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始まりは生後2カ月の痙攣発作。「結節性硬化症」と診断された息子と接するきょうだい児の存在で、障害に対する気持ちが変わった【体験談】

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庄司さん,結節性硬化症

北海道在住の庄司あいかさんは、長男(13歳)、長女(10歳)、二男(5歳)、パパの5人家族。長男の隼人くんは結節性硬化症という難病をもって生まれた重心児(重症心身障害児者)です。

庄司さんは、言語理解がむずかしい長男でも楽しめる絵本をつくりたいという思いから、インクルーシブ絵本作家としての活動をスタート。障害者や家族の支援を目的とした絵本屋さん「絵本屋だっこ」を立ち上げました。今回は、これまでの隼人くんの成長と育児生活を庄司さんに振り返ってもらいました。全2回のインタビューの前編です。

生後2カ月のけいれん発作から「結節性硬化症」とわかるまで

誕生時の隼人くん
誕生時の隼人くん

隼人くんに異変があらわれたのは生後2カ月目の終わりのこと。頻繁に起こるけいれんに様子がおかしいと感じ、病院を受診したところ「脳出血の疑いがある」と診断を受けました。

「CTを撮ると、片方の脳に黒くて大きい塊が。『出血か腫瘍か、今は区別がつかないので経過をみるしかない』と医師に告げられました。出血だった場合は命に関わるということで、すぐさまICU(集中治療室)に入り、しばらく入院することに。しかし、詳しい診断がつかなかったため、大きな病院に転院して診察を受け、『結節性硬化症』だと判明しました。

診断が出るまでの1カ月ほどは、まったく先が見えない状態でした。命がどうなるかもわからない、息子が死んでしまうかもしれないという不安で頭がいっぱいで…。もう何も受け入れられない、何も考えられない、そんな毎日でした。私の身体にも、これまで感じたことのない動悸(どうき)や震えなどの症状が。とにかく混乱していて、涙をこらえて過ごしていた気がします」(庄司さん)

結節性硬化症は全身の疾患で、皮膚、神経系、腎、肺、骨などいろいろなところに良性の腫瘍や先天性の病変があらわれます。乳児期には点頭てんかん(ウエスト症候群)になる患者が多く、隼人くんのけいれんもウエスト症候群によるものだと判明しました。そのほか個人差はありますが、知的障害や精神神経症、白斑などが主な症状です。

「診断がついたことで、生まれてから息子にあった白斑や、てんかん発作もこの病気が原因だとわかり、どちらかというと安心した気持ちが大きかったと思います。

結節性硬化症は先天性の遺伝子の病気なので、成長とともに治るものではなく、一生つき合っていく必要のあるもの。新たに腫瘍ができたりてんかん発作が出たりしたら、薬で抑える対症療法しかありません。なので、診断後は『向き合っていくしかないな、できることをやっていこう』という方向に気持ちが切り替わりました」(庄司さん)

泣き叫ぶわが子。どんなに頑張っても報われず、鬱(うつ)のような状態に

長期入院中に1歳の誕生日を迎えた隼人くん
長期入院中に1歳の誕生日を迎えた隼人くん

病気が判明してから、庄司さんは家に帰らずにつきっきりで入院生活を送りました。その生活は隼人くんが1歳をすぎるころまで続いたそう。

「隼人が1歳3カ月になったころにようやく退院。そこから家庭での生活が始まりました。息子はとにかくよく泣く子で…。それに、自閉傾向を含む最重度の知的障害があるので、意思の疎通ができなかった。

どうして泣いているかもわからないのに、ただただあやし続ける日々。本当にずっと“本気泣き”という状態で、それが毎日何時間も…2歳ごろまではまるで新生児と暮らしているようでした。当時は『何かできることはないか』と私自身すごく頑張っていましたが、一方でノイローゼ気味でもあったと思います。

“本気泣き”が続く状態は2歳をすぎたころからすこしずつ落ち着いてきましたが、それでも突然パニックになってギャーっと何時間も泣き叫ぶということが頻繁に。私は比較的外に出て行くタイプなので、息子を連れて子育て広場のような場所にもどんどん足を運んでいましたが、そこでも急に息子が泣き始めてしまい、ほかの人と話せないなんてことも。

どんなに頑張っても報われない…。今思うとそのときは鬱(うつ)に近い状態にまでなっていたと思います。『この子はずっとこういう子なのかな、大人になってもこうなのかな』という先の見えなさがありましたね…」(庄司さん)

妹の存在が、障害を持つ息子への気持ちを大きく変えた

隼人くん(2歳)と妹さん(0歳)
隼人くん(2歳)と妹さん(0歳)

