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「不適切保育」の不安を感じている親が70%以上も。本当の「保育の質」って、どんなもの?不適切保育のない保育園を見つけるためにできること

更新

幼稚園および幼稚園教師、輪になって踊る
paylessimages/gettyimages

近年、園児への虐待や暴言といった「不適切保育」と呼ばれる行為が発生し、ニュースでも取り上げられるようになりました。
そこで今回は「たまひよ」アプリユーザーに聞いたアンケート結果とともに、長らく保育園問題に関わり、2024年7月に『不適切保育はなぜ起こるのか──子どもが育つ場はいま』(岩波新書)を出版した保育ジャーナリストの普光院亜紀さんに、現在の保育事情について伺いました。

約70%の親が保育園に子どもを預けることに不安を感じている

最初に、アンケート結果からご紹介します。

Q:保育施設における虐待などの不適切保育についてのニュースを見る機会が増えています。あなたはお子さんを保育園に預けるのに不安を感じることがありますか?

不安を感じる 72.5%
不安を感じることはない 26.6%
その他 0.9%

約70%の人が「不安を感じる」と答えています。では、不適切保育について、普光院亜紀さんにお話をお聞きしましょう。

現在、公表されている不適切保育は氷山の一角?

――最近、よく耳にするようになった不適切保育とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

普光院「保育者が子どもを叩いたり脅したり、行きすぎた罰を与えたりして、心身の発達に悪影響を与えるような保育を行うことを『不適切保育』と言います。

2022年11月、静岡県裾野市の保育園の『不適切保育』が明らかになり、大々的に報道されました。私がアドバイザーを務める『保育園を考える親の会』には、以前から子どもの心を傷つけるような保育についての相談が寄せられていましたが、裾野市の事件で『不適切保育』という言葉が広く知られるようになりました。

大人が子どもを激しく叱責したり心身に苦痛を与える罰を与えたりすると、子どもは自尊心を傷つけられ、自信を失ったり、安心感が得られず園生活が苦痛になってしまったりすることがあります。
本来、子どもの心身を健やかに育む場のはずの保育施設でそのようなことが起こるのは、避けなければなりません。

残念なことに、裾野市の事件のあと、さまざまな保育施設での『不適切保育』が報道されました。そこで問題にされていた保育者の子どもへの行為の代表的なものとして、次のようなものがありました。

・頭を叩く、腕を強くひっぱる
・大声での恫喝、激しい叱責、長時間の叱責
・給食の無理強い、午睡できない子どもに罰を与える
・クラスの外に出す、押入れやトイレに閉じ込める ほか

ただし、どの程度のことが『不適切保育』に当たるのかについては、子どもの視点から判断する必要があります。
保育者が軽い罰のつもりでやっていることでも、子どもが強い恐怖や苦痛を感じているなら『不適切保育』に当たる可能性が大きいと思いますが、保育者が子どもの足を持って持ち上げたとしても、子どもがそれを遊びとして楽しんでいたなら『不適切保育』とは言えないでしょう。
そもそも保育者が子どもの人格を尊重した関わり方をしていれば、子どもは恐怖や苦痛を感じないはずです。

ざっくり言って、大人に同じことをやったら犯罪やパワハラになるような事柄はおおむね不適切保育です。大人をどこかに閉じ込めたり、口に無理やり食事を押し込んだりしたら、犯罪になります。

私が相談を受けた事案の中には、暗いトイレに閉じ込められた体験が心の傷になり、小学校入学後にフラッシュバックが起こってPTSDと診断されたケースもありました」

子ども一人ひとりの尊重とスムーズな集団活動の両立の難しさ

――痛々しいケースが数多く報告されているのですね。親御さんは保育園を見学し、さまざまな検討して、入園希望の園を絞ると思います。待機児童問題については解消してきている地域もあるようですが、保育施設を増やしたために「保育の質」が低下しているという心配の声も上がっています。現在の「保育の質」についてはどうなのでしょうか?

