「帰るのイヤ」「こっちの道で帰る」の上手なかわし方
「おうちに帰るよ」と伝えてもお子さんが遊び続けたり、忙しい日に遠回りの道から帰りたいとダダをこねたり。そんなとき、どんなふうにかかわりますか?
対処のしかたによっては事態が悪化することもあるのだとか。帰宅をスムーズに進めるコツついて、保育者育成をはじめ、お子さんやその家族への育児支援などに力を注ぐ藤原里美さんに聞きました。
“言い聞かせる”のは逆効果!
遊びなどに夢中になると、どんなお子さんも気持ちが切り替わりにくいことはよくあることです。でも、その頻度が多く、保護者の困り度が強い場合、興味を持ったことに集中しやすく、それしか見えなくなりやすいのかもしれません。
そのときのお子さんの頭の中は、興味を持ったことでいっぱいなので、「帰る時間よ」と言われても、そう簡単に気持ちが切り替わりません。
また、帰宅途中で「こっちの道から帰りたい」と、いつもと違う道を指してダダをこねるお子さんも多いです。この場合も、自分ルールやこだわりが強い傾向があるのかもしれません。
いずれも、説得したり、言い聞かせて帰宅を促すと親子で対立関係になり、さらに対処に困ることになります。
気持ちに共感しつつ、前もって楽しいことの提案を
興味のあることに集中しやすく、降園時などに帰りたがらないお子さんには、ほかの楽しいことを事前に提案してみましょう。
たとえば、朝の登園前にその日の夕食メニューをお子さんと相談して決め、その写真をスマホに保存しておいて降園時に見せるのも一つの手です。夕食メニューの食材を帰宅途中に一緒に買う約束をするのも楽しいかもしれません。
「こっちもおもしろそう」と気持ちを切り替えやすくするために、お子さんが楽しめることを頭の中に印象づけるといいでしょう。自分で決めたことなので、思い出しやすい点でもおすすめです。
いつもとは違う道で帰りたがるお子さんには、「こっちの道で帰りたいんだね~」とまずはその気持ちに共感しましょう。その上で、いつもと同じ道で帰ると飛び出す絵本が読める、しりとりや好きな折り紙で遊べるなど、お子さんが興味を示しやすい楽しい提案をしてみましょう。
保護者が無理なくできることを、普段からいくつか用意しておくととっさのときも対処しやすいです。
切り替えの悪さやこだわりは、対立すればするほどお子さんも頑固になりがちです。気分が変わりやすい、お子さんにも心地よいものや楽しいものを提案したほうがお互いにラクです。
お子さんが気持ちを切り替え、こだわりを譲ってくれたときは「お話しを聞いてくれてありがとう」などと、しっかりほめることもポイントです。
■監修:一般社団法人チャイルドフッド・ラボ代表理事 藤原里美先生
明星大学非常勤講師(障害児保育)、臨床発達心理士、自閉症スペクトラム支援士、早期発達支援コーディネーター、保育士。
■イラスト・マンガ/鳥頭ゆば(トリあたま絵日記)