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保育園での調査で、コロナ禍が子どもの発達の遅れに関係していることがわかった。今したいこと、できることとは?【研究発表】

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子供たちは保育園で外で遊ぶ
●写真はイメージです
maroke/gettyimages

京都大学、筑波大学、慶応義塾大学、東京財団が共同で行った研究により、コロナ禍の5歳児は、コロナ前の5歳児と比べて約4カ月の発達の遅れがあることが確認され、話題になりました。この研究を行った京都大学の佐藤豪竜先生は、「コロナ禍の生活、社会が子どもの発達と関連しているという結果が出たことは重要で、この発達の遅れは無視できないが、これから十分に取り返せる」と言います。研究結果を踏まえ、子どもへのかかわり方で必要なことなどについて聞きました。

コロナ禍で家族以外の人に会う機会が減ったことなどが、5歳児の発達に影響か

新型コロナ流行前に5歳になった子どもたちと比べ、流行中に5歳になった子どもたちは4カ月程度の発達の遅れがあることがわかりました。

――佐藤先生たちが行った調査研究の概要を教えてください。

佐藤先生(以下敬称略) 今回発表したのは、首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模保育事業所を含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887人に対し、2017年から2021年の間、年に1回発達の様子を追跡調査した研究の成果です。
実は、私たちが行ったこの調査の本来の目的は、保育の質と子どもの発達について調べることでした。しかし、調査期間の間に新型コロナウイルス感染症が流行し、外出自粛や保育園休園といった事態が起こったため、コロナ禍が3歳児と5歳児にどのような影響を及ぼしたのか、研究することになったのです。図らずもコロナ禍に3歳・5歳になった子どもたちと、コロナ前に3歳・5歳になった子どもたちを比較するデータがそろったためでした。

――子どもたちの発達の様子はどのようにして調べたのでしょうか。

佐藤 「KIDS乳幼児発達スケール」を使いました。これは130~140の項目のうち、乳幼児一人一人ができる項目の数によって発達年齢を算出する方法で、総合的な発達に加えて、①運動、②手指の操作、③言葉の理解、④言葉の表出、⑤抽象的な言葉の理解、⑥友だちとの協調行動、⑦大人との関係、⑧しつけの8つの発達領域について、担任の保育士さんに評価してもらいました。

そして分析の結果、コロナ禍の5歳児はコロナ前の5歳児と比べて、平均して4カ月程度の発達の遅れがあることがわかったのです。

――8つの領域の中でとくに遅れが目立ったものはありましたか。

佐藤 「やってもいいか許可を求める」など大人との関係が6カ月程度、「同年代の子どもと2人で会話ができる」など言葉の表出が5カ月程度遅れていて、社会性の遅れが大きくなっていました。

――コロナ禍の何が、5歳児の発達に影響を与えたのでしょうか。

佐藤 5歳ごろは、いろいろな年代の子どもや親以外の大人など、多くの人と触れ合うことで、社会性を身につけていきます。その時期に保育園の休園や外出自粛で家族以外の人と接する機会が極端に少なくなったことが、影響を与えている可能性があります。

――しつけは家庭内で教えることも多いですし、手指の操作は家庭でのひとり遊びでも発達が促されそうな気がしますが、発達に影響が出たのはどうしてでしょうか。

佐藤 しつけはママ・パパなどの家族が中心になって見本を見せたり、教えたりするものではありますが、生活習慣の習得や、「この場面ではどうふるまえばいいのか」といった社会性は、同年代の子どもの様子を見ることでより理解が深まり、完成すると考えられています。
また、手指を使う動作も、友だちと楽しく遊ぶ中で覚えていくことが多いでしょう。そうした機会が少なかったことの影響が全体的に出ているのだと思われます。

――3歳児の場合は、コロナ前より発達が早い領域があったとか。

佐藤 運動、手指の操作、抽象的な言葉の理解、友だちとの協調行動、大人との関係の5つの領域について、コロナ前より発達が進んでいる傾向にありました。
3歳児は身近な大人とのやりとりを通してさまざまなことを学ぶ時期です。在宅勤務などの影響で、ママ・パパと子どもが密に過ごす時間が増えたことが、いい影響を与えたのかもしれません。

