上司に妊娠報告したら「誰が?」、「出勤したなら仕事してね」の圧。働く母の職場でのモヤッと体験ありは約4割。リアルママボイス
「たまひよ」アプリユーザーに「職場へ妊娠報告をしたときや産休・育休明けにモヤッとした体験はありますか?」と質問。約4割が「ある」と、回答しました。浮き彫りになったのは「働く母への風当たりは会社によって違いすぎる」でした。共働きや夫婦問題に詳しいワーク・ライフコンサルタントの大畑愼護さんに伺いました。
モヤッと体験「ある」と「ない」が拮抗。過渡期にある働く母たちの声
厚労省の調査※によると、令和5年度の女性の育休取得率は約84%と年々増加。働きながら妊娠・出産・育児が当たり前になりつつある今、働く母を取り巻く状況を大調査すると、まだまだ厳しい現実が見えて聞きました。
Q.【働いている方に伺います】 職場へ妊娠報告をしたときや産休・育休明けの職場復帰後、周りの言動にモヤっとしたり悲しい出来事はありましたか?
ある 38.8%
ない 47%
分からない 11.9%
その他 2.2%
「ない」は47%、「ある」は38.8%と、微妙な数字です。それぞれのコメントを紹介します。
上司から「妊娠が1番大事な仕事」と配慮、デスクワークへ異動、などなど、嬉しかったエピソード
「いろいろな仕事を担当していました。(私の妊娠は)周りに迷惑をかけることになるのに、みんな祝福してくれました。すごく嬉しかったです」(ねるねり)
「つわりがひどかった時期、休憩室にソファを持ってきてくださった方がいて嬉しかったです」(みさ)
「安定期入ったタイミングで異動に。頻尿と腰痛を配慮して立ち仕事からデスクワークになり、重いものは持たないようにと配慮していただきました」(ちゃ)
「1人目の育休明け直ぐに2人目を妊娠。上司に謝りながら報告したら『おめでたい事だから謝ることじゃない。仕事の心配はしなくていいからちゃんと休んで』と。その後も職場全体でサポートしてくれたので本当にありがたかった」(めいこ)
「上司から『仕事よりも妊娠が1番大事な仕事』と、言われたときは驚きました」(みすず)
「上司が妊娠経過について、あまり聞いてこないことがありがたかったです。いい意味で放置され、プレッシャーにならず、今まで通り接してくれていると感じます」(りこたま)
「今まで話したことない方と妊娠や子どもについてお話する機会が増えて、意外と喋ってくれるのねーなど、交友関係が広がりました」(カズ)
「前の職場では妊娠に理解がなく、妊婦さんに直接文句を言う人がいたほど。その後、私は転職。今の職場で恐る恐る妊娠報告したら、みなさんとても喜んでくださって、産休に入る時も『待っているから絶対帰ってきてね!』と、快く送り出してくださいました。とても嬉しかったし、自分も人に優しくありたいと思いました」(いおりママ)
続いてモヤッと体験のエピソードです。“いおりママ”さんの体験のように、産休・育休に対する認識は、職場によって温度差がかなりあるようです。
なんか違うんだよな~、職場のトンチンカンな対応&発言
「仲が良かった男の先輩(既婚者・子なし)が『(妊娠を)早く教えて欲しかった、俺って信頼ないの?』と言ってきたことかな。信頼がないのではなく、初めての妊娠で、すごく慎重になっていただけだと伝えても理解してくれず。悲しい気分になりました」(はねこ)
「直属の上司に報告した時の一言目が、『誰が?』でした。人手不足が一番の心配のようです」(なーちゃん)
「初めての妊娠でした。上司への報告のタイミングが分からなかったので、相談がてら即報告したら『不妊治療している人もいるからもっと配慮するように。心拍わかって、もう少し大きくなってから発言しないとダメ』みたいなことを言われました」(あき)
「職場の男性からみんながいる前で『子どもは何人考えてるの?』と、質問されました。苦笑いで適当にスルーしたのにしつこく聞かれ、『続けて2人目(妊娠して)育休取ったら?』とまで言われたときは目が点に。そもそも簡単に計画した通りに子どもは授かれないの!」(ミオ)
「いきなりおなかを触られてびっくりしました。妊婦だから許される?と思っているのかな」(とも)
「24週で切迫早産となり、早めに産休に入ることになったら、周りから腫れ物扱い。私の部署には経産婦さんがいなかったせいか、ウォーターサーバーの水交換など力仕事を普通に私に振ってきました。他部署の経産婦の先輩たちが味方になってくれなかったら、退職も考えていました」(あいーだ)
