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五輪銀メダリスト・元なでしこの岩清水梓、1児の母。プロサッカー選手の「キャリア」と「妊娠」のはざまで抱いた葛藤とは?

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わが子とピッチに立つという夢をかなえた岩清水さん(写真提供/佐野美樹)

元なでしこジャパンの岩清水梓さんは、現在、WEリーグ初のママプロサッカー選手として活躍しています。妊娠を機に一時は引退を覚悟したそうですが、現在も子育てをしながらトップアスリートとして現役を続行しています。そんな岩清水さんに結婚、出産、子育てをへて、現役アスリートとして感じていることを聞きました。全2回インタビューの1回目です。

距離感を大事にしてくれる両親の子育てが理想

――岩清水さんは、お父さんのすすめで日テレ・東京ヴェルディベレーザの育成組織である、「メニーナ」のセレクションを受けたことで、サッカー人生が本格的に始まったと聞きました。

岩清水さん(以下敬称略) 私は小学生のときは男の子と一緒に夢中になってプレイしていたサッカーが大好きでしたが、中学生になったらソフトボール部に入部しようと決めていました。でも、ある日突然父が「明日、メニーナのセレクションだから」といってきたんです。そこから私のサッカー人生が始まりました。多感な時期ではありましたが、幼いころから親の意見はスーッとストレートに受け入れるタイプだったので反抗することもなく、すんなりセレクションを受けにいきました。

――反抗期と言われるようなころだったかと思いますが、反発するようなことはなかったのですか?

岩清水 両親はあまりガミガミ、くどくど厳しく言うタイプではなく、距離感を大事にしてくれるタイプだったと思っています。だから、反抗期といわれる時期も問題なかったです。むしろ部屋にこもることなく、いつもリビングで一緒に過ごし、コミュニケーションがはかれる関係でした。そして、ここぞというときにグッとくるアドバイスやメッセージをもらっていた感じです。

――現在4歳の息子さんのお母さんですが、両親のような子育てが理想ですか?

岩清水 子どもは男の子で今は私にべったりですが、離れていく時期も来ると思います。私と同じように・・・というわけにはいかないかもしれませんが、自分の中では、両親と自分のような関係性が理想だな、と思っています。

毎日息子にパワーは吸い取られるけれど、子育ては楽しい

岩清水さんは子育てが始まってから、サッカーに対するモチベーションが上がったといいます。

――オリンピック、ワールドカップと日の丸を背負っていた時期はチームでの活動もありハードだったと思います。そして現在も子育てとサッカーを両立されていますが、大変だと感じることはありませんか?

岩清水 当時は所属チームでの活動と日本代表というプレッシャーもありつつ、スケジュールも本当にハードでした。現在も子育てとサッカーとある意味、二足のわらじをはいている状態ではありますが、サッカーも子育てもどちらも大好きで、好きなことをさせてもらっていることにぜいたくさせてもらっているな、ありがたいことだなと感じています。

――今、子育てが好きという言葉が出ましたが、岩清水さんの中で子育てすることは念願だったのでしょうか?

岩清水 息子を出産したのは33歳ですが、30歳を過ぎたくらいから、自分も家族をもちたいなという気持ちが大きくなっていきました。子育ては大変なこともあるとは思うけれど、きっと楽しいだろうなという印象を持っていたんです。
実際、こうして息子を産んで育てていますが、やっぱり大変なこともあり、毎日パワーを吸い取られます(笑)。でも日々成長を感じ、一緒にいる時間はとても楽しいです。

――最近の感じた息子さんの成長はどんなことですか?

岩清水 「どこで覚えてきた?」というような言葉をたくさん話してくれるのでおもしろいです。今朝も「しーらんぺったんゴリラ」と幼稚園で流行っている(?)言葉を発していて、家族で大爆笑しました(笑)
サッカーも習っているんですが、今まではつま先でボールを蹴っていたんですが、蹴り方が変わって急に私と同じような蹴り方でしっかり蹴れるようになってびっくりしました。

――お母さんの姿を見て自然と身についていたのかもしれませんね。

岩清水 そうなんです。キーパーのこともまったく教えたことがないんですが、「キーパーはこうやってボールをつかんで、下からボールを投げるんだよね」とキーパーのまねをしています。日々、いろんなことを発見して、息子なりに解釈していっているんだなって感じています。

「引退」を考えるきっかけになった妊娠。しかし、選んだ道は・・・?

胎動も感じる妊娠中の岩清水さん。すでに表情が優しいママの顔です。(写真提供/佐野美樹)

――妊娠がわかったときはどんな気持ちでしたか?

