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トランスジェンダー、ゲイ、ママ「親3人の育児」始めました

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LGBTの活動家で、日本最大のLGBT啓発イベント「東京レインボープライド」共同代表理事を務める杉山文野さん。昨年11月に戸籍上の性別は女性のまま“パパ”になり、今年1月に“パパ”になったことを公表後、大きな注目を浴びました。お子さんは今、3カ月です。ゲイである友人の松中権さんからパートナーが精子提供を受けて子どもを授かり、権さんも「親の1人」として、ともに子育てにかかわっているそう。「親とは、父と母の2人」。そんな概念を大きく覆す杉山家の新しい家族像を伺いました。

前編 トランスジェンダーの僕が、赤ちゃんを授かるまで
後編 トランスジェンダー、ゲイ、ママ「親3人の育児」始めました(本記事)

彼女と僕と、自称“ゆるパパ”の生物学上の父親も子育て

僕は、戸籍上は女性です。実生活と書類上の性別がかみ合っていないので、生活上さまざまな不都合があります。戸籍変更も考えたのですが、日本の法律では、生殖器を取り除く手術をしないと性別の変更ができません。僕は子宮と卵巣を摘出してないので、変更ができないわけです。

なぜ摘出しないのか。おっぱいがあることには強い嫌悪感があり、自分もまわりからも見られるのが耐えられなかったので乳房切除手術を受けました。男性ホルモンの注射で生理もなくなってからは、日常生活で目に見えない子宮と卵巣を摘出する必要性を感じることはほぼなくなりました。

人間が生きるために制度があるはずなのに、制度に合わせるために手術するとは何なのか。自分の体に対する違和感から手術をするのは個人の判断でいいと思いますが、戸籍変更のために手術をさせられるのはいくら考えても腑(ふ)に落ちません。

だから僕は、戸籍上は女性のままで女性のパートナーと家族になりました。親友である権さんから精子提供を受け、提供者である彼も「親」の1人として、共に子育てにかかわっています。

権さんは一緒に暮らしてはいませんが、僕らの感覚は「3人とも親」です。養育費は3人で負担しています。

ただ、現状の書類上では、彼女がシングルマザーという形です。僕が子どもと養子縁組するのか、権さんが認知するのかなどは弁護士の先生にも相談しながら慎重に話し合っています。もし僕が養子縁組をすれば、戸籍上の僕の扱いは「養母」になるんですけどね(笑)。

妊娠・出産をした病院で、LGBTへの認知を実感して感動

8年つき合った彼女との関係を互いの両親に認めてもらい、「僕たちの子どもを」と考えたのは、とても自然な流れでした。

そうなると精子が必要なわけですが、方法は2つしかありません。1つは知り合いから提供してもらうこと。2つ目は精子バンクで提供してもらうこと。

彼女は直感的に、「まったく知らない人はちょっと怖いな、信頼できる人がいい」と言いました。僕も同感でした。ただそうなると、どんなに僕や彼女と仲がよくても、ストレートの男性から提供してもらうのは僕も嫉妬があります。必然的に、「ゲイの友人」が対象になりました。

LGBTの活動もずっと一緒にやってきた同志のように信頼できる権さんがいて、彼がいいなと考えました。LGBTの当事者で子育てをしている友人もおり、普段からそういった会話はよく出ていたので、話は具体的に進みました。

不妊治療を始めてから1年半後に妊娠。出産のために移った病院の対応は感動的でした。

妊娠・出産は命がけですから、何があるかわかりません。妊婦健診の最初から、病院側に僕たちの関係を包み隠さず伝えておこうと3人で決めました。助産師さんに日程を調整してもらい、「どの程度、大丈夫なのかな……?」と相手の反応を探りながら、段階を追って話をしました。

担当の助産師さんは丁寧に耳を傾けてくださり、「そんなことでどうこう言うスタッフはうちにはいませんから、何も心配しないでください!」とはっきり言ってくださいました。「担当者が代わっても行き違いがないよう、情報共有もしておきますね」とも。

産婦人科の先生も、「はっはっは~。そんな時代だよな~!」と明るい。身構えていたこちらが拍子抜けしてしまうほどの自然な対応に、トランスジェンダーへの認知が底上げされていることを実感した瞬間でした。LGBTのパレードに15万人が集ってくれたときよりも、感動したかもしれません。

都会の病院だから理解が進んでいる面もあるでしょうが、実生活でこんなに変化を感じられたことがうれしくてたまりませんでした。

その後の妊婦健診から出産、入院中も、権さんがエコー検査に付き添うなど「2人のパパが面会に来る」状況でしたが、特別扱いはされませんでした。

妊娠期間中から出産まで、ただでさえ多くの不安があります。そんな中で、心身ともに安心できる環境で出産を迎えられたのは本当に幸せでした。

生まれた直後。性別を聞かれたら「今のところ女です」と回答

彼女のおなかから生まれてきた赤ちゃんは、今3カ月になったばかり。日々表情も動きも変化して成長する様子が、とにかくかわいくて楽しい。彼女と僕が暮らしている家へ月に何度か“ゆるパパ”を自称する生物学上のパパである権さんがやって来て、おふろに入れたりミルクをあげたりしています。

もちろん不安がないわけではありません。これまでの「家族観」と異なることから不思議がる方も少なくありませんし、僕自身もこの関係性を不思議に感じることもあります。はっきりしているのは、僕たちには、自然な流れで行きついた形であるということ。
ロールモデルがいない分、毎日が手探り。これからも自分たちらしいベストな道を探していくつもりです。(おわり)

現在3ヵ月の娘。明るく幸せな未来が待っていてほしい。




プロフィール

杉山 文野(すぎやま ふみの)さん

トランスジェンダー活動家。1981年、東京都生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了。ジェンダー論を学ぶ。性同一性障害と診断を受けた自身の体験を織り交ぜた自叙伝『ダブルハッピネス』(講談社)を出版し話題に。LGBTの認知を広める活動を推進する傍ら、講演活動、地元である新宿・歌舞伎町の街づくりなどを行う。NPO法人 東京レインボープライド、NPO法人ハートをつなごう学校共同代表。

※杉山文野さんの本記事は、たまひよ創刊25周年の記念キャンペーン「ミライ育児」の取り組みです。
「ミライ育児」では、これからの育児について、著名人へのインタビューを実施。一般の方からも“#ミライ育児”のハッシュタグで意見を募集しています。
詳細はこちら。


(撮影/もろだこずえ、取材・文/平山ゆりの)

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