「30カ所もの保育園見学の保活後、小規模保育園へ」2足のわらじの漫画家に聞く仕事と家事と子育てのこと【真船佳奈インタビュー】
SNSで子育てや保活のエピソードの漫画を発信して、大人気の真船佳奈さん。漫画家の仕事以外に平日はテレビ東京の社員として働き、1歳6カ月の男の子のママでもあります。最新刊は『令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!』。8月中旬に発売になり、現在すでに3刷に。真船さんに、育休から復帰した今の働き方や、保活のことなどについて話を聞きました。
家事はとことん手を抜いて、子どもとの時間を優先
――以前はテレビ東京で番組制作に携わる仕事をしていたそうですが、育休を経て復帰した現在はどのような仕事をしていますか?
真船さん(以下敬称略) 産休に入る前はBSテレビ東京の編成部で働いていました。約1年の育休からの復帰にあたって、今働いているプロモーション部を希望しました。プロモーション部はママさんが多く、子どもがいても働きやすいと聞いていたし、私が漫画を描いていることも応援してくれています。今は時短勤務をしていますが、いずれはフルタイム勤務に戻りたいと思っています。また、週末の土曜日には漫画を描く仕事をしています。
――パートナーとは家事や育児の分担はどんなふうにしていますか?
真船 夫はもともと器用で料理も上手なんですが、今は仕事が激務すぎて家のことをする余裕はほぼゼロ、私も春に仕事復帰、さらに漫画の新刊発売があったりして、その上子どもも1歳半を過ぎて目が離せない時期であり、わが家は今現在が、まさに「緊急事態宣言中」です。
だから家事は必要最低限なことだけ。ごはんは大人は自分の食べる分を各自用意し、息子には、まとめて作って冷凍ストックにしたものを食べさせています。洗濯物は洗濯乾燥機におまかせで、洗ったかわからない服はにおいをかいでくさくなければOK。ちゃんとした掃除は週に1度程度。おふろも浴槽の掃除をしたくないからシャワーで済ませています。
というのも、私はもともと全然家事をやらないタイプだったのに、育休中にちゃんとやらなきゃと頑張ってみたら子どもに対して余裕がなくなってしまったんです。いつもならかわいいと思える息子のいたずらも、家事の邪魔をされたとイライラしてしまっている自分に気づきました。仕事を再開した今は子どもと一緒にいられる時間が限られているから、家事のせいで息子にイライラするくらいなら家事はやめちゃっていいな、と。だから家事はとことん手を抜いて、その分子どもと寝るまでは一緒に遊びながら過ごしています。
たくさんの園を見学したから見えたこと
――仕事復帰にあたっての保活はどうでしたか? 真船さんのブログによると30園近くの保育園を見学をして、検討したとか・・・。
真船 妊娠中には夫婦ともフルタイムだしどこかしらに入れるだろうと思ってたんです。でも、区の保活相談に行ってみたら、その区はファミリー層がすごく多くて激戦な上に、点数以外にその区での居住年数が優先されると言われました。それでも、息子が生後半年くらいからいろいろとリサーチして見学しに行ったんですが、息子が生後9カ月になったころに、ちょうど住んでいた部屋の家主の事情で引っ越さなければいけなくなってしまったんです。
その区に住み続けるか、別の区に引っ越すか・・・。今のままの区では保育園に入れるかどうかがわからない、さらに入れたとしても延長保育がない園に決まってしまう可能性もあるとなると、やっぱり都内に住んでいる母に助けてもらう必要があるとわかって。母の家の近くに引っ越して保活をやり直すことにしました。
――たくさんの保育園を見学してどんなことを感じましたか?
真船 見学の前に各保育園のホームページでリサーチしても、その情報だけでは見えないことが多くて、やっぱり実際に見学に行かないとわからないものだと実感しました。保育園のホームページって園によってかなり差があるので「見づらいなあ」と思ったこともありましたが、実際の園の様子を見て、保育士さんがめちゃくちゃ大変な中で頑張ってくださっていることがよくわかったので、もうホームページを立派にしてとはまったく思いませんが・・・。そもそも保活のときに保護者が頑張って何カ月もリサーチしなくても、希望する保育園にすんなり入園できる状況になったらいいのに、と思いますね。
私が当時住んでいたのは保活激戦区でしたが、都内でも区によっては余裕があるところもあるらしいので、この地域格差はどうにかならないかな、ということもすごく感じました。さらに、子育て支援も自治体によって差が大きいとも思いました。母子健康手帳のデザインのかわいさから始まり、妊娠中にタクシー利用券をもらえるところ、お祝い金として商品券がもらえるところ、ベビーシッターの利用補助が受けられるところ・・・。そういった情報を調べてから家庭を持つ人は少ないと思うので、いざ子育てが始まってみてわかることがたくさんあると思いました。
――現在はどんな保育園に通っていますか?息子さんの様子はどうですか?