「おなかがあまり出ないタイプだったので『楽したいから、妊娠したと嘘をついている』と、陰で言われていたそうです」(のん)
まだまだ理解されていない、しんどいエピソード
「上司に妊娠報告したらまずため息をつかれ、昇給がなくなりました」(さと)
「転職したばかりの頃に妊娠。職場の上司から『半年しか働けないやつは要らないから辞めろ』と言われましたが、無視して仕事を続けて今、産休です!」(カルメ)
「仕事はしなきゃいけない、でも子どもは熱を出す。なんとか引き継いだり努力はしているけれど、職場の育児経験者(男性)から『仕事はしてね』と、言われました」(Luka)
「ある女性社員から『子持ち様はなんでも優先されるから』と、言われてモヤっ。女性後輩が時短でバタバタ帰った時、『いいな~私も早くお家に帰りたいです~』と、言っていて、『家に帰っても寝るまで座る暇もないんだけど…』と心でつぶやきました」(もりもり)
「(経産婦だから)慣れているから大丈夫よね~、私の時は育休もなかったのよ~と、もっと頑張れと強要されている気分になりました」(なぁな)
「妊娠がわかってすぐ、職場に迷惑をかけたり負担が多くなる可能性もあるので、上司と同僚たちには報告しました。『この職場の人にだけ報告しておきます』と念を押したのに、上司が他部署の全然関わりのない人たちにまで言いふらしていてモヤっ。万が一のある時期なのに、なんでまったく関わりない人にまで知られなきゃいけないんだ」(だな)
「職場に妊娠報告をする前日、職員の1人には先に報告しました。翌日、その人が言いふらしており職場ではすでに知れ渡っていました。その人から『人手不足のなか更に(産休育休)かぁ…。(忙しくなるのが嫌なので)私、仕事辞めます』と、私を原因にして退職していきました。周りの方々は『気にしないで、元気な赤ちゃん産んでね』と、日々励ましてくれました。嬉しかったです」(あきほのマミィ)
「保育士をしています。つわりが落ち着いて仕事に復帰したら、ある社員から『出勤するからには、お仕事をしてくださいね』と言われました。確かに(力仕事ができないので)迷惑をかけますが、やりたくても自分の体と赤ちゃんのことを考えると…。本当にメンタル的にもしんどかったです。ただ、パートのおばちゃん世代の方々からは、自分の妊娠体験からのアドバイスをいただいたり、体のことを気にかけて座布団をくれたり、楽な椅子と交換してくれたり。気遣いに救われました」(のん)
「つわりが酷かったのですが、他に妊娠した社員が長期間休んでいたので、頑張って出勤していたら、周りから『(あなたは)大丈夫でしょっ』と。言い方がね…モヤッ」(ゆんゆん)
働く母を取り巻く環境は昭和に比べたらかなり進化していますが、まだまだ厳しく、しばらくは過渡期が続くように感じます。
育休取得の経験があり、東京都の「育業の普及促進に向けた啓発事業」選考委員、和歌山県特別職非常勤職員(子育て社員応援アドバイザー)でもある、ワーク・ライフコンサルタントの大畑愼護さんに聞きました。
「お前の代わりなんていくらでもいるんだからな」から「あなたしかいない」の時代へ
少子高齢化の日本。労働力のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代の高齢化が進み、2030年代をピークに人手不足がさらに深刻化すると言われています。
ある牛丼チェーン店が働き手不足で開業できなかったり、看護師不足で病棟を閉鎖せざるを得なかったり、身近なところでも見渡すと人手不足の波が来ていることに気づきます。
これまでの日本社会は余りある労働力をふるいにかけて、残業転勤なんのその、忠誠心をもった人材を残せばOKの「お前の代わりはいくらでもいるんだからな!」戦略の時代でしたが、今は違います。
20代~30代の育児と仕事の両立だけでなく、40代~60代では親の介護との両立が問題視されており、誰もが時間制約を持つようになっているのです。
今後はチームでパスを回しながら仕事をして成果を出す働き方が企業の必勝法であり、実はすでに「あなたしかいない」時代に突入しています。
「いやな声かけだな…」と思ったら、セルフトークを見直すタイミングかも
「子持ち様って思われているのかな…」
「また迷惑かけてるかも…」
「なんて失礼なことを言うんだろう…」
——こんなふうに、頭の中でふっと浮かぶ“つぶやき”が、私たちのセルフトークです。