岩清水 まずはとてもびっくりしました。そして次に自分のサッカー選手としてのキャリアを考えましたが、「引退」という文字が頭に浮かびました。引退する理由をどこかで探していたのかもしれません。「これで引退か・・・」という気持ちと「自分が親になるんだ」という気持ちの両方が頭を占めていました。

――サッカーから離れ、妊娠中期はどんなふうに過ごしていましたか?

岩清水 まわりの友だちから出産後はとにかく1人の時間がなくなるから今のうちに1人の時間を満喫したほうがいいといわれていたので散歩したり、なかば無理やりカフェに行ったりしていました(笑)。太らないようにといわれていましたが、パンケーキ食べたりして。実は当時は、カフェや外出先などで1人で寂しいな・・・という思いもありましたが、出産後はお世話が本当に大変だったので1人の時間を過ごしておいてよかったなと思います。

――妊娠中は選手のときの食事量とぜんぜん違うと思いますが、妊娠後期に工夫したことがあれば教えてください。

岩清水 これまで日々、運動量が取れていたので好きなものをおなかいっぱい食べる生活をしていました。だから運動ができない、とにかく太らないように節制するということが大変でした。お米を少なくして野菜を多く“かさまし”したり、なるべく食べないように我慢したり、ストイックな生活をして過ごすしかなかったですね。

家族の食事を一番に考えられるような母親になりたい

愛猫あいりちゃんと仲よしの聖悟くん。

――結婚と妊娠、そして引退を考えていることを両親に報告した際、お母さんが「産んでも続けたら?」と助言してくださったと聞きました。

岩清水 わが家は父が厳しいのでその分、母がいつも寄り添ってくれていました。おおらかでしゃべりやすいので、幼いころからコミュニケーションはとれていたと思います。妊娠したら引退するもの、と思っていたので、母の「続ければ」のひと言は目からうろこでした。「なるようになる」とも言われて、「あ、そうかな、そうかも」と感じ、すんなり「そうか」と思えました。
これが出産後も現役を続けようと思った瞬間です。母と常日ごろからコミュニケーションが取れていたことと、いつも距離感が上手で、今までもここぞというときに大切なことを伝えてくれていたことへの信頼が強かったこともあると思います。

――自身が母親になって、お母さんの子育てで手本にしたいなと思うことはありますか?

岩清水 栄養バランスがとれた食事をきちんと準備してくれていたことは感謝しています。朝も時間に遅れないように起こして、朝食をしっかりとるようにしてくれていました。お弁当も大学生まで作ってくれていたので、サッカー選手として体作りには影響していたと思います。お店で購入したものをほぼ食べたことがなく、ずっと母の手作りの栄養バランスがいいお弁当を食べていました。自分も母のようにできるかはわかりませんが、息子にもしっかりとした食事は用意してあげたいなと思っています。

――スポーツ選手にとってとくに食事は大事ですよね。

岩清水 昔はあまりにも母が完璧に食事を準備してくれるので、コンビニのお弁当にあこがれを感じる時期もありました。母は今でもわが家に来て冷蔵庫にあるものでちゃちゃと作ってくれるんですが、そんな姿を見るとやっぱりすごいなと思います。私は母になってまだ4年目なのでレベルの違いを感じますね(笑)

お話・写真提供/岩清水梓さん 写真提供/佐野美樹さん 取材・文/安田ナナ、たまひよONLINE編集部

2024年3月に出版された岩清水さんの自著の中にはおどろくようなエピソードや共感できる話がたくさん書かれています。

岩清水梓さん(いわしみずあずさ)

PROFILE
WEリーグ 日テレ・東京ヴェルディベレーザ DF。16歳でリーグ戦デビューを果たし、2006年には日本代表に選出される。2011年 FIFA女子サッカーワールドカップ優勝、2012年に開催されたロンドン五輪では銀メダルを獲得した。2018年、日テレ・ベレーザのなでしこリーグ4連覇に貢献し歴代最多となる13年連続13回目のベストイレブンに選出される。2020年3月、第1子を出産し、2024年現在も日テレ・東京ヴェルディベレーザの一員としてプレーを続けている。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年年6月の情報で、現在と異なる場合があります。

『ぼくのママはプロサッカー選手』

結婚・出産後も好きな仕事を続けて自分らしく生きていきたいと願う女性に、共感と勇気をもたらす一冊。岩清水梓著/1540円(小学館クリエイティブ)

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