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日本で1日に性被害に遭う子どもはなんと1000人以上と試算されている。 子どもを守る方法をふらいと先生に聞く【小児科医】

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

2025年2月、神奈川県で帰宅途中の8歳女児に34歳男が性的暴行したという痛ましい事件が報道されました。
子どもを性被害から守るために、親として何ができ、何をすべきなのでしょうか。SNS上で「ふらいと先生」としても知られる小児科医の今西洋介先生に話を聞きました。全2回のインタビューの前編です。

子どもの性被害の実態が把握されにくい理由

――「性被害」と聞くと、ニュースで目にする出来事のようにとらえがちですが、実際、どのくらいの数の子どもが性被害に遭っているのでしょうか。

今西先生(以下敬称略) 日本全国でどのくらいの子どもが実際に被害に遭っているのかを明らかにするのは難しいです。日本では小児性被害の全国調査が実施されておらず、実態に近い数値が把握できない状態が続いているんです。

警察が検挙した子どもへの性的虐待の件数は年間339件(2021年)で、児童相談所では2451件(2022年)の性的虐待が相談されている、という統計はありますが、実際の数との差が大きいと言われています。厚生労働省の令和2年度の調査(※1)では「推定で1日1000人以上の子どもが何らかの性被害に遭っている」と試算されています。

――1日1000人以上ですか・・・。性被害を明らかにするのが難しい理由を教えてください。

今西 子どもは年齢が低いほど自分が受けたものが性被害として認識できませんし、親や周囲の大人にどう訴えればいいかもわかりません。「深刻な性暴力被害に最初に遭った年齢」についての令和3年の調査では、2040人の回答のうち0〜6歳のときの被害が2.5%という数字が出ていますが、この数字はうのみにできないでしょう。

大人が性被害に遭ったとしたら、警察に届け出たり、自分の言葉で説明することができます。大人だとしても簡単なことではありませんが、大人は自分の判断でそういう選択肢があります。しかし、子どもは被害を訴える言葉を持ち合わせていないのです。
また、大人側に「小児性被害ってめずらしいことでしょ?」といった先入観があると、子どもからのSOSに気づけないこともあります。
さらにある調査では「小児性被害の多くは見知った相手、中でも家族が占める割合は高い」ことがわかっています。

――家族による性被害が多いとは、ショックです。

今西 以前から「知らない大人についていくな」などと子どもに言い聞かせる人は少なくないと思いますが、最も多いのは「親の恋人・親族」で、次に多いのが「親」です(※2)。「親」とは同居父母・別居父母のこと。多くの人にとって家は安全で安心できる場所ですから、家族は性加害をしないと思っているケースが多いかもしれません。

性的虐待は外傷が残りにくく、見た目にも現れにくい上に、子どもが自ら訴えることが難しいなどの理由から、家庭内で行われる虐待の中でも表に出てきにくいものなのです。

子どもからのSOSを見逃さない

――子どものSOSをキャッチするには、どうすればいいでしょうか。

今西 子どもは「性被害を受けている」「助けて」と直接言葉にすることは少なく、「おなかが痛い」と訴えたり、「学校に行きたくない」と不登校になったり、などの形でSOSのサインが現れることが多いです。子どもからのSOSを常にキャッチできるように、日ごろからなんでも親に相談できるような関係を作っておくことはとても大事だと思います。

――もし自分の子どもが性被害に遭ってしまったら、親はどういう行動をしたらいいでしょうか?

今西 子どもに何か心配な変化があったり、被害を訴えてきたときには、まずは子どもの話を聞きましょう。「そんなことあるわけないでしょ」と否定したり、ちゃかしたりしないこと。心配だとは思いますが「どういうことをされたの?」「いつされたの?」と追い込むように質問すると、子どもは口を閉ざしてしまいます。

「どんなことがあったの?」と聞いて子どもの言葉を待つと、時間がかかっても話してくれるかもしれません。親子の信頼関係ができていれば、子どもは必ず何かしらのサインを送ってくると思うので、それを見逃さないようにしましょう。子どもが話してくれれば、その後、全国共通の性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター「#8891」に連絡するか、警察に連絡してほしいと思います。

――知人の小学校低学年の女の子のママから、娘が隣の席の男の子に「プライベートゾーンを見せて」と言われたり、触られたりすると聞きました。このようなケースではどう対処したらいいでしょうか。

