世界より1カ月遅い。本当は生後2カ月には始めたい百日せきのワクチン 小児科医が発信
連載6回目は「生後3カ月で受けたい予防接種について」。ベテラン小児科医として赤ちゃん&家族に向き合い続けている太田先生。予防接種について、赤ちゃんのお世話についてetc.家族みんなでHappyになるために、知っていてほしい育児の最新情報を発信します。「予防接種で赤ちゃんを守りたい!小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」#6
3カ月になったら接種可能なワクチン
四種混合ワクチンには、百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオの四種の病気を防ぐための成分が入っています。開始時期は、生後2カ月からのヒブや肺炎球菌と異なり、生後3カ月からです。百日せき予防に積極的な国では生後2カ月から開始していますが、日本では1カ月遅れのスタートです。四種混合ワクチンの成分は生後2カ月から接種し始めても問題ない内容ですし効果も十分得られますが、このワクチンの前身的に接種していた、三種混合ワクチン(ポリオ以外の三種)が生後3カ月以降で国の許可をうけているから、ということが理由で、現在も3カ月からとなっています。一度法律で決まったことは簡単には変わらないのが現状です。
※2023年4月1日から、四種混合ワクチンは生後2か月から接種可能となりました。
かかると後遺症の可能性もある百日せきを予防!
四種の病気の中で普段お目にかかる頻度の高いのは百日せきです。私は医者としてベテランの域に入る年齢になりますが、ジフテリア、破傷風、ポリオの患者には遭遇したことはありません。でも、百日せきは何人も診たことがある病気ですし、今でもみかけます。百日せきは母親からの移行免疫が期待できないので、本当はできるだけ早くワクチンを接種したい病気です。最近の研究では、0才と1才代に計4回接種していても5才になった時には相当数の方が、かかってしまうくらいの免疫レベルまで下がっていることがわかってきています。(それ以上の年齢を調査すると追加のワクチンを打っていないにもかかわらず免疫が上がっており、多くの人が知らない間に百日せきにかかっているのではないかと推測されています)。
百日せきにかかっていちばんつらい思いをするのはワクチンが済んでいない赤ちゃんです。ひどいせき込みや呼吸ができなくなるなどのほか、脳症も合併症の一つにあります。最悪の場合は、死亡することもありますし、重症な後遺症に悩まされる可能性も出てきます。
就学前の追加接種も視野に入れて検討を
百日せきを予防するため、諸外国では、小学校入学前に三種混合ワクチンをもう一度追加して接種して、さらにジフテリアと破傷風を予防する二種混合ワクチン接種時にも百にちせきを加え、三種混合で接種しています。それでもまだ生後3カ月までに百日せきにかかってしまう赤ちゃんがいることから、妊婦さんの免疫を高めておけば生まれてくる赤ちゃんの免疫も上がるだろうと、妊娠27~36週に三種混合ワクチン接種をするなどの新しい方法が導入されています。
日本でも感染症に詳しい医師らが国に諸外国と同じようにしてほしいとお願いしていますが、一度決まってしまった制度の変更はハードルが高く、何度も体当たりしては跳ね返されている状態です。制度変更にいちばん力があるのは当事者の意見だと思います。不活化ポリオワクチンやB型肝炎ワクチン定期化は、国の方針転換前に任意ワクチンとして多くの方がワクチン接種を受けたという実績が積み上げられたことによると信じています。
定期接種としての百日せきワクチン接種機会を増やしてもらうためには、小さなお子さんをお持ちの保護者らの訴えが高まれば世論を動かせるのではないかと期待しています。当院では就学前年のMRワクチンⅡ期対象者に、追加ワクチンの必要性について説明して接種勧奨をするように努力しています。
(構成/ひよこクラブ編集部)