普光院「まずお伝えしたいのは、『保育の質』とは延長保育や習い事保育、オムツの持ち帰りがないことなどではないということです。子どもが安心して過ごせ、のびのびと活動する中で心身の発達を豊かに促されるような保育を質の高い保育と言います。

乳幼児期は人格形成期であり、知識や技術を習得する以前の全人格的な発達をとげる時期です。子どもは、保護者や保育者など身近な大人との関わりや、同年齢・異年齢の子ども同士の関わり、自然環境やさまざまな事物との関わりを通して、基礎的かつ複雑な心身の機能を発達させていきます。

このとき保育者は、自身が子どもにとっての最大の環境となり、また、子どもを取り巻く環境のつくり手ともなります。保育者がどんなふうに保育を実践できるかによって、保育の質は大きく左右されるのです。

このような観点から保育者に求められることは、認可保育園の保育の規範を定めた『保育所保育指針』にもくわしく書かれています。
逆に、子どもの心や体を傷つけたり、不安にさらし萎縮させてしまったりするような『不適切保育』は、心身の発達に悪影響を与える行為と見なされ、施設の指導監査で指導の対象となります。

『不適切保育』が起こる背景には、5つの要因が考えられます。

(1)園の保育観・理念:従わせ統制する子ども観、規律の過剰な重視(完食・午睡ルールなど)
(2)保育者の資質:子どもの発達や個性への理解不足、スキル不足、自己抑制力の不足
(3)保育体制:現場に余裕がない、保育を振り返る時間がない、保育や子どもについて振り返り話し合う習慣がない
(4)子どもの特性:さまざまな個性や発達(それぞれのペースがある、月齢差、個性など)
(5)保護者との関係:保護者とともに子どもを見守る関係がうまくつくれていない

『保育所保育指針』は、一人ひとりの子どもの発達や個性に寄り添って保育をするように求めています。しかし、一人ひとりを尊重しながら、集団生活をスムーズに運んでいくのは簡単ではありません。

この時期の子どもたちは、言葉でのコミュニケーションや筋道を通して物事を理解する力などもまだ十分に発達しておらず、個人差も大きい時期です。
それでも、保育者は自身の専門性や経験、チームワークの力などを生かして、なんとか子どもの尊重と集団生活のスムーズな運営を両立していかなくてはならないのです。

そのためには、保育者が自身の保育を振り返ったり、職員同士で話し合ったり、保護者とコミュニケーションをとったりするための余力が必要です。
現在、そのような余力が保育者に保障されているのかどうか、保育の制度面からの改善が望まれていると思います」

子どもが安心して過ごせる園を探すには

――不適切保育について不安を感じている親御さんが72.5%もいました。不適切保育のない園を見つけるためにできることはあるのでしょうか?

普光院「園選びの段階で、園見学を必ず行ってください。
先に述べたような『子ども中心』の視点から保育を見ることが必要です。

子どもが安心して保育者に甘えられているか、のびのびと自分らしく遊べているか、保育者は子どもと目を合わせて話をしているか、体を乱暴に扱ったりしていないかなど、現場の保育の様子で確認します。

また案内者(園長や主任などが当たる場合が多い)に子どもの園生活(食事、午睡、トイレトレーニングなど)について質問して、一人ひとりの子どもに合わせた対応をしてくれているかどうかも確認するとよいでしょう。

発表会や運動会などが評判の園もありますが、子どもが整然と演技するような内容である場合、子どもへの指導が厳しいこともあります。立派な行事を見ると大人はつい感動してしまいますが、子どもに無理をさせていたり、できない子どもを排除していたりしていないかなど、口コミを確認したほうがよいでしょう。

入園後は、できるだけ園の行事などに参加して、保育者とコミュニケーションをとるようにしてください。

『不適切保育』かもしれないと思った場合でも、まず保育者に気になった保育の様子やルールについて、その意図や理由を聞いてみたほうがよいでしょう。
苦情を言う形ではなく、『子どもが不安を感じているようだ』など、子どもの気持ちを代弁する形で相談してみることをお勧めします。

明らかに不適切な行動(暴力や恫喝、閉め出しや閉じ込めなど)を見てしまったときは、園長や主任に相談します。園が取り合わない場合は、市区町村に通報してもよいでしょう。

ただし、あまりささいなことで保育者を咎めてしまうと、保育者の余力を奪って、かえって保育の質を低下させてしまうこともあります。
まずは、信頼関係を大切にして園とコミュニケーションをとることをお勧めします。保護者と信頼関係ができていて、保育者が応援されているような園では、不適切保育は起こりにくいはずです」

「子ども中心の視点」が何事も基本なんですね。親から見た便利さなどの視点もありますが、一番大事なことはおろそかにしないようにしたいと思いました。
(取材/文・橋本真理子、たまひよONLINE編集部)

普光院亜紀さん

普光院亜紀さん

PROFILE)
働く親のネットワーク「保育園を考える親の会」アドバイザー、保育ジャーナリスト、大学講師。保育園や仕事と子育ての両立についての著述・講演活動などをしている。著書に『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)、今後の保育のあり方について考える『不適切保育はなぜ起こるのか──子どもが育つ場はいま』(岩波新書)など多数。

※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2024年7月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数109人)
※記事の内容は2024年8月の情報で、現在と異なる場合があります。

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