SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 体のトラブル
  4. つわり
  5. 「なんでできないの!」SNSの影響で子どもの発達の遅れにイライラし、孤立感を抱えていたママが… ~地域の人とのつながりで子育てを支援する「ホームスタート」の存在~

「なんでできないの!」SNSの影響で子どもの発達の遅れにイライラし、孤立感を抱えていたママが… ~地域の人とのつながりで子育てを支援する「ホームスタート」の存在~

更新

「ホームスタート」という無料で利用できる、子育て支援サービスを知っていますか?イギリスで始まったこの取り組みは、子育てに不安や悩みを抱えている親子を、地域の子育て経験者が自宅に訪問してボランティアで支える、民間の「家庭訪問型子育て支援」です。友人のように支えることをモットーに、日本では約15年前から始まり、今では全国約120地域で支援が行われています。まだまだ知らない人も多いこのサービスの特徴やサービス内容、設立までの苦労などについて、NPO法人ホームスタート・ジャパンの森田圭子さんに聞きました。全2回インタビューの後編です。

▼<関連記事>前編を読む

人とのつながりが、事業が円滑に回るためのエンジンになる

日本にホームスタートを導入した前代表の西郷泰之氏と草創期メンバー。英国視察ではホームスタート創設者のマーガレット・ハリソンさんにも面会をした

大阪での子育て中に地域の人に助けられた経験をもとに、埼玉県和光市で子育て支援活動を始めた森田さん。その中で「子育て広場などに行けない人」へのサポートを考え始めていたとき、イギリス発祥のホームスタートという家庭訪問型子育て支援を知りました。子育てを終えた地域のおばちゃん、おじちゃんが、金銭のやりとりはなしに、友人のように若いママやパパを支えるという活動です。

しかし、このホームスタートを日本で広めていくためには、いろいろな課題がありました。

「今は自治体の子育て支援の取り組みの中に入っているホームスタートの団体もたくさんありますが、最初からそうではありませんでした。私が属する地元の子育て支援団体は以前から子育てひろばの運営を受託していたので地元行政とのつながりはありましたけど、そこでも専門職ではない人が家庭訪問をするホームスタートの内容を理解してもらうのは大変でした。

また、ホームスタートの家庭訪問での支援が本当に必要な方に向けて、この支援を周知するのはもっと大変でした。そういう方々の中には、なかなか外に出てこれらない方もいらっしゃるので、この支援を伝えるためのルートがないんです。

そして、子育て家庭を訪問するのは子育て経験のあるボランティアさんたち。そのために子育て家庭を手伝ってくれる有志を募り養成講座に参加してもらわなくちゃなりません。養成講座を企画してボランティアを募集し、約30時間の研修を受けてもらって…と実際に訪問できるようになるまでに結構時間がかかるんですね。

あとは、利用料は無料なのですが、運営するのにはどうしてもお金がかかる部分もあります。まず研修費用、そして『オーガナイザー』と呼ばれる、利用者さんとホームビジターをマッチングしたり何かあったときにフォローするコーディネーターを置くための費用。これらは支援の安心を担保する大事なしくみなのですが、そのための継続的な財源確保への理解を得るのにはだいぶ時間がかかりました。

それらを全部乗り越えて、ようやくサービスがスタートできたんです。思い返すと準備期間がいちばん大変だったような気がします」(森田さん)

ホームスタート事業への理解、行政や保健師とのパイプ、利用者とボランティアへの周知、ボランティアの育成、そして財源確保…。いくつものハードルを乗り越えてようやく始まったホームスタートによる子育て支援。実際に始めてみて、森田さんはどのような効果を感じたのでしょうか。

「窓も開けずに赤ちゃんと2人で閉じこもっていたお母さんがいらして、そこへボランティアのホームビジターが訪問したんですが、こんなに感謝されるものかっていうくらい喜んでもらえて。利用者さんもうれしいし、ボランティアさんもうれしいし、運営している私たちも本当にうれしかったです。やはりこのような支援は必要なんだと改めて思いました。

