意外と知らない塗り薬の使い分け。種類別の使い方や併用時の注意点は?【薬剤師】
塗り薬の種類が多く、どのように使い分けたらいいのかわからず困ったことはありませんか。塗る場所や症状など、目的に応じて適切に使い分けることが大切です。今回は、塗り薬の種類や種類別の使い方、複数の塗り薬を併用するときの注意点について薬剤師が解説します。
塗り薬の種類
塗り薬とは、文字通り皮膚に直接塗って、湿疹や痛み、化膿などの炎症を抑える薬です。塗り薬といっても、いろんな種類があります。ここでは、3つの種類の塗り薬について、剤形や特徴を解説します。
軟膏タイプ
軟膏タイプは皮膚への刺激が弱く、肌が弱い場合にも使用できる塗り薬です。(※1)皮膚の表面に油脂膜を作って保護するため、保湿性に優れています。
軟膏タイプは、ワセリンなどの油性基剤がベースとなっており、軟化作用と肉芽形成作用があります。軟化作用とは、皮膚を柔らかくして古い角質などを取り除く作用のことであり、肉芽とは、皮膚にできた傷を治すときに形成される組織のことです。(※2)
軟膏タイプは水で洗っても落ちにくいため、汗をかいても薬が落ちにくく患部にしっかり残って効果を発揮します。
クリームタイプ
クリームタイプは、油性基剤と水などの水分を配合して作られているため、さらさらしていて軟膏より使いやすい塗り薬です。(※1)また、クリームタイプは軟膏タイプよりも吸収されやすく、皮膚への刺激が強いのも特徴です。
クリームタイプは水分を含んでいるため、皮膚に塗ると表面から水分が蒸発して冷却する作用があり、炎症やかゆみを抑える効果を発揮します。
ローションタイプ
ローションタイプは、水やアルコールを基剤として作られています。軟膏やクリームよりさらさらしており、塗りやすい塗り薬です。(※1)
ローションタイプの塗り薬には即効性があり、かゆみ止めや痛み止めに適しています。軟膏よりも吸収されやすいのも特徴です。(※3)使いやすく即効性がある一方で、持続時間が短いというデメリットもあります。
塗り薬の種類別の使い方
ここからは、3つの種類の塗り薬をどのように使い分けたらいいのか、使い方について解説します。
傷がある・ジュクジュクしている患部には軟膏タイプ
傷があったり、ジュクジュクしていたりする患部には、軟膏タイプがおすすめです。皮膚への刺激が弱く傷口にもやさしいため、他の種類の塗り薬と比べて傷口にしみることが少ないです。
デメリットとしては、軟膏はべたつきが強いため、ベタベタした使用感を不快に感じてしまうかもしれません。
傷がない・乾燥している患部にはクリームタイプ
皮膚に傷がない場合や、患部が乾燥している場合には、クリームタイプがおすすめです。クリームタイプは皮膚から吸収されやすいため、水虫や筋肉痛などに適したタイプです。一方で、軟膏より刺激があるため、傷がある場所への使用には向いていません。
患部の状態によっては軟膏からクリームに変更できるケースもあります。軟膏のベタベタ感が苦手、夏場はさらさらした塗り薬を使いたいなど、クリームタイプを使いたい場合には、医師や薬剤師に相談してみてくださいね。
育毛部にはローションタイプ
頭皮など、体毛があり軟膏やクリームが塗りにくい場所には、ローションタイプが適しています。さらさらしているので、毛が生えている場所でもスムーズに塗布できます。
ただし、ローションタイプもクリームタイプと同様に軟膏より刺激が強いため、傷がある場所への使用には向いていません。
複数の塗り薬を併用する際の注意点
複数の塗り薬を併用する場合には、事前に使う順番を医師に確認することが重要です。一般的には、塗る面積の広い薬から先に塗ります。(※4)
もし、塗る範囲の狭い薬を先に使用して、そのあとに塗る範囲の広い薬を使用してしまうと、先に塗った方の薬が本来の目的以外の場所に広がってしまう可能性があります。本来の目的とは異なる場所に薬が広がってしまうと、副作用が出ることもあるので、塗る順番はとても重要です。
薬を塗った場所に毛が生えてきたり、皮膚がかぶれたりなどの症状があらわれた際には、使用を中止し医師や薬剤師に相談してください。
上記はあくまで一般的な方法であり、傷や病気、塗り薬の種類によって順番が異なる場合もあります。複数の塗り薬を使用する必要があるときは、塗る順番の説明がなかったとしても、より安全に利用するために、医師に質問して塗る順番を指示してもらうといいでしょう。
塗り薬の特徴を知って正しく使い分けよう
塗り薬といってもいろんな種類があり、使用部位や用途によって使い分けが必要です。複数の塗り薬を併用する場合には、必ず塗る順番を医師に確認しましょう。
塗り薬の種類や特徴を知って、正しく使いこなしてくださいね。
<参考文献>
※1 静岡県立こころの医療センター「軟膏?クリーム?それともローション?」
※2 一般社団法人日本創傷外科学会「はじめに」
※3 社会医療法人蘇西厚生会松波総合病院「軟膏・クリーム・ローションの違い」
※4 皮膚科Q&A「軟膏やクリームが複数処方されている場合の塗る順番は?」
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師を経て食養生の大切さに気付く。牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニューも開発。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」で薬剤師を務める。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010085