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乳児用液体ミルクが、日本で販売されないワケ

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「乳児用液体ミルク」を知っていますか?
日本には母乳の代わりとして、乳児用の粉やキューブタイプのミルクがありますが、海外には液体タイプのミルクがあります。液体タイプはお湯を入れて冷ますという手間がかからず、容器を開けたらすぐに飲ませることができてとっても便利。
東日本大震災や熊本地震のときに、救援物資としてフィンランドから乳児用液体ミルクが届けられ、話題になったことも。常温で5カ月から1年程度保存できるため、災害時の備蓄にも最適。いざというとき赤ちゃんを救ってくれる乳児用液体ミルクですが、実は日本国内では販売されていません。
どうして販売されていないのか?その理由を、乳児用液体ミルクプロジェクト代表の末永恵理さんに聞きました。

日本には乳児液体ミルクの規格そのものがない!

「日本で乳児用液体ミルクを手に入れるには、個人輸入という方法しかありません。ネットショップなどで購入することは可能ですが、価格が現地価格の4倍程度と高額です。手軽に購入できる価格ではありません。

では、『輸入品を販売しては?』と思いますが、それも難しいのが現状。そもそも乳児用液体ミルクには、食品衛生法に基づく規格そのものがありません。だから、輸入品を販売しようにも『乳児用』などと表示することができないのです。『乳飲料』とすることは可能ですが、どんな飲み物なのかきちんと消費者に伝えられません。

一方、乳児用粉ミルクは、食品衛生法の乳等省令によって規定されており、成分などの規格が細かく決められています。規格の制改定は厚生労働省が行っており、厚生労働省の許可がないと製造できません。また、『特別用途食品』に指定されていて、販売には消費者庁の許可も必要です。赤ちゃんが飲むものなので、高い安全性が求められます。そのため、厳しい基準をクリアしないと製造・販売ができないしくみになっています。

乳児用液体ミルクを国内で製造・販売するには、粉ミルク同様に高い安全性が求められます。安全性を確かめるには時間がかかりますし、規格基準の策定やメーカーの製造ラインの確保などを考えると、実現までにはかなりの時間がかかるでしょう。それならば、まずは輸入品を『乳児用』として販売可能にすることから、法整備を始めるのが現実的だと私は考えています。」

熊本地震を機に、日本での導入が検討され始めています

「東日本大震災と熊本地震の経験から、今年5月には自民党で乳児用液体ミルクの勉強会が行われました。また、7月の都知事選では、小池百合子さんが『災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及を図る』という公約を掲げました。

内閣府にも動きがありました。10月7日に行われた『男女共同参画会議』で、災害のときに役立つだけでなく、育児支援にもつながることから、『乳児用液体ミルクが有効』という意見が続出。男女共同参画担当相の加藤大臣から『乳児用液体ミルクの問題提起は、しっかり受けとめる』という内容の発言があり、『男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会』で、乳児用液体ミルクの普及が検討されることになりました。11月14日に開かれる『専門調査会』に、私も参加します。

乳児用液体ミルクの普及は、これまでは厚生労働省と粉ミルクメーカーの間でこう着状態だった問題ですが、国民みんなで議論することが大切だと感じています。乳児用液体ミルクの普及には、収益は得られるか、日本の温度・湿度で安全性は保たれるかなど、いろいろ越えなければならないハードルがあります。けれど、乳児用液体ミルクが手に入りやすくなることで、ママの安心につながると信じています。」

近い将来、乳児用液体ミルクが国内で手に入るようになるかもしれません。それには、ママ・パパの声を国に届けることが大切です。

末永さんは2014年11月から国内での販売許可を求め、オンラインでの署名活動を開始。出産後に母乳が思うように出ず、粉ミルクの調乳にストレスを感じた経験から、この活動を始めたそうです。最初は軽い気持ちで始めた署名活動ですが、2016年10月時点で署名は4万を超えています。(署名はこちらから)

平常時であれば、赤ちゃんにとって最良の栄養である母乳を飲ませることができます。けれど、災害時はママが大きなストレスを受けて母乳が出なくなったり、きれいな水やお湯が手に入らなかったりして、赤ちゃんが母乳もミルクも飲めない状況になることがあります。いざというときのためにも、乳児用液体ミルクがいち早く普及することを切に願います。(取材・文/ひよこクラブ編集部)


Profile
末永恵理さん●乳児用液体ミルクプロジェクト代表。日本での乳児用液体ミルク販売許可を求め、2014年11月にオンラインでの署名活動を開始。15年に市民団体・乳児用液体ミルクプロジェクトを立ち上げ、研究をスタート。女の子のママ。
乳児用液体ミルクプロジェクト
https://www.facebook.com/milkformulajapan/

※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。

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