それに、支援活動が始まるまではすごく大変だったけれど、いざ始まってみたら、みんなの温かいつながりで、回っていくんだなあっていうのを感じました。そのうちに、利用者だった方がホームビジターになりたい、ボランティアに行きたいって言ってくれたり、ホームスタートの資料や報告会に、利用体験を顔出しでお話ししたいと言ってくださったり。そうすると、ホームビジターさんも運営側ももっと頑張ろうって思えるですよね。

みんなの『ありがとう』という気持ちで、みんなが支えられながら、人とのつながりがエンジンになって回っていく事業だなと思います。そこがとてもやりがいを感じるところで、事業を始めたころも今も変わらずそう思っています」(森田さん)

温かい気持ちで支えられることで、気持ちが変化していくのを目の当たりにしたという森田さん。その経験の積み重ねで、いろいろなママに出会ったときに、パッと見だけではわからないママの奥底の気持ちを感じられるようになってきたのだと言います。

「もちろん、誰でも、落ち込んでいたりすると、すぐに『ありがとう』となれないし、最初のころは、支援するほうも、わかりやすい手応えがないとこれで本当にいいのかと不安になったりすることもあるんです。でも、経験を重ねていくにつれて、ママのしんどさやイライラを感じることがあっても、「お母さんほんとに大変な中で頑張っているんだなあ』って見えてくるんですよ。

そんな支援者の大らかな包容力に、だんだんお母さんたちもちょっとずつボソボソっと自分の気持ちを話してくれるようになったり、口下手なタイプだけどありがとうと言ってくれたりするんですよね。そこに、みんなやりがいを感じています。

利用終了後も、連絡を取り合っちゃ絶対ダメっていうことでもないので、利用者さんやホームビジターの方によってはメッセージアプリの連絡先だけ交換して、子どもの入学や卒業の折に写真を見せてもらったよ、みたいな話を聞いたこともあります。

損得なしの地域のつながりができていくのも、私たちの子育て支援がお金でつながったものじゃないからこそかなと思います」(森田さん)

そうはいっても、子育ては一筋縄ではいかないもの。たくさんの情報にあふれ、あれもやらなくちゃ、これもやらなくちゃと忙しいママ・パパは多い。それを森田さんも感じていると言います。

「小さかったわが家の息子たちもすっかり成人して、今は私には孫がいるんですが、息子夫婦の今の育児の大変さを目の当たりにしていますね。

以前、お子さんの毎日の癇癪(かんしゃく)に悩んでホームスタートを利用されたお母さんがいらっしゃいました。とても真面目なお母さんで、こどものイヤイヤに本当によくつき合っていて、そこまで頑張らなくても…と思うくらいだったけれど、そのお母さん、育休で休んでいるのだから親として自分が向き合わなきゃいけないって、求められれば家事を中断して何十回もお子さんの癇癪につき合って、でもやっぱり疲れ果てていらっしゃいました。疲れ果てているけど助けてもらわずに親の自分が頑張らなきゃいけないって、真面目に思い込んでいらっしゃるんですね。

でも、お家に訪問して一緒に過ごしていると、少しずつ気持ちが緩んでいくのを感じました。結局そのあと、ご本人が保育園に預けてもいいという気持ちになられて、お子さんを預けて、自分のペースで生活できるようになったんです。

あと最近は、SNSで落ち込まれるお母さんも多いです。みんなSNSでつながっていて、生まれたばかりのころはすごく盛り上がっていたんだけど、だんだん赤ちゃんが大きくなって、寝返りしたとか、お子さんの発達についてアップされていくようになると、自分のお子さんがその子たちより遅れていることに孤立感を抱えてしまうケースもありました。ほかのお子さんを見て、自分のお子さんが遅れていることに強い焦りを感じてイライラしてしまい、時には子どもに「なんでできないの!」と腹を立てたり、そんな自分が嫌になってひどく落ち込んだりしておられたようです。