隼人くんには2歳年下の妹さんがいます。そんな妹さんの存在が、庄司さんの子育てに対する気持ちに大きな変化をもたらしました。

「私の母が重度障害の施設で勤めていたこともあり、子どもが生まれる前から、障害に対して偏見はないつもりでしたし、障害者に対してもわりと身近な存在だと思っていました。それでもなぜか、自分が障害児の親になるなんて1mmも思っていなかった。実際に自分の身に起きたことはすごく衝撃でしたが、やっぱり“障害がある”ということに対してマイナスな気持ちはなくて、『私ならできる!育てられる!』と思っていたんです。

それでも、どれだけ愛情をかけて頑張ったところで、息子から何も返ってこないつらさがずっとあって…。正直、打ちのめされていました。そんな中、長女という存在が私に大きな変化をもたらしてくれたんです。

長女が生まれてから『私の隼人に対する接し方と、娘が隼人に対する接し方ってちょっと違うな』と感じ始めました。娘は本当に隼人のありのままを受け入れていて、けんかもするし、おもちゃも遠慮なく取り合う、逆に面倒を見ることだってある。そこに“かわいそう”といった感情はまったくないんです。

2人が楽しそうにしているのを見ていたら、『隼人は不幸じゃなかったんだな、隼人にも幸せがあるんだ』という気持ちが芽生えて。そこで初めて、今まで長男に対して“かわいそう”だとか“不幸だ”という偏見が自分の中にあったんだって気づかされました。そこからは、本当の意味で障害への偏見なく隼人と接することができたと思います。

娘が2歳ごろのこと。みんなで散歩をしていたときに『私がにぃにのバギーを押すね。にぃに、風が気持ちいいね〜』って言ったんです。本当に日常の何気ないシーンなんですが、私の心にはずっと印象的に残っていて。その光景を思い出すたびに、きょうだいがいてよかったなぁと思います。

現在、隼人は中学1年生、長女は小学5年生、二男は年長とそれぞれ成長していますが、今でも互いに変な気をつかうことはありません。長男は1人で黙々と遊ぶタイプなので、一緒に遊ばなくても“当たり前のようにそこにいる存在”という感じ。長女、二男は気が向いたら長男のそばに行ってふれあっています。長男のことだけでなく、下の子たちが自分たちのやりたいことをできる環境もしっかりつくってあげられたらと思っています」(庄司さん)

“見る”、“聞く”といった当たり前のことができるのがうれしい

現在の隼人くん
現在の隼人くん

中学1年生になった現在も、1日に何回かはてんかん発作があるという隼人くん。朝晩の薬は欠かせませんが、家族やまわりの人に支えられながら元気に特別支援学校に通っています。

「隼人は “聞く”ことが好きで、音の鳴るおもちゃを渡すと延々と聞いています。私が歌を歌ったり、屋外のコンサートに行ったときでも、じーっと聞いている。“聞いていることがわかる”というのは、ほかの人にとっては当たり前のこと。でも、これまで息子が聞いているかどうかこちらから見てもよくわからなかったので、“聞く姿”を見るだけでも今はうれしいんです。

一方で、隼人は“見る”ことがあまり得意ではなくて。隼人が5〜6年生になったころからやっと“目が合っている”と感じられることが増えて、それも本当にうれしい出来事でした。

これからもっと、目で合図することでコミュニケーションをしたり、意思を伝えたりできるようになったらいいなと思いながら、日々息子と関わっています」(庄司さん)

お話・写真提供/庄司あいかさん 取材・文/安田萌、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

隼人くんの成長に喜びを感じながら、3人きょうだいの子育てをする庄司さん。そんな中、言語理解がむずかしい長男にも読んであげられる絵本をつくりたいという思いで、インクルーシブ絵本作家として活動をスタート。「絵本から障害への理解を広めるような活動をしたい」と「絵本屋だっこ」を立ち上げます。インタビューの後編では、「絵本屋だっこ」を立ち上げた経緯や活動への思いについてお話を聞きました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

庄司あいかさん

PROFILE
3児の母で長男が難病の重心児。「絵本で障害への理解を広めたい」という思いから、絵本作家の活動を始め、障害者や家族の支援を目的としたインクルーシブな絵本屋さん「絵本屋だっこ」を立ち上げる。現在は、絵本から障害への理解を広める活動をする非営利活動法人「NPO法人絵本屋だっこ」の代表を務め、障害者やその家族をはじめ、だれもが笑顔ですごせる社会をめざし活動中。

NPO法人絵本屋だっこのHP

庄司あいかさんのInstagram

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年2月の情報で、現在と異なる場合があります。

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