もうすぐ2児の父、右足切断のスノボ選手小須田潤太。勝負の世界も子育ても「比べる」という行為ほど無意味なことはない
21歳のときに交通事故で右足を失った、冬季パラリンピック代表の小須田潤太選手(オープンハウスグループ所属)。事故後は、結婚することや子どもをもつことは考えられなかったと言います。しかし現在、奥さんのおなかの中には第2子が宿っています。結婚や子育てのことや、大きな目標になっているミラノ・コルティナ2026冬季パラリンピックへの意気込みも聞きました。
全2回インタビューの後編です。
右足を切断後は結婚を考えられなかったけれど・・・
――奥さんとの出会いのきっかけを聞かせてください。
小須田さん(以下敬称略) 妻と出会ったきっかけは僕のいとこです。妻はいとこの高校の同級生で昔から僕の家族、いとこの家族、妻の家族と家族ぐるみでつき合いがありました。だから妻のことは高校生のころから知っていました。つき合い始めたのは2016年なので事故で右足を切断してからです。妻のほうから連絡をくれて、話しているうちにつき合うようになりました。
――結婚はいつごろから意識をしましたか?
小須田 右足を切断してからだれかとつき合う、そして結婚するなんてまったく考えてもいませんでした。だから妻から連絡をもらったときはうれしかったです。妻は「この世にこんないい人いる?」って、びびるくらいいい人なので、つき合い始めたころから結婚を意識するようになっていました。
――もともと家族ぐるみでつき合いがあったとのことなので、2人の結婚を聞いたみんなが幸せな気持ちになったでしょうね。
小須田 そうですね。僕の両親、きょうだい、妻の家族もとても喜んでくれました。そして2023年に娘が誕生したときもみんなに祝福してもらいました。
2025年7月には第2子が誕生予定
――奥さんは現在、第2子を妊娠中とのことですが、体調はいかがですか?そして、性別はもうわかっていますか?
小須田 いまはだいぶ落ち着いていますが、2人目も娘のときと同じようにつわりがキツそうでした。2人目は男の子と聞いています。
――2023年に誕生した娘さんの出産は立ち会うことはできましたか?
小須田 コロナ対策をしっかりおこなっている病院だったので、出産に立ち会うことはできませんでした。出産後は数分だけ対面できましたが、そのあとは退院まで会うことはできませんでした。
――Instagramで娘さんの顔を拝見しましたが、かわいいですね。
小須田 もう、めちゃくちゃかわいいです(笑)。メロメロです。
――第2子の出産は立ち会いを希望しますか?
小須田 妻は骨盤が狭いようで自然分娩が難しいということで1人目は帝王切開でした。だから2人目も帝王切開になりそうなので、誕生の瞬間にどこまで立ち会えるかはわかりませんが、生まれる日には病院で待機したいです。
つらい練習の合間の癒やしは、娘さんの食事シーン
――日々のトレーニングや遠征があるので、なかなか子育てに積極的に参加できないかもしれないですが、育児はいかがですか?
小須田 時間があるときはなるべく娘と一緒にいます。娘はよく話し、ごはんも食べるのであまり手がかからないと思います。最近は「ママ、ちょうだい」と言葉をつなげて話せるようになってきました。意思の疎通をはかれるようになってきたのでますます育児が楽しいです。
――すくすくと順調に成長されている印象です。
小須田 卒乳してからは食欲が爆発したかのようによく食べます。2・3歳年上のいとこたちよりも娘のほうがよく食べます。好き嫌いなく、大きな口を開けて全力で食べる姿を見ることが僕の癒やしになっています。
――娘さんはお姉ちゃんになったらしっかりお世話をしてくれそうですね。
小須田 日に日に大きくなる妻のおなかをうれしそうに触っています。第2子は男の子と聞いているので、弟が誕生したらきっといいお姉ちゃんになりそうです。
娘さんのおしゃべり上手は環境のおかげ?