真船 母の自宅近くに引っ越しをして、息子は1歳2カ月になった23年4月から小規模保育園に通い始めました。保活を始めたばかりのころは、英語教育やリトミックといった教育内容を重視していましたが、いろんな園を見学するうちに考えが変わりました。私たちの場合は、子どもに対して親と同じくらいあたたかく見守ってくれるところがいいなと思って、今の園にお願いしました。
実際に通うようになってからは、子どもたちの数に対して先生の人数が多いと感じています。本当に手厚くて、ずっとここに通わせたいなと思っています。でも小規模保育園なので預けられるのは3歳まで。また別のところを探さないといけないのがすごく残念。息子も保育園が大好きで、毎朝喜んで靴を履いて「早く行こ!」という感じで楽しみながら通っています。
頼れる先をいくつか探しておくことが大事
――今、息子さんは1歳6カ月を過ぎたころでしょうか。これまで大変だったことや、どんなふうに乗り越えたかを教えてください。
真船 息子が9カ月のころ、ずりばいやつかまり立ちをするようになり、後追いも始まって、夜泣きも激しかった時期がありました。ちょうどそんな時期に保活や引っ越しの忙しさが重なって、かなり自分のメンタル的にも落ち込んでしまったんです。そのときは、まずは夫に「今本当につらい状態だ」と自分の気持ちを伝えて、自分1人だけでつらい思いを背負いこまないようにしました。自治体の相談窓口や一時保育先を調べたり、心療内科の医師に話を聞いてもらったりも。それでなんとか自分の気持ちも落ち着いて、つらい時期を乗り越えられたと思います。
その経験から、引っ越し後にもいざというときに子どもを預けたり頼れるところを、母や保育園以外でも何カ所か探しておこうと思いました。子育ては夫婦だけじゃなくて、だれかに頼っていいと思うし、親である自分の気持ちを受けてもらえる場所を持つことはとても大事だと思います。
――仕事に復帰して、気持ちの変化はありましたか?
真船 息子を産んで半年くらいは、まだへその緒がついてるんじゃないか?というくらい、何をするにも息子と離れられない状態が続いたし、この子にとっては私だけ、という責任感から自分を追い詰めてしまうこともあったと思います。
だけど、息子が保育園に入って私も仕事を再開してからは、やっとへその緒が切れた気がします。子どもと2人きりで過ごしていると、親の自分が全部頑張らなきゃと思ってしまっていました。でも今は仕事でいろんな人とかかわるようになって、周囲の人にSOSを出せるようになって、やっと「ここは手を抜いてもいいんだな」「ここはもっと楽に考えていいんだな」と考えられるようになりました。私も息子もそれぞれの人生があって、それぞれの世界を築きながら、家族として一緒に生きていきたいなと思っています。
お話・イラスト・写真提供/真船佳奈さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
「出産前はそんなに子どもが好きなほうじゃなかったけど、産んでみたら子どもがかわいすぎた」と真船さん。「でも育児って本当にお金がかかる。宝くじで15億円くらい当たったら、5〜6人は子どもがほしいです」と笑いながら話してくれました。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
真船佳奈さん(まふねかな)
PROFILE
テレビ東京局員兼漫画家。2017年、AD時代の経験談をまとめた『オンエアできない!』で漫画家デビュー。平日はテレビ局員、休日は漫画家として活動している。2022年2月に出産。1児のママ。
『令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!』
はじめての妊娠から出産、育児のドタバタ劇を描く育児エッセイ漫画。新米ママの情緒の乱高下の様子を独特のギャグセンスとスピード感で描く、爆笑&号泣必至の傑作。真船佳奈著/1210円(オーバーラップ)
「たまひよONLINE」にて、『令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!』を数話限定で公開します。ぜひ、読んでみてください♪