その様子をお父さんが心配してホームスタートに申し込まれたんです。最初にうかがったとき、お母さんはちょっと警戒している様子もありましたが、支援に入ったホームビジターは、お母さんに『こうしたほうがいいよ』みたいなことは全然言わずに、『そうだね』『そうだね』ってお母さんの言うことを聞いてあげて、『この子はいい子だね』『とってもかわいい』って言ってお話をしていたら、お母さんが『生身の人と話すのはいいですね』って言って、みるみる元気になっていったそうです。そのお母さんは、あまり外に出向かない人でしたが、子育て広場にも行けるようになったし、時々スーパーでホームビジターさんに会うと、声をかけてくれるようにもなったそうです。

そういうお話を聞くと、人はやっぱりだれかと対面して、リアルで会ったり話したりしなくちゃいけないなって、改めて思いました」(森田さん)

ホームビジターの訪問に支えられているホームスタートですが、この訪問を安心して進めていくためのしくみもあります。それが「オーガナイザー」と呼ばれるコーディネーターの存在です。

「ホームスタートでは、利用したいという方がいたら、まず利用者さんがどんなことに困っているのか、どんなことを求めているのかを聞きに行きます。これは、ある程度経験のある準専門家のような『オーガナイザー』が行い、利用者さんとホームビジターのマッチングをするんですね。ただただ順番に案内するんじゃなくて、ニーズに合った人をご紹介しているんです。

全国のホームスタートは各団体が運営していますが、研修内容などについては分厚いマニュアルがあって、それぞれのサービスの質がばらけないようにしています。また、訪問型の支援では、他人が家に1人で入ってくるので、入る側も迎える側も不安がありますよね。その不安をできるだけ払拭できるように、まず要望を聞くオーガナイザーがいて、途中でモニタリングも行うとか、その地域の行政の人たちと組んでバックアップしてもらう運営委員会を置くとか、しくみのポイントがあるんです。

あとは、活動当初から子どもの権利についてのセーフガードや個人情報の保護などについてボランティアと同意書を交わすこともしています。

そもそものしくみが、ボランティア活動が盛んなヨーロッパで考えられていて、他人が家庭の中に入っていくしくみとしてよくできているので、日本でホームスタートをスムーズに進めていくためにすごく参考になりました」(森田さん)

人の温かさでつながる「ホームスタートのよさ」を続けるために

15周年記念フォーラムでの様子。この15年で仲間もたくさん増え、支援も広がった

しくみとしても、サービスの内容としても、メリットが多いホームスタートの事業。しかし、課題もあります。

「このホームスタートという子育て支援があることを、子育て中のお母さんやお父さんにもっともっと知ってもらうことが課題です。あとは、ボランティアになろうって思う人が増えていくためにも、子育てを終えた人たちにもホームスタートのことを知ってほしいです。子育てを通して、地域でのつながりができ、人と人とのつながりがこれからも続いていくというのは、地域にとってもとても意味のあることだと思いますしね。

あとは、財源確保も課題の1つです。ボランティアに支えられている部分はありますが、交通費だったり研修費だったり、オーガナイザーを雇うための実費は必要なんです。

今、全国に約120 地域、約120の団体さんがこのホームスタート活動を、それぞれの地域でやっているんですが、どの団体さんもホームスタート・ジャパンの直営じゃなくて、それぞれ自分たちの方法で資金を工面して運営しています。だいたい6割ぐらいの団体さんは市区町村の子育て支援制度に組み込まれているので、補助金をいただいて運営しているんですが、残り4割ぐらいの団体さんは寄付金や民間の助成金とかで運営をされていますので、十分な財源がない団体さんも少なくありません。

人の温かさでつながっていくのがホームスタートのよさなんですが、『そんなにお金がたりないんだったら、利用料を取ればいいのに』みたいに言われがちなんです。お金じゃない、人と人とのつながりっていうのは無料だからこそだし、無料だからこそだれでも使えるし、何回も使えるし、大変な人に届く。この部分は大事だし、こだわっているんですが、その意味もなかなか伝わりにくいんですよね。

