妻の死により、ある日突然、生後8カ月の双子のシングルファザーに。育児と仕事を両立する日々で気づいた、周囲のあたたかさ【体験談】
2023年11月、生後8カ月の双子を残し、しなみあパパさんの妻は急逝しました。シングルファザーとなったしなみあパパさんは、周囲の人たちの助けを借り子育てに奮闘しています。育児と仕事の両立、子どもたちの成長の様子について聞きました。全2回のインタビューの後編です。
突然1人で双子の世話をすることに
――2023年11月8日の朝、しなみあパパさんの奥様は突然帰らぬ人に・・・。しなみあパパさんは、生後8カ月の双子の娘さんたちを育てることになったとのことです。1人で子育てをすることになったときの様子を教えてください。
しなみあパパさん(以下敬称略) 最初のころが一番大変でした。双子だったこともあり、妻は出産後半年くらい里帰りしていたんです。
妻がいなくなったときは、僕がしなとみあと一緒に暮らし始めてまだ2カ月くらいのタイミングで・・・。双子はあんまり僕になついていなかったと思います。
急にママに会えなくなって2人ともすごく泣いていたし、僕も接し方がわからない部分もありました。ちょうど2人は離乳食を食べていたタイミングで。「離乳食ってどうやって作るんだろう」というところからスタートでした。わからないことばかりで途方にくれる毎日だったんです。
「妻はこんなにいろんなことをしてくれていたんだなあ」と感じることも多かったです。
――生活がガラリと変化したと思います。
しなみあパパ ただ、当時はがむしゃらに過ごしていて、あんまり記憶がありません。むしろ最近のほうが生活に慣れてきた分、しんどさを感じるように思います。それだけ余裕が生まれてきたということかもしれません。
現在、しなとみあは2歳半になりました。子育てって、子どもが成長したら楽になるわけではないんだなと痛感しています。
赤ちゃんのころはおむつ替えや離乳食づくりでバタバタしていました。歩き始めると、好きなところに行ってしまう大変さがあります。今、2歳を過ぎてイヤイヤ期を迎え、主張が激しくなったり、2人でけんかをしたりするようになりました。そのときどきで大変さの形が変わってくるんだなと感じます。
理解ある会社のおかげで保育園に通うまでの5カ月間、休めることに
――仕事と子育ての両立はどうしているのでしょうか?
しなみあパパ 2024年4月から保育園に入れました。2023年11月に妻が亡くなり、保育園に入園するまでの約5カ月間は、僕が1人で自宅保育をしていました。とてもありがたいことに、会社が子育てに対してすごく理解があるんです。ずっと仕事をお休みさせてもらえました。
会社の代表には「子どもは小学校に上がるくらいまでは熱もよく出すし、目が離せないもの。子育てを優先できるよう、ときには出社しなくていい働き方を一緒に模索しよう」と言ってもらえました。
現在も、子どもたちが体調を崩したときは、休ませてもらっています。
会社に理解があるからこそ、仕事と子育ての両立ができているのかもしれません。
――会社ではどんな仕事をしているのでしょうか?
しなみあパパ 会社は農業を営んでいます。1月末から5月まではいちごを育て、いちご狩りをメインに行っています。夏は水なすを育てています。それ以外の季節は造園業に携わっています。
もともと僕は営業職で取引先に行く仕事をしていました。でも、しなとみあを1人で育てることになり、子育てと両立するため、事務の仕事に異動させてもらうことになりました。自宅でパソコンがあればできるので、状況によってはリモートワークをさせてもらっています。
周囲のサポートにより仕事と子育てを両立
――現在の1日のスケジュールを教えてください。
しなみあパパ 月曜日から土曜日まで仕事です。仕事の日は6時半くらいに起床して自分の身じたくをしてから子どもたちを起こします。ごはんを食べさせてから8時前くらいに保育園に送ります。
僕は9時前くらいに出社して、仕事をして18時半くらいに保育園に迎えに行きます。家に到着するのが19時前後。少し遊んで食事、入浴をして21時くらいには寝かしつけをするのですが、なかなか寝ない・・・という生活をしています。その後、家事や飼っている2匹の犬の世話をしています。1日がめまぐるしく、あっという間に過ぎていきます。
――家事はどうしていますか?
