できる薬も持っておくと安心です。
番外編~災害時の子どもの薬の飲ませ方~
災害時には、子どもに薬を飲ませる際に普段利用しているジュースや服薬ゼリーなどが手に入らない場合があります。そのようなときには、以下の方法を試してみてください。
●水やぬるま湯で飲ませる
基本的に薬は清潔な水やぬるま湯に溶かして飲ませるのが、薬の成分が正しくからだに吸収されるため一番安全です。小児薬はイチゴやヨーグルトなどの甘い味付けがされている場合が多いため、水やぬるま湯でも問題なく飲めることがあります。
●薬を練る
薬が苦手な子どもには、薬を少量の水で練り、団子状や泥状にして上あごや頬の内側に塗りつける方法を試してみましょう。その後、水やぬるま湯を飲ませてください。
●食べ物に混ぜる
食べ物に薬を混ぜて飲ませることもひとつの方法です。ただし、薬が効かなくなる可能性があるので、医師や薬剤師に事前相談をしてください。
飲料水と子どもが好きな食べ物を防災バッグに入れたり、備蓄したりしておくといいでしょう。また、子どもが薬を飲むのを嫌がる場合は、落ち着いて優しく説明し、理解してもらうことも大切です。
災害時の事前準備で、安全な未来への一歩を踏み出そう!
災害は予測不可能ですが、適切な準備と知識により、その影響を最小限に抑えることができます。災害時には常に冷静さを保ち、自分自身と家族の健康と安全を最優先に考えて行動しましょう。
<参考文献>
※1 内閣官房内閣広報室「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」
※2 農林水産省「緊急時に備えた 家庭用食料品備蓄ガイド」
※3 内閣府大臣官房政府広報室「いつもの食品で、もしもの備えに!食品備蓄のコツとは?」
PROFILE
あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師 碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010038