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小児がんと向き合いながら、Foorin楽団で活躍した女の子。妖精のキャラクターを生み出し、絵本作家になりたいという夢をかなえた

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Foorin楽団のミュージックビデオ撮影中の一コマ。左から2人目がわかちゃん、その右がリリコさん、その後ろが日向さん。(写真提供/大西優子さん)

おおにしわかちゃんは神経芽腫という小児がんと向き合いながら、絵本作家になる夢をかなえました。わかちゃんのデビュー作、『ビーズのおともだち』は、ビーズの妖精たちが病室で過ごす女の子に“がんばりパワー!”をくれるお話です。また、わかちゃんは、Foorin楽団でも活動をしていました。
2024年6月22日~25日に横浜で開かれた第16回国際小児がん学会アジア大会(SIOP Asia 2024)では、わかちゃんの絵本の妖精キラちゃんが、イメージキャラクターに選ばれました。そしてオープニングセレモニーでは、小児がんと立ち向かう4人を含む子どもたちと、元Foorin・Foorin楽団のメンバー、池下リリコさん(15歳)と吉田日向さん(17歳)がダンスを披露しました。
リリコさん、日向さん、そして、わかちゃんの母親の大西優子さんに話を聞きました。
全2回のシリーズの1回目です。

わかちゃんがつないでくれた縁 『パプリカ』で笑顔を届けたい

「SIOP Asia 2024」のオープニングセレモニーのパフォーマンスでも、すてきな笑顔を見せてくれたリリコさん。

――リリコさんと日向さんは元Foorin、Foorin楽団のメンバーで、今も芸能界で活躍しています。SIOP Asia 2024のオープニングセレモニーに出演することになった経緯を教えてください。

優子さん(以下敬称略) さまざまなご縁がつながった結果です。まず、わかが作った絵本『ビーズのおともだち』に登場する妖精のキラちゃんが、SIOP Asia 2024のイメージキャラクターに決まりました。学会のホームページでわかとキラちゃんのことを紹介してくださるということで、学会の副事務局長を務めた、国立成育医療研究センターの加藤実穂先生と連絡を取り合うようになりました。

その中で、国立成育医療研究センターで治療を受けた小児がんと立ち向かう子どもたちが、オープニングセレモニーでダンスパフォーマンスを披露するとお聞きしました。わかも6歳から12歳まで、国立成育医療研究センターで治療を受けたので、「そのパフォーマンスにぜひ参加させてください!」とお願いして、わかの妹をメンバーに加えていただきました。

リリコさん(以下敬称略) 私はFoorin楽団でわかちゃんとパートナーを組んでいて、わかちゃんのお家に遊びに行ったこともあります。

そのあともずっとわかちゃんのご家族との交流は続いていて、今年の5月、私が出演するステージを優子さんが見にきてくれました。そのとき「SIOP Asia 2024で『パプリカ』を踊るのよ」って教えてくれたんです。わかちゃんがつないでくれた縁を感じて、私も『パプリカ』で笑顔を届けたいと思いました。

日向さん(以下敬称略) リリコから連絡をもらって、「一緒に踊りたい」といいました。小さい子たちも出演すると聞いたので、みんなが気持ちよく踊れるようにサポートしたいと思いました。

わかちゃんやFoorin楽団との出会いは、本当にかけがえのない経験

Foorin楽団を思い出させるとてもすてきなデザインを日向さんとお母さんで発案し、衣装にリメイクしてくれました。

――わかちゃんがリリコさん、日向さんと一緒に活動したFoorin楽団について教えてください。

リリコ 私と日向は、2020年とその先の未来に向かって頑張っているすべての人を応援する「<NHK>2020 応援ソングプロジェクト」のために結成された、Foorinのメンバーに、オーディションで選ばれました。2018年のことなので、私は9歳、日向は12歳でした。
応援ソングというのが、米津玄師さん作詞・作曲、プロデュースの『パプリカ』です。

日向 そのあとFoorinの5人と、病気や障害のある子どもたち10人が一緒になってFoorin楽団が結成されました。わかちゃんはFoorin楽団のメンバーの1人でした。

優子 わかはFoorinの『パプリカ』が大好きでした。『パプリカ』が大ヒットしていたこともあり、小学校3年生のとき、運動会で『パプリカ』を踊ることになりました。
治療が落ち着き、通学できていた時期だったので、毎日一生懸命練習していました。

ちょうどそのころ、国立成育医療研究センターを受診した際、Foorin楽団のメンバーを募集していると知り、わかが目をキラキラさせて「やりたい!」って言ったんです。すぐに応募し、メンバーになることが決まりました。

――Foorin楽団結成のために、わかちゃんに初めて会ったときの印象はいかがでしたか。

リリコ わかちゃんと初めて会ったのは、国立成育医療研究センターで患者さんの子どもたちが『パプリカ』を踊るイベントに参加したとき。
わかちゃんはだれよりもすてきな笑顔で、とてもうれしそうに踊っていました。その姿を今もはっきり覚えています。
またイベント終了後に、わかちゃんが描いたFoorinの絵を見せてくれたのですが、すごくカラフルで上手!!「Foorinのことをとっても好きでいてくれるんだなあ」とうれしくて、早く一緒に活動したい!って思いました。

日向 僕もそのとき初めてわかちゃんに会いました。わかちゃんやFoorin楽団との出会いは、本当にかけがえのない経験でした。

――リリコさんはわかちゃんとパートナーを組んでいました。とくに思い出に残っていることは?

