熊本地震から1年を超えて。震災を体験したママが、今伝えたいこと
※写真は熊本地震により大きな被害を受けた熊本城。今は天守閣には足場が組まれ、復旧・復元工事が進められています(2017年6月14日現在)。
巨大地震の可能性は日本各地で予想され続けていますが、「わが身に起きるかも」と心構えをしているママはどれくらいいるのでしょうか?
熊本地震から約1年がたった2017年6月中旬、ひよこクラブ編集部は熊本地震を体験したママたちを訪ね、現地取材を行いました。
熊本地震とはどんな地震だったか
熊本地震は、2016年4月に起こりました。前震は、14日21時26分M6.5、本震は16日1時25分M7.3。震源に近い益城町・西原町では震度7、熊本市では震度6強を観測。約19万棟の住居が全壊・半壊等の被害を受け、多くの人々が避難生活を体験しました。
そんな中、赤ちゃんがいるママはどのような被災体験をしたのでしょうか。震源地に近い益城町、そして熊本市で被災した2組のご家族の体験を紹介します。
【リポート1】益城町で被災したKママ。3人の子どもと避難生活

※写真は益城町で多く見られる道路の様子。通行止めや、手つかずのがけ崩れも(2017年6月15日現在)。
震源に近い益城町は、住家のほとんどが全壊、半壊、一部損壊するなど、甚大な被害にあった地域です。益城町に住むKママは、当時11カ月の双子と3才の上の子、3人の子育て中でした。
自宅は壁にひびが入るなどの一部損壊。避難勧告が出たため、パパ、お子さんたちと家族5人、「もう戻れないかもしれない」と思いながら、車で20分ほどの指定避難所に移動しました。そこでも建物内は危険だからと、駐車場での車中泊が始まりました。
授乳体勢のつらさに、ギャン泣き…決壊したママの心
初めの2~3日は、支援物資もほとんど届かない状態。前震のあと、Kママ宅に親せきが集まっていたため、普段より食料があったことが幸いし、子どもたちには食べさせることができたそうです。
不安だけれど、子どもにはできるだけ「怖い」という言葉を聞かせないようにしよう、と気を張っていたKママ…授乳中だから食べなければいけないのに食欲もわかず、子どもたちの夜泣きと授乳体勢のつらさに、少しずつ気持ちが追い詰められていきます。
そんな中、心が決壊し、深夜に突然の大号泣。驚いたパパがKママを車から出し、少しの間1人にしてくれたといいます。「双子だし、泣くし、みんなに迷惑をかけているという思いがすごかった。でもこのとき、久しぶりに1人になれたのがよかった。避難所を散歩しながら、自然と『子どもがいるから頑張ろう!』と思えました」。
その後、車中泊が体力的に限界に。10日後、ひびが入っている自宅に戻り、修復しながら過ごしました。
ママだからこそ、人とのつながりの大切にしたい
今は、修復した自宅で、元通りの生活を送れるようになっているKママ。1年前の地震により「人は1人では生きていけないと思い知った」と言います。
「人に『大変』と言えず抱え込んでしまったけれど、助けを求めて大丈夫だと思いました。うちは双子だから、たりないものが人より多かったけれど、友だちや見知らぬ人からの支援物資に本当に助けられました。人はだれかとつながってこそ生きていけます。子育て中だからこそ、人のつながりを大事にしたい。次は困っている人がいたら助けたいです」。
【リポート2】熊本市で被災したIママ。赤ちゃんと車中泊を経験
熊本市でも震源地に近い東区。ここで、取材に応じてくれたのがIママです。
当時、お子さんは5カ月。前震後、パパは仕事の都合ですぐに出勤。近くにある実家に避難しましたが、そこで本震に襲われます。
家の中は危ないので、2~3日、車中泊。4月でも寒く、あるだけの毛布やバスタオルで赤ちゃんを守りました。そのあとは、実家よりは少し新しい親せきの家に避難。みんなで協力しながら、2カ月ほど自宅に戻らず避難を続けたそうです。
被災後のワークショップが大きな学びに
注目したいのが、被災後の活動です。地震があった年の秋、Iママは地域のワークショップに参加。それが大きな学びの場になったといいます。
「同じように子どもを持つママが集まり、被災体験を語り合ったり、防災士さんから被災時に必要な知恵を学びました。電気ケトルを沸かせる車用充電ソケットがあること、サイズがあるものは支給されにくいので、服や靴、メガネなどは優先して持ちだすこと…など、勉強になることばかりでした」。
被災当時はパニックになり、判断能力を失っていたと言います。
「当時、子どもは5カ月だったけれど、今は1才を過ぎ、私の混乱がよりダイレクトに伝わってしまう。そう思うと私は冷静でいなければならず、そのためには知恵が必要です。こうやって情報を共有し学ぶことで、確実な判断ができると思いました」。
「地震はわが身には起こらない」と思わないで!
そして、Iママは言います。
「多くのママが、自分の身近では絶対に地震は起こらないと思っていると思います。でも『うちの避難所はここ』などと、頭の中でシミュレーションしておいたほうがいいです。そして近所にどんな方が住んでいるか知っておくと、いざというときに助け合うことができます」。
2人のママが共通して伝えたいことは、「人とのつながりの大切さ」、そして「日ごろから頭でイメージしておくこと」。いざというとき、赤ちゃんのそばにいるのは自分1人かもしれません。人ごとと思わず、地震が起きたときにどう行動するかをイメージし、家族と話し合い、準備しておくこと。そのためには、ママ自身が「赤ちゃんを守る」という覚悟と強さが大切です。(撮影/なべ 取材・文/ひよこクラブ編集部)
※さらに詳しいリポートは、「ひよこクラブ」9月号(8月12日発売)に掲載されています。
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。