そのための施策のひとつとして、今回、クラウドファンディングをやることにしました。ホームスタートの知名度を上げるために、キャンペーン的にこの活動の内容を知っていただくということと共に、寄付で応援してもらえるので、みんなで力を入れて取り組んでいます。
クラウドファンディングは一時的なものですが、この活動は今後ずっと続けていかなくてはいけないと思っているので、クラウドファンディングが弾みになればいいと思っています」(森田さん)

自身が感じた人の温かさに支えられる子育てのありがたさと必要性を、支援する側になって、子育てを頑張っているママ、パパを全力で応援したいと考えている森田さん。今、妊娠中の人や子育て中のママ・パパに伝えたいこととは――。

「妊娠したり、子どもができたりすると、自分が想像してた以上に生活が変わることがあって、それは楽しいことでもあるけど、乗り越えなくちゃいけないこともたくさんあるので、それがストレスになることもあります。一生懸命やってもすぐに結果が出ないこともあるし、時にはひどく落ち込んだり、自信を失ったりすることもあると思います。

自分を優先できない、ここにいる小さい人を優先していかなきゃいけない24時間365日は、すごく大変。だから頑張りすぎないでねとも思うし、頑張ったら誰かに助けてもらってねと思います。誰かに話を聞いてもらうのは、全然恥ずかしいことではないし、話してみたら、1人じゃなくてみんなそうだよって思えることもあります。

今は相談できる機関とかも増えてきたので、そういうところを頼りにしながら、子育てはぼちぼち、自分のペースを大切にして、しんどいときは自分を大事にしてほしいとも思いますね。

もしホームスタートが自分の地域にあったらぜひホームスタートを利用してみてください。いいおばちゃんやおじちゃんが来てくれる、話し相手になってくれるなど、いろんなサービスがあるから遠慮なく使ってほしいです」(森田さん)

お話・写真提供/森田圭子さん(特別非営利活動法人ホームスタート・ジャパン 代表理事) 取材・文/酒井有美、たまひよONLINE編集部

いろいろな思いに支えられているホームスタートの事業。筆者はこの取材に至るまで詳細を知らずにいましたが、里帰りせず、夫婦で小さな赤ちゃんを守ることに必死だった当時の自分を振り返ると、つらいときに話し相手になってくれる存在がいると思うだけで、気持ちの余裕ができ、踏ん張る力をもらえただろうなと感じます。ホームスタートの活動を行っている団体は「ホームスタート・ジャパン」のWEBサイトで調べることができます。「子育てがつらい」「孤独だ」「誰かと話したい」「手伝ってほしい」などの気持ちがあれば調べてみることをおすすめします。

森田圭子さん(もりたけいこ)

PROFILE
宮崎県出身。お茶の水女子大学卒。百貨店勤務を経て、結婚後しばらくして退職。10年間の専業主婦生活のあと、2000年に埼玉県和光市で、子育て中の仲間たちと子育てサロンや子育て情報発信を行う子育て支援団体「わこう子育てネットワーク」設立(2004年1月にNPO 法人化)。2008~2018年には和光市教育委員会教育委員を務める(2009年からは教育委員長)。2010年からは、家庭訪問型子育て支援ホームスタートにも取り組むと同時に、全国へ普及する活動にも従事。現在、特別非営利活動法人ホームスタート・ジャパン 代表理事、および特定非営利活動法人わこう子育てネットワーク代表理事。家族は夫と息子2人。

ホームスタートのクラウドファンディング(実施期間:2025年1月27日~3月27日)

https://readyfor.jp/projects/homestartjapan2025

ホームスタート・ジャパンのWEBサイト

ホームスタート・ジャパンのInstagram 

ホームスタート・ジャパンのX(旧Twitter)

ホームスタート・ジャパンのYouTube

ホームスタート・ジャパンのFacebook

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●掲載している情報は2025年3月現在のものです。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。