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子どもの50人に1人が弱視。早期発見して、就学までに視力を育てることの大切さとは?~診察室からの報告~【小児眼科医】

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

10月10日は、目の愛護デーです。砧ゆり眼科医院 院長の中山百合先生は、マンガ『ミミズク小児眼科物語』の原作・監修者です。マンガで、子どもの目の病気や治療についてわかりやすく解説し、病気の啓発に努めています。
中山先生に、現代の子どもの目の疾患で注意をしなくてはいけないことについて聞きました。今回は50人に1人といわれる子どもの「弱視」の事例や治療、早期発見のポイントについてです。

視力は、6~8歳ごろにほぼ完成

3歳児健診の目の検査で眼科での精密検査を指示された女の子が小児眼科を受診した際の、医師からの説明。(『ミミズク小児眼科物語第1話』より)

弱視の子どもは50人に1人と言われています。

――子どもの弱視ついて教えてください。

中山先生(以下敬称略) 弱視とは、近視や遠視とは異なり、0~6歳ぐらいまでの視覚が発達する過程で、何らかの原因によって視力の発達が妨げられ、眼鏡をしても視力1.0の視標が見えない状態を言います。
子どもの視力は、1歳で0.2ぐらい、2歳で0.5ぐらい、3~4歳で0.6~0.9ぐらい、5歳で1.0ぐらいになり、6~8歳ごろにほぼ完成します。
しかし弱視は、何らかの原因で視力が発達しないのです。そのため弱視は早期発見・治療をして、視力を育てていくことが必要です。就学までには治療を完了していることが大切です。

――何らかの原因とは、たとえばどのようなことでしょうか。

中山 弱視には、いくつか原因がありますが、屈折異常による弱視は、強い遠視や乱視によって、くっきり見ることができずに、視力の発達が妨げられます。

また斜視弱視は、視線がずれていて右目と左目が同時に別のものを見ることで脳が混乱。脳は混乱を避けるために、黒目がずれているほうの視力発達を妨げることで起きます。

3歳児健診で、強い遠視が見つかり弱視が判明

「不同視弱視」と診断された女の子が眼鏡を作り、アイパッチでトレーニングしている様子。(『ミミズク小児眼科物語第3話』より)

中山先生に、子どもの弱視の発見と治療について、実際にあった症例を聞きました。

――弱視の子どもは、50人に1人と言われていて、とても多いように思いますが、先生の眼科でも弱視と診断される子どもは多いのでしょうか。

中山 なかには3歳児健診で再検査と言われて、受診する子どももいます。当院を受診した、あいちゃんもその1人です。

あいちゃん(仮名・現在10歳)は、3歳児健診で強い遠視が見つかり、当院を受診しました。検査をすると右は0.4、左は0.1でした。
3~4歳の視力は0.6~0.9です。あいちゃんは、左目だけ視力の育ちが遅れている不同視弱視(ふどうしじゃくし)でした。

あいちゃんは、すぐに眼鏡を作って、毎日かけて、アイパッチで視力がいいほうの目を隠して、視力不良の目を使う訓練を続けることで、3カ月後には、眼鏡をかけると右が0.8、左が0.2に。
10歳の現在は、眼鏡をかけると左右の視力は1.2ずつです。

あいちゃんは、アイパッチを嫌がったようです。アイパッチの装着は、家庭で毎日2時間ぐらい行うのがいいのですが、ママが苦労していました。でも8歳まで、頑張って訓練を続けました。

あいちゃんの弟は、生後6カ月で強い遠視とわかる

3歳児健診で、スポットビジョンスクリーナーによる屈折検査を受けている様子。 (『ミミズク小児眼科物語第1話』より)

あいちゃんには弟がいます。あいちゃんの弟は、生後6カ月で強い遠視が判明しました。

――子どもの弱視は、家庭ではわからないのでしょうか。

中山 たとえば保育園のお迎えに行くと、遠くからでもママ・パパのことがわかったり、「〇〇取って」と言うと取ったりするので、ママ・パパは気づきにくいと思います。とくにあいちゃんのような不同視弱視だと、片目は正常に視力が育っているので、より気づきにくいでしょう。そのため3歳児健診は、必ず受けてください。

