産後のセックスで痛みを感じたことがある女性は、なんと約6割! ペインクリニックの医師に聞く、産後の性交痛の対処法とは?
「たまひよ」アプリユーザーに、産後のセックスでの痛みについてアンケートするとともに、性交痛外来でのべ1万人以上の悩みを解決する富永ペインクリニック院長の富永喜代さんのアドバイスをお届けします。
誰にも相談できない、産後のセックスの痛みについて…
まず、ユーザーのアンケート結果とともに、体験談を紹介します。
Q:産後のセックスで痛みなど苦痛を感じること・感じたことはありますか?
ある 56.8%
ない 36.4%
その他 6.8%
半数以上の約60%が痛みなどの苦痛を感じたことがあると答えました。
◾️4回目くらいまで痛かった!
「会陰切開したこところが、さけないか心配です。4回目くらいまではめちゃくちゃ痛かったです」(みによん)
◾️チクチク痛い
「産後半年経っていても、チクチク痛いです」(みゆき)
◾️濡れないと痛い?
「痛そうでまだ勇気が出ません。産後は濡れにくいと聞きました。濡れやすくするにはどうしたらよいでしょうか」(かおり)
◾️産後は痛みが強くなる?
「産後初めてセックスをした時、とても痛みが強かったです。やはり久しぶりだと痛みがあるのでしょうか?それとも産後は痛みが強くなるのでしょうか?」(sana)
◾️2人目から
「2人目の出産後から痛みを感じるようになったのはなぜ?」(もも)
◾️不安で心地良さがない
「産後は痛かったらどうしよう…という気持ちがとくに強く、怖さや緊張感で心地よさを感じられません。自分だけの気持ちよさで言えば前戯だけでいいけれど、夫のことを考えるとそういうわけにもいかず悩ましい…」(たまも)
「フェムケアと相手に自分の気持ちを伝えることが大事」と専門家
クリニックに性交痛外来を設置し、YouTubeなどでも情報を発信している富永喜代さんに聞きました。
「性交痛といえば、更年期の女性が多いというイメージがあるのではないでしょうか。しかし、【ジェックス】ジャパン・セックスサーベイ2020の報告によると、20代〜60代女性の62.4%が性交時に痛みを感じていることが報告されています。これらの結果は当クリニックの性交痛に悩む女性とほぼ同じ割合で、普段から多くの女性が性交痛に悩んでいることがわかっています。
ただ、欧米の性に関する同様の報告では、女性が性交痛を感じている割合は8〜22%程度と、性交痛は世界共通の女性の悩みではありますが、その頻度には差があるようです。
理由の一つとして考えられているのが、欧米では普段からパートナーといわゆるアフターピロートークをしていることです。日本人は性に対して隠すものというネガティブなイメージを持っているので、どういったセックスが心地いいのか、どんな時に痛みを感じるかをパートナーに直に伝えるということは、はしたないことと思っている人が多いからではないでしょうか。
セックスで自分の性欲追求に邁進しているパートナーに、心地よさや苦痛を察してもらうことは難しいものです。ですから、自分の正直な気持ちをパートナーに伝え話し合うことは、とても大切です。
特に、会陰切開や帝王切開した後のセックスは、体験談にあるように実際に痛みを感じるだけでなく、傷口が裂けるのではないかという不安から痛みを感じやすくなっています。切開する部位は出産時に出血しにくい場所ですが、反対に血流が悪く傷が治りにくい部位でもあるので、不安になることが多いと思います。
出産後、セックスができる時期になっても不安なときは、パートナーに、『不安だからもう少し様子を見たいの。できそうなら言うね』『痛いかもしれないから、優しくしてね』などと、正直な気持ちを伝えるといいと思います。痛みや不安を抱えたまま性行為を行ったり、理由を告げることなくパートナーの誘いを断り続けたりするとお互いの性的満足度も低くなり、セックスレスの原因になるので注意が必要です。
性交痛を予防するケアとしては、フェムケアを習慣にしましょう。フェムケアとは、デリケートゾーンのセルフケアのことです。産後の腟は、傷痕が線維化し伸展性が失われ固くなっていますから、保湿+血流改善が必須です。
当院では、Dr.ESTRAを使ったデリケートゾーンのセルフケアマッサージなどフェムケアの指導に力を入れています。セルフマッサージには、女性ホルモンであるエストロゲンの有用成分エストラジオールをおすすめしています。
エストラジオール配合のクリームやオイルには、腟まわりを保湿し柔らかくしてくれるだけでなく、黒ずみの予防の効果も期待できます。
また、乳酸菌を配合したジェルを使用して保湿マッサージすれば、産後、エストラジオールが低下して増えてしまった悪玉菌による腟のニオイを抑えて潤いを与えるなど腟内環境を整えることもできます。お風呂上がりなど清潔な状態で腟のまわりに優しく塗るだけで、産後のフェムケアができます。セルフマッサージをしたいけれど不安な人は、婦人科や性交痛などの専門機関に相談してみてはいかがでしょう。
そのほか、産後の腟まわりのケアで注意したいのは、下着選びです。歩行や衣服の擦れや摩擦などで腟まわりを刺激しないためにも、おしゃれな薄手の化学繊維の下着より、刺激の少ない綿など少し厚めの天然素材を選ぶようにするといいですね。
フェムケアを習慣化すること、そしてパートナーとセックスについて話をすることは、性交痛の不安を和らげるための第一歩です」(富永喜代さん)
多くの女性が産後のセックスでの痛みに悩んでいることに驚きました。フェムケア&パートナーとの会話はとても大事なことだと実感しました。
(取材・文/酒井範子、たまひよONLINE編集部)
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2024年1月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数88人)
※記事の内容は2024年4月の情報で、現在と異なる場合があります。
富永喜代さん
PROFILE)
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。日本でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人以上の悩みをオンライン診断している。性の悩みに特化したYouTube『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』はチャンネル登録者数27万人、総再生回数は6200万回超。『女医が教える 性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。