――娘さんの言葉の成長が早いのは、毎日、小須田さんと奥さんが声がけをしているからでしょうか?
小須田 私たちは妻の実家で生活をしているので、妻の両親、祖父母とも一緒に生活をしています。近所には妻のきょうだいも住んでいるので、娘にとっていとこも近くにいる環境です。毎日、多くの大人に囲まれて生活をしているので、その分言葉の発達が早いのかもしれません。
――たまひよは「チーム育児」を応援していますが、小須田家では娘さんの育児のサポートは、家族が積極的にやってくれている状態ですね。
小須田 そうですね。妻の家族や親せきに日々助けてもらっているので僕が遠征で留守にしているときも安心です。これから、第2子の出産でしばらく妻が自宅を留守にするので義家族は心強い存在です。
――小須田さんは子ども好きだと聞いています。
小須田 もともと子どもは好きです。そしてわが子となると、もぅかわいすぎて。日々の練習や遠征があるのでそこが懸念点です(笑)
――もうすぐ2人の子どものパパですが、いまはどんな心境ですか?
小須田 自分が親から何不自由なく、自由にやりたいことをやらせてもらってきました。だから自分も子どもたちのために、子どもたち自身がやりたいことに挑戦できるような環境を整えてあげたいと思っています。
2026年のミラノ・コルティナパラリンピックでは金メダルをめざす
――子育て中、わが子とまわりの子を比べてしまう人もいるかもしれませんが、勝負の世界に身を置いている小須田さんは「比べること」をどんなふうにとらえていますか?
小須田 どうしても人間は他者と比較をしてしまいます。子育てならば、成長が早い遅い、成績がいい悪いなど比べてしまいます。「比べないで」と言うほうが無理でしょう。でも、「比べる」て優越をつけるという行為ほど無意味なことはないと僕は思っています。優劣をつけるのではなく、比べるという行為は自分の立ち位置を知ることだけのために使ってほしいです。
――これから自身の子どもたちにはどんなふうに成長してもらいたいですか?
小須田 その日1日の楽しかったことやうれしかったことを振り返ることも大事ですが、それよりもその日、失敗したことに目を向ける子になってほしいと考えています。失敗することは当たり前であって、なにも恥ずかしいことではないということを理解して、失敗を恐れず、どんどん挑戦できる子になってほしいです。
――現在は2026年のミラノ・コルティナの金メダルをめざしているとのことですが、意気込みを聞かせてください。
小須田 2025年3月の世界選手権で優勝できました。まわりの方々には喜んでもらえましたが、自分の中ではそこまで大きな喜びはありませんでした。なぜなら、北京パラリンピックが終わった段階から2026年のパラリンピックを第1目標にしているからです。やれることは目の前のことをひたすらこなし、積み上げていくしかないと思っています。パラリンピックで金メダルを獲得という自分の中で納得のいく結果を出せるよう、練習を重ねて頑張ります。
お話・写真提供/小須田潤太さん 取材協力/オープンハウスグループ 取材・文/安田ナナ、たまひよONLINE編集部
今年の7月に誕生する第2子の誕生を心待ちにしている小須田さん。娘さんの成長もとてもうれしそうに話してくれました。2026年3月6日から15日まで開催される「ミラノ・コルティナ冬季パラリンピック」で金メダルを獲得し、子どもたちの首にメダルをかける姿を楽しみにしています。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
小須田潤太さん(こすだじゅんた)
PROFILE
オープンハウスグループ所属のアスリート。1990年10月生まれ。埼玉県出身。21歳のとき交通事故で右足を切断したが、リハビリを経て陸上競技を始め、東京パラリンピックに出場。2022年の北京パラリンピックではスノーボードクロスで7位入賞した。2025年3月カナダ世界選手権バンクドスラロームで初優勝を飾る。2023年に第1子長女が誕生し、2025年の7月には第2子が誕生予定。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年4月の情報で、現在と異なる場合があります。