リリコ わかちゃんのお家で、わかちゃんが受け取った「ビーズ・オブ・カレッジ(勇気のビーズ)」(※1)を見せてもらったんです。どれもすごくきれいなビーズで「わあ、きれい!」と見た瞬間は感じたんですが・・・「ビーズの数だけ、わかちゃんは治療を受けてきたんだ」とハッと気づき、その数の多さにとても驚きました。わかちゃんは小さいころから頑張って治療を受けてきたんだ、すごい人だ、と尊敬しました。

「みんなと一緒に踊りたい」。その強い思いから病室でも自主練習

Foorin楽団のメンバーと撮影の合間に撮った写真。左から2人目は、わかちゃんの妹。(写真提供/大西優子さん)

――Fooin楽団の活動中は、小児がんの治療をされていたのですか?

優子 そのころは国立成育医療研究センターに入院して、抗がん剤治療をしていました。でも、わかは『Foorin楽団に参加したい』と言いました。私と夫はその希望をかなえてあげたくて、NHKのスタッフさんや病院の先生方に相談しました。みなさん、わかの気持ちを最優先に考えてくださり、治療と並行しながら練習に参加し、本番撮影を行うことになりました。

――治療を続けながら練習に参加するのは大変だったのではないでしょうか。

優子 熱を出して練習をお休みしなければいけないこともありました。そんなときは、練習内容の動画を送ってくれました。楽団メンバーからのビデオメッセージも添えられていてうれしかったです。わかはその動画を何度も繰り返し見ていました。そして体調が落ち着くと、動画を見ながら病室でも自主練習。絶対にみんなと一緒に踊るんだ!!という決意を感じました。

無事本番撮影を終えることができ、Foorin楽団のミュージックビデオが完成。わかだけでなくメンバー全員の「楽しい!」「参加できてうれしい!」という気持ちが詰まった映像で、見ると自然と笑顔になりました。

――Foorin楽団のミュージックビデオが撮影されたのは2019年12月。日本で新型コロナの流行が始まる直前でした。

優子 ミュージックビデオの発表後、Foorin楽団が出演するステージがいろいろ企画されていて、わかはメンバーと活動することを励みに、治療を続けました。ところが新型コロナウイルスの流行という思ってもみない事態に・・・。Foorin楽団はパフォーマンスを披露する機会を持てないまま、2021年秋に解散が決まりました。

「世界中の人を笑顔にしたい!」わかちゃんの夢が咲かせた笑顔

Foorinの『パプリカ』が大好きだったわかちゃん。Foorin楽団のメンバーに決まる前にFoorinの5人、わかちゃんの妹、わかちゃんが一緒に『パプリカ』を踊る絵を描きました。(写真提供/大西優子さん)

――オープニングセレモニーのダンスパフォーマンスは、学会に参加していた医療従事者に大好評でした。

優子 わかは、治療を通していろいろな人に助けてもらいました。そして、「世界中の人を笑顔にしたい」という夢を持っていました。お世話になった先生方や世界中の医療従事者の方に笑顔を届ける場をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

リリコ 今回のステージでは、普段は宝箱にしまってある、わかちゃんから分けてもらったビーズを腕につけて踊りました。わかちゃんとの記憶がよみがえり、笑顔になりました。

日向 今回のパフォーマンスを通じて、みんなとあっという間に仲間になることができて、わかちゃんがつないでくれた縁を感じ、感動しました。改めて、パプリカの花言葉「君を忘れない」のように、ずっとわかちゃんは僕の心の中にいるし、これからも未来に向かって、たくさんの縁をつないでいけたらと思いました。

お話/池下リリコさん、吉田日向さん、大西優子さん 写真提供/大西優子さん 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

「オープニングセレモニーでわかちゃんがつないでくれた縁を感じた」と話すリリコさんと日向さん。わかちゃんと共にFoorin楽団のメンバーとして過ごした縁、絵本がつないだ縁によって、みんなと一緒に笑顔の花を咲かせてくれました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

※1/ アメリカの小児がん専門看護師が開発したプログラムで、日本では認定NPOシャイン・オン・キッズが実施している。

●記事の内容は2024年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

『ビーズのおともだち』

入院中の「わたし」が病室でひとりになると、治療のたびにもらうビーズが次々とかわいい妖精に変身。“がんばりパワー!”で「わたし」を笑顔にしてくれます。「SIOP Asia 2024」のイメージキャラクターに選ばれたキラちゃんは、お話を聞かせてくれる星のビーズの妖精です。作:おおにしわか 文:大川久乃 絵:のだかおり アートディレクション・装丁:高橋まりな/1760円(ニジノ絵本屋)

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