5歳児の発達は、親のメンタルヘルスの不調との関連があるという結果も

3歳児の場合、コロナ禍は発達と明確な関連は見られず、中には発達が進んだ領域もありました。

――保育の質や保護者のメンタルヘルスと子どもの発達についても調べたそうですね。

佐藤 保育の質は、調査対象のすべての保育施設に2~3人ずつ調査員を派遣し、「保育環境評価スケール」(※)に基づいて評価しました。保護者のメンタルヘルスについては、保護者本人に「WHO-5精神的健康状態表」の質問に答えてもらって判断しました。
その結果、保育の質が高いと評価された保育施設に通っていた3歳児は、コロナ禍でも発達が良好な傾向にあり、保護者のメンタルヘルスに不調がある5歳児は、とくに発達の遅れが顕著に表れました。

――3歳と5歳で異なる結果が出たのはなぜだと思われますか。

佐藤 子どもの精神的な発達の度合いが関係している可能性があります。
5歳は精神がかなり発達しているので、親の感情の揺れを敏感に察し、影響を受けてしまう。一方、保育者との密なかかわりが必要な3歳児は、とくに保育の質の影響を受けやすいのかもしれません。

※アメリカで開発された保育の質を測る尺度。乳児版と幼児版があり、保育室の環境構成、食事や保健衛生や安全、子どもと保育者のやりとりなどで、保育の質を評価する。

これからのかかわり方でコロナ禍のマイナスは取り戻せる

――5歳前後の子どもがいるママ・パパにとって、今回の研究結果はショックだったと思います。

佐藤 私も3歳と5歳の子どもがいますので、その気持ちはよくわかります。今回の調査結果は、一つの自治体でのデータから得たものなので、日本のすべての子どもに当てはまることなのかは、さらに研究を続けて明らかにする必要があります。でも、コロナ禍が子どもの発達に与えた影響は、見過ごしてはいけないもの。このような傾向があることを理解した上で、子どもとのかかわり方を考えなければいけないと思っています。

といっても特別なことをする必要はありません。子どもとのコミュニケーションや触れ合いを増やす、子どもの好奇心を刺激することをたくさんするなど、今までもしてきたことを少しきめこまかく行うだけで十分だと考えています。

また、ママ・パパのメンタルヘルスの影響を受けやすい年代ですから、ママ・パパ自身がそれぞれ、メンタルヘルスが低くなっていないか、メンタルヘルスを高めるために必要なことは何か、見直すことも大切だと思います。
こうしたことを意識して子どもとかかわれば、コロナ禍で受けた影響は十分に取り返せるでしょう。

――保育園・幼稚園の環境についてはいいかがでしょうか。

佐藤 できるだけコロナ前に戻していくことが重要です。コロナ禍でおゆうぎ会を中止した2園と、実施した1園の子どもの発達を比較したところ、中止した園の子どもは、感情のコントロール、他者との協働、目標の達成といった「社会情動的スキル」の獲得に遅れが見られ、実施した園の子どもは順調だったという結果が、日本の別の研究で出ています。

これは3つの幼稚園での比較という限られた調査ではありますが、保育園・幼稚園でのイベントが、子どもの発達にいい影響を与えたことは、非常に興味深いです。こうした効果は、5歳児だけでなく、3歳児やもっと年齢の低い子どもにもあると思われます。

その一方、現在はまだ感染予防策を講じながらの保育となりますから、現場の保育士さんたちはコロナ前と比べて業務が増えていることも考えられ、日々大変な思いをしているという現実もあります。保育の質を高め、子どもが充実した集団生活を送れるようにするには、社会全体で子どもたちを守っていく必要があるでしょう。

お話・監修・図版提供/佐藤豪竜先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

コロナ禍での自粛生活は、子どもの発達に少なからず影響を与えてしまったようです。でも、コミュニケーションを密にすることと、子どもが「楽しい」と感じることをたくさん経験させてあげることで、発達は促せるとのこと。この機会に、子どもの育つ力を応援するかかわり方を考えてみるといいかもしれません。

佐藤豪竜先生(さとうこうりゅう)

PROFILE
京都大学大学院 医学研究科 社会疫学分野 助教。東京大学経済学部を卒業後、厚生労働省に入省し、社会保障政策の企画立案などに携わる。ハーバード大学で公衆衛生学修士(社会行動科学)を取得。2021年に同省を退官し、現職。3歳と5歳の子どもを子育て中のパパ。

●記事の内容は2023年9月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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