しなみあパパ もともと1人暮らしをしていたので、ひと通りはできます。でも料理は妻が亡くなってから始めたので苦戦しました。友人のお母さんのなかにSNSで料理のレシピを公開している人がいるんです。その人に教えてもらったり、YouTubeで作り方を調べたりしています。わが家の隣に住んでいる方もおすそわけをしてくれることもあって。周囲の人たちに本当に助けられています。
妻の実家もサポートしてくれています。用事があるときなど、子どもたちを預かってくれています。
子育てはどんな形でも大変で、尊いもの
――1人で双子の子育てをすることになり、大変なことも多いと思います。
しなみあパパ 「シングルファザーだから」「双子だから」というわけではなく、子育てはみんなそれぞれ大変さがあると感じています。だから、自分だけが特別大変だとは感じたことがないです。
もちろん、双子だと2人分のお世話が必要だし、けんかをすることもあります。一方で僕がずっと相手をしなくても、子どもたちだけで遊んでいることも多いんです。だから手がかからない部分もあります。
僕は、双子を1人で育てている自分の状況しか知りません。だから、ほかの人がどんな様子がわからないんです。みんなそれぞれ子育ては大変じゃないかなと思います。
――シングルファザーとして双子を育てるなかで、支援がたりないと感じる部分はありますか?
しなみあパパ 周囲の人が本当に支えてくれています。環境的にはとても恵まれていると思うので、今のところはとくにたりないものなどは感じていません。ただこれは、僕が本当にまわりの人にサポートしてもらっているおかげだとも感じています。もし仕事も育児も家事もすべて1人で行うことになり、さらに職場にも理解がないとなると、なんらかのサポートが必要だったかもしれないなとも思います。
子どもたちには「ママはお空で見守ってくれているよ」と伝える
――しなちゃんとみあちゃんはそれぞれどんな性格ですか?
しなみあパパ 双子とはいえ性格はまったく違うと感じます。長女のしなはおっとりとしていて慎重派です。それに対して二女のみあは、怖いもの知らずなタイプ。なんでもみあが積極的に挑戦して、それを見ながらしながおそるおそる始める感じです。
けんかをしても、みあに言い負かされてしなが泣くというのがいつものパターンです。
――赤ちゃんのころの発達はいかがでしたか?
しなみあパパ 平均的な発達だったと思います。1歳くらいのときにしなが歩き始め、その後みあが続きました。
おしゃべりを始めたのも同じくらいで、最初に話し始めたのは「ママ」だったんです。
――しなちゃんとみあちゃんにはママのことをどのように伝えていますか?
しなみあパパ 「ママは2人のことをお空で見守ってくれているよ」と伝えています。この先も、事実を伝えていこうと思っています。だから「ここにはいないけれど、本当はどこかにいるんだよ」みたいな伝え方はいっさいしていません。
2人はまだ2歳半です。保育園でパパ、ママという言葉を習ってきたり、絵本を見たりして「パパとママという存在」については学びつつあるところです。ただ、なぜうちにはママがいないのかは理解していないし、死の概念についてもわかっていません。
いずれ「どうして私たちにはママがいないんだろう」と疑問に思うときがあるかもしれません。妻が亡くなったとき、2人はまだ生後8カ月でした。おそらくはママのことを覚えていないでしょう。
本人たちがそのことに気づいたときも、きちんと向き合ってあげられたら・・・と考えています。
月命日には、2人は妻の写真に花をたむけ、手を合わせるのが習慣になっています。
――実際に1人で子どもを育てることになり、どのように感じていますか?
しなみあパパ シングルで子どもを育てるまでには、いろんな理由があると思います。僕みたいに死別した人もいれば、夫婦が別々の人生を歩むことになり、離婚した人もいるでしょう。
「1人で子どもを育てられるだろうか」と不安になる場合も少なくないと思うんです。でも、僕は周囲の人に励まされているし、SNSで発信してもたくさんの人から応援の声をいただきました。それが心の支えになっています。考え込まずに、いろんな人たちに助けてもらいながら、子どもを育てていけたらと感じています。
大変な毎日ですが、子どもたちの笑顔を見ていると、エネルギーがわいてきます。しなとみあには、元気に成長してほしいと願っています。
お話・写真提供/しなみあパパ 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部
職場や周囲の人たちのサポートを得て、しなみあパパさんは仕事と子育ての両立ができているそう。お空の上にいるママに見守ってもらい、周囲のあたたかさやパパの愛情を感じながら、しなちゃんとみあちゃんも元気に成長していくに違いありません。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
しなみあパパさん
2023年、双子のしなちゃんとみあちゃんを授かるも、同年11月8日に妻が突然亡くなってしまう。シングルファザーとして子育てする様子をSNSで発信している。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。