「子育ては愛情と栄養があれば大丈夫」と話す、シングルファザーの池田57CRAZY(完熟フレッシュ)。娘レイラは20歳に
1人娘の池田レイラさんとお笑いコンビ「完熟フレッシュ」として活躍中の池田57CRAZYさん。「生まれてくる家、間違えたー」というレイラさんの決めフレーズが印象的です。池田57CRAZYさんは、レイラさんが9歳のときに妻と離婚。そこからシングルファザーとして毎日奮闘してきました。現在20歳になったレイラさんとの生活は、今までどんな様子だったのでしょうか? お笑いをめざしたきっかけから、レイラさんとの暮らしについて聞きました。全2回インタビューの前編です。
芸人をめざすきっかけをくれたのは、小学校からの友人
――自身の経験を書き下ろした、漫画『親子漫才!』を出版しました。今の率直な気持ちを聞かせてください。
池田57CRAZYさん(以下敬称略、57) 僕は過去を振り返らないタイプですが、いろいろと記憶をたどるきっかけになりました。レイラとの思い出や、過去のおもしろいエピソードに触れるきっかけにもなりました。今年50歳になるので、自分がここまで生きた証を残せたようでうれしいです。
――レイラさんの誕生から「完熟フレッシュ」ができたきっかけにも触れていますが、池田57CRAZYさんの名前の由来についても聞かせてください。
57 ロックを題材にした「ロックンロールコメディーショー」というコンビを組んでいたときに決めた名前です。本当は「池田CRAZY」という名前にしたかったのですが相方に当時流行っていたTRFさんの「CRAZY GONNA CRAZY」という曲の「GONNA」の部分を「57」にしたら椎名林檎ふうでロックじゃん!と言いくるめられ(笑)、「池田57CRAZY」にしました。
――お笑いをめざしたのはいつごろからで、どんなきっかけがありましたか?
57 子どものころからひょうきんな性格ではありましたが、お笑い芸人をめざしていたわけではありません。高校生になったときに仲のいい友人からお笑いをやらないか? と誘われたのですが、バンドに夢中だったので断っていました。高校を卒業してからもその友人は根気よく誘ってくれていたので、僕もやる気になりました。そこで、僕は大阪から友人は名古屋からお金を貯めて2人で東京に行こうと話していました。しかし、その友人は就いた仕事がおもしろくなってきたのでお笑いを断念することになってしまいました。このまま1人で東京に行くか、自分も就職するか迷いましたが、いったん芸人をめざすと決めたんだから1人になっても東京でやってやる!という気持ちになり、上京しました。
初めてレイラを見たときの感想は「宇宙人みたい」
――上京してからはどんな生活でしたか?
57 上京してからはお笑い養成所に入り、コンビを組みました。とはいえ、このままお笑いを続けるか迷っていました。そんなときに初めての舞台に立つことになったわけですが、そこで死ぬほどすべってしまいました。それをきっかけに辞めてもよかったのですが、「このままでは嫌だ」とすべったことが原動力となり、本格的にお笑いを頑張ることにしました。
――すべったことがきっかけになったわけですね。
57 でもその数カ月後、今度は自分でも驚くほど舞台でウケました。「ウケるまで続ける」と思っていた矢先に大きな笑いを取ることができたので、ここで踏ん切りをつけてもよかったのかもしれません。でも、「もっとウケたい!」、「もっとお客さんに笑ってもらいたい」と芸人という仕事が楽しくなっていき、“お笑いのワナ”にどんどんハマっていきました(笑)
――芸人として活動をしながら結婚、そして2005年の3月にレイラさんが誕生しました。初めてレイラさんを見たときはどんな気持ちでしたか?
57 レイラが生まれた日はバイト中だったので、立ち会うことができませんでした。携帯に生まれてすぐのレイラの写真を送ってもらいました。初めて見たときは「なんか赤黒くて宇宙人みたいだな」という印象でした。自分の中で赤ちゃんは白くてフワフワしたイメージだったのでその違いに驚いてしまいました。のちにレイラも白くてふっくらとしたかわいい赤ちゃんになりましたが、男の自分は産んでいないので実感がわかず、誕生した直後のわが子の姿にただただびっくりしてしまいました。
――初めて抱っこしたときの印象も聞かせてください。
57 翌日、病院に行ってレイラを初めて抱っこしました。とにかく小さくてあまりにもかわいかったのでレイラの顔をなめてしまいました。すると、僕がなめたところがみるみるうちに赤くかぶれてしまい、看護師長さんに大目玉を食らったことを覚えています。
愛想がよすぎるレイラさんに、知らない人がおこづかいをくれることも!
――レイラさんの名前はどんなふうにして決めましたか?
57 僕が無類のロック好きなので、男の子だったら「ジョニー」という名前にしたかったんです(笑)。でも女の子だったのでかなり悩みました。椎名林檎さんやシーナ&ザ・ロケッツから“しいな”という名も候補にありましたが、エリック・クラプトンのロックバンド「デレク・アンド・ザ・ドミノス」のアルバム『いとしのレイラ』から“レイラ”もロックでかっこいいなと考え、家族に提案しました。最終的にはレイラに決定しました。
――1、2歳のころのレイラさんは、どんなお子さんでしたか?