もちろん、本当に嫌なことをしてやろうという悪の化身のような方もいるかもしれませんが(笑) 相手の言動にモヤっとしてしまうときほど、自分の頭の中にある「思い込み」が作用していることがあります。
「相手の真意は確認していない」「私がそう思い込んだかけかもしれない」とセルフトークに気づけるようになると、肩の力がぬけて周囲との関係も楽になることがあります。
「なんか違う」は、実は“応援したい”の裏返し?——トンチンカンな対応のウラ側を読み解く
「誰が妊娠したの?」
「俺って信頼ないの?」
「もう少し大きくなってから発言しないとダメ」
——言われた方にとっては、一生の記憶に残るほどモヤモヤしてしまう言葉です。
でも、少しだけ冷静になると、これらの言葉の裏側には“応援したいけど何をしたらいいかわからない気持ち”が隠れていることがあります。
たとえば、「誰が?」という返答。これは一見、冷淡にも聞こえますが、「妊娠=おなかが大きい」という思い込みから、スリムな妊婦さんを認識できなかっただけ、というケースも。つまり、知識不足や経験不足から来る戸惑いだったりします。
「信頼されていないの?」という言葉は、裏を返せば「自分は信頼されていたいのになんで!」という自己肯定感の低さだったり、「サポートしてあげたいのになんで!」という不器用な気持ちを、表現しているのかもしてません。
「もう少し大きくなってから発言しないとダメ」という言葉は、第一声は「おめでとう!」であってほしい気持ちもありますが、医療の現場では初期流産の可能性や望んでいたことなのか否か、事実がわかるまで「おめでとう」と言葉をかけないケースがあります。
相手の発言の背景がわかれば、心の中で応援してくれている気持ちと、表面からでる言葉のどちらも受けとめることができるかもしれませんね。
“トンチンカン”は、時代変化へのアップデートの途中かも?
昭和世代の価値観で育った方々が、今、急速に変化する職場文化に適応しようと奮闘している場面もあります。
大切なのは、「悪気があるのか?」「応援したいのか?」という文脈を、自分の中でどう翻訳するかです。まさに「セルフトーク」がカギになります。言われたことにモヤっとしたら、「もしかしてこの人、不器用だけど応援したいのかも?」と一呼吸置いてみる。これは自分を守るだけでなく、関係性を壊さないためのスキルでもあります。
人は休みます。だって、人だもの、大切な生活があるんだもの
妊娠、出産、不妊治療、介護、持病、趣味や学びの時間
——全ての人に等しく、大切な「ライフ」があります。
不妊治療においても、注射の副作用で吐き気があるなか周囲には黙って働いていたり、いつ医師に呼ばれるかわからない状況でスケジュール調整に追われていたりします。
さらに、「親の介護をしているけど、会社には伝えていない」という“隠れ介護”も今、大きな社会課題になっています。
「言ったらキャリアに影響するかも」と思って黙って踏ん張り、背中に矢傷を負いながら働いている人が、実はすぐ隣にいるかもしれません。
コロナ禍で「人は休むもの」と日本社会全体で学びました。
これからの職場において、子どもの発熱も、親の病院の付き添いも、家族であるペットの介護も、全てが“本人にとっては緊急事態のライフ”として取り扱っていけるような社会を目指したいですね。
大畑愼護(おおはた しんご)
PROFILE)
前職では全国を駆け巡る激務をこなし、個人及びチームの業務内容などを見直し・改善して残業時間半減を実現します。その経験を生かして生産性の向上を提言するワーク・ライフバランス社へ転職。コンサルタントとして企業の講演・研修を担当し、東京都「育業の普及促進に向けた啓発事業」選考委員、和歌山県特別職非常勤職員(子育て社員応援アドバイザー)で、メディアにも多数出演。プライベートでは3児の父。前職では激務のせいで一家離散の一歩手前でしたが、こちらも見事に立て直し、第3子誕生の際には1年間の育休をとって一家5人で南国フィジーへ育休移住を決行しました。プライベートではトライアスロンに挑戦するなど、既成概念にとらわれず仕事・家庭・自分の時間の充実を提案する型破りイクメンパパです。
(取材・文/和兎 尊美、たまひよONLINE編集部)
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2025年1月、3月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数134人)
※記事の内容は2025年5月の情報で、現在と異なる場合があります。