あいちゃんには弟もいて、弟は生後6カ月のとき、強い遠視で視力が育っていないことがわかったんです。
あいちゃんが経過観察で受診したとき、ママに「念のため、下の子も診てもらえますか?」と言われて、スポットビジョンスクリーナーという専用の機器を用いて検査しました。0歳なので視力検査はできませんが、強い遠視があることがわかりました。

強い遠視や乱視は、遺伝の影響がかかわることもあります。きょうだいやママ・パパに心当たりがある場合は、3歳児健診を待たずに、小児眼科を受診してほしいと思います。

――3歳児健診の前に、弱視はわかるのでしょうか。

中山 スポットビジョンスクリーナーを用いて、視覚スクリーニング検査ができる小児科も増えています。
小児科で1歳6カ月健診を受けたときに、スポットビジョンスクリーナーで検査を受けて、再検査となり、当院を受診した子どももいます。
スポットビジョンスクリーナーは、生後6カ月から検査ができるので、気になるときはかかりつけの小児科で相談するのも一案です。

眼鏡をかけることで、遊びにも変化が

小児眼科を受診後、自分に合った眼鏡を作り、眼鏡をかけて生活をしながら再診したときの様子。(『ミミズク小児眼科物語第1話』より)

あいちゃんの弟は、生後7カ月から眼鏡をかけて治療がスタート。視力が育つようになりました。

――あいちゃんの弟は、生後6カ月で強い遠視と診断されたとのことですが、治療について教えてください。

中山 弟は、生後7カ月から眼鏡を毎日かけるようになり、4歳になった現在は、眼鏡をかけて左右の視力は1.2ずつです。

――乳幼児は、眼鏡をかけることを嫌がらないのでしょうか。

中山 たとえば乳児だと、寝返りやはいはいをしてもずれにくいバンドタイプの眼鏡があります。
また幼児になると、自分が好きなデザインの眼鏡を作ることで、積極的にかけてくれるようになることが多いです。眼鏡をすると、これまでぼやけていた世界がはっきり見えるようになるので、子どもでも嫌がらずに眼鏡をかけてくれると思います。

眼鏡をかけてはっきり見えるようになると、たとえば絵本や図鑑をじっくり見るようになったり、手先を使う遊びを好んでするようになるなど、遊び方に変化が見られることも多いです。

また8歳以下の小児治療用眼鏡は保険適用されるので、経済的負担は軽減できます。

弱視は、早期発見、早期治療が大切なので、3歳児健診は必ず受けてほしいと思います。

お話・監修/中山百合先生 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

子どもの視力や正しく見えているかは、家庭ではわかりにくいそうです。中山先生は「忙しいなどの理由で3歳児健診を受けない家庭もあるようですが、弱視の治療にはタイムリミットがあり、就学前までには治療を終わらせていることが大切です。そのため3歳児健診は必ず受けてください」と言います。

中山百合先生(なかやまゆり)

PROFILE
砧ゆり眼科医院院長。信州大学医学部卒。横浜市立大学医学部附属病院眼科、神奈川県立こども医療センター眼科、国立成育医療研究センター眼科を経て、2014年砧ゆり眼科医院を開院。子どもの目の病気の早期発見・早期治療の啓発のために、マンガ『ミミズク小児眼科物語』を制作。

●記事の内容は2025年10月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

『ミミズク小児眼科物語』

子どもの目の病気や治療について、マンガでわかりやすく解説。「第1話 奈々子ちゃんのメガネ 屈折異常弱視」「第2話 たいちゃんのまっすぐな目 調節性内斜視」などシリーズ化していて、amazon Kindleで現在第10話まで無料公開中。2025年秋からは、「第11話 逆さ睫毛」、「第12話 斜頸を伴う斜視」、「第13話 スマホと斜視:スマホ内斜視」を連載予定。中山百合原作、迦楼羅 史作画

ミミズク小児眼科物語(全10巻)

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