57 レイラは人見知りがなく、とにかく人懐っこい子でした。電車やバスに乗ってもまわりの人にニコニコと笑顔を振りまくので知らないおじいちゃんやおばあちゃんから「これでおいしいものでも食べてね」と、おこづかいをもらうこともありました。愛想がよすぎて親のほうが驚くほどでした。
――「育てやすい子」だったのですね。
57 レイラしか育てたことがないので比べられませんが、育てやすい子だったとは思います。でも、体が弱かったのですぐに風邪をひいてしまい、肺炎で入院することもありました。アトピーや動物アレルギーもあるので、小さいころからよく病院のお世話になっていました。
1人親でも「栄養」と「愛情」があれば大丈夫!
――レイラさんを育てていくうちに父親の自覚も芽生えていったかと思いますが、そこから離婚とは?
57 レイラが誕生後も芸人を続けながらバイト生活でした。元妻は保育士だったので子育ては任せっきりでした。彼女とは18年間一緒にいましたが、しだいに価値観や気持ちのずれが出てきてしまい、離婚することになりました。レイラは僕が引き取ることになり、シングルファザーになりました。
――シングルファザーになってからすぐに実家のお父さんが心配になって東京に来てくれたそうですね。
57 そうなんです。僕の父が心配して上京し、レイラとの今後の生活について3つの提案をしてくれました。
「僕とレイラが実家のある山口県で暮らす」、「レイラだけ中学を卒業するまで山口県で暮らす」、そして「父が上京し、3人での東京暮らし」、この3択でした。でも、レイラが選んだ道は「東京でパパと2人で暮らす」でした。この選択には驚きました。僕と2人の生活を考えてくれたことはうれしかったです。そして、「1人で立派に育ててみせる」と気合いが入りました
――シングルファザーとしての生活はどうでしたか?
57 芸人として売れるまでもっと頑張りたいという気持ちはありましたが、自分の気持ちばかり優先もできないので2013年4月にコンビを解散し、お笑い芸人を引退しました。トレーニングジムに就職し、会社員となり、そこからは仕事をしながら家事と育児に奮闘しました。両親やまわりの人からは無理だと言われましたが、レイラとの生活を守るために必死でした。その結果、過労で倒れてしまい、1カ月ほど入院することになってしまいました。
――入院中はどんなことを考えていましたか?
57 高熱が続く中、レイラのことや仕事のことが気になってしかたがなかったです。また、辞めてしまったお笑いのことも気になるようになり、自分の中でお笑いへの熱が冷めていないことに気づきました。退院後はまた元の生活に戻ったものの、ここからはレイラに助けてもらいながら、自分1人で背負わないようにして生活を続けていきました。
――57さんがシングルファザーとしての生活を始めたばかりのころ、まわりに同じような生活をしている人はいましたか?
57 シングルマザーの人は多くいましたが、シングルファザーはなかなかいませんでした。シングルファザーに対しての特別な支援はありませんでしたが、最近は1人親家庭を支援する自治体は多いと思います。僕のところにもSNSを通してシングルファザーの方から相談が来ます。
そんなとき僕は、「栄養と愛情があれば大丈夫」、「『子育ては最高の暇つぶし』という感覚が大事」と話しています。子育ては本当に大変です。でも、人生において最高の暇つぶしくらいの気楽な感覚も大事だと思います。おなかいっぱいに食べさせてあげることと、ウザイと思われるほど愛情をかけてあげることさえ貫けば、子どもはまっすぐに育っていくと思っています。
お話・写真提供/池田57CRAZYさん 取材・文/安田ナナ、たまひよONLINE編集部
1人娘のレイラさんをシングルファザーとして育ててきた話を聞かせてくれた池田57CRAZYさん。現在レイラさんは成人し、巣立っています。池田57CRAZYさんは、「暇つぶしがなくなっちゃって逆に寂しいっす」と話してくれました。レイラさんとの二人三脚のエピソードや「完熟フレッシュ」誕生の秘話は後編へ。
池田 57CRAZYさん(いけだ ごなくれいじー)
PROFILE
1975年生まれ 山口県出身。親娘お笑いコンビ「完熟フレッシュ」のメンバー。
スクールJCA10期生出身。お笑いコンビ「ジャンボジェット」で活動を開始する。解散後は、「ロックンロールコメディーショー」のメンバーとして活動。2016年からは娘の池田レイラと「完熟フレッシュ」を結成し、活躍している。2025年に初のコミックエッセイ『親子漫才!』(KADOKAWA)を発売。
●記事の内容は2025年7月の情報で、現在と異なる場合があります。
『親子漫才!』
シングルファザーとしての奮闘と、娘とお笑いコンビを結成してからの活躍が漫画でまとめられている。父と娘の強い絆が感じられる1冊。池田57CRAZY著・ぽぽこ漫画/1320円(KADOKAWA)