今西 まずは話を聞いて受け止めてあげましょう。子どもからそのような話を聞くと、親もあせってしまいますよね。「子どもの言うことがどこまで本当かわからない」と迷うかもしれません。ですが、子どもが訴えても親が対処してくれなければ、その子は親に相談しにくくなってしまいます。子どもの話、と過小評価せずに、傾聴的な態度で聞いてあげてほしいです。

そして、学校の先生に相談して席やクラスを離すなどの対応をしてもらう方法もあるでしょう。親同士が話し合える関係なら、直接男の子の親に「様子を見てほしい、やめてほしい」と伝えてもいいと思います。

性加害者から子どもを守るには

画像はイメージです 写真提供/ピクスタ

――公園などで、性加害者から子どもを守るためにはどのようなことに気をつければいいでしょうか。

今西 日本では登下校や放課後に公園などに遊びに行くとき子どもだけで出かけますが、これは世界的に見て特殊な環境と言えます。アメリカでは、子どもだけで外出させると虐待として通報されますから、子どもだけで外出する、遊ぶ、ということは起きないのです。

日本はよくも悪くも安全で、子どもが1人で登下校したり遊びに行ったりする文化があります。それをすぐに欧米のように変えることは難しいでしょう。現実的な対策としては、
・公園で遊ぶときには子どもから目を離さないこと
・登下校は複数人でさせること
・だれかに声をかけられるなど異変を感じたら走って逃げさせること
などでしょうか。密室や隠れた場所は性加害が起こりやすいというデータがありますから、そのような環境を避けるように自己防衛することです。

――園・学校の先生や習い事のコーチとかかわるときはどうでしょうか。

今西 水泳教室や学習塾など、子どもと一対一になるような環境では性加害が起こりやすいと言われています。習い事を始めるときには、その施設や教室などが子どもと一対一にはならない、もしくは一対一になるときはドアを開けておくとか、カーテンを閉めない、といったオープンな空間を作る工夫をしているかどうかを確認するといいでしょう。

私たち小児科医のケースでは、小児科医は小児性被害の疑いをかけられやすいというリスクがあります。私は日本で診察を行うときは、必ず看護師さんが同席の上で診察するか、保護者に診察の様子を見てもらうなど、オープンな空間を意識していました。アメリカの小児科学会では、診察の際のガイドラインもあります。

――新学期、子どもが1人で公共交通機関を利用し始める家庭も少なくありません。

今西 子どもの居場所を確認するには、GPS機能つきの子ども用携帯や、GPSタグなどを利用するといいでしょう。私の娘3人には、GPSタグを持たせています。親のスマホで、娘たちのリアルタイムの現在地を知ることができるので安心です。

ただ、GPSで居場所を確認することはできても、性被害に関してはなかなかカバーできないのが難しいところではあります。ですが、子どもの帰宅時間などに「いつもと帰宅ルートが違う」、「同じ場所で長時間止まっている」など、子どもの異変に気づくことができるでしょう。利用を検討してほしいと思います。

お話・監修/今西洋介先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

小児性被害の加害者は親が多いことや、1日に1000人の子どもが被害に遭っていると試算されることなど、衝撃を受けた人は少なくないでしょう。今回は子どもを性被害から守るための環境面の取り組みについて聞きました。
後編では、性被害から守るための親子での意識の高め方について聞きます。

※1/令和 2 年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 潜在化していた性的虐待の把握および実態に関する調査

※2/一般社団法人Spring「性被害の実態調査アンケート結果報告書①〜量的分析結果〜」(2020年)

今西洋介先生(いまにしようすけ)

PROFILE
新生児科医・小児科医、医学博士(公衆衛生学)、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会の代表理事を務める。「ふらいと先生」の名でSNSを駆使し、小児医療・福祉に関する問題を社会課題として社会に提起。現在は米国在住。3姉妹の父。

『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』

Xフォロワー14万人以上の小児科医「ふらいと先生」が、子どもたちを性被害から守るために必要な知識と具体的な対策を解説した1冊。被害の実態、子どもへの伝え方、大人ができる予防策などを具体的な事例とともにわかりやすく解説。今西洋介著/2090円(集英社インターナショナル)

●記事の内容は2025年3月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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