女の子にも、男の子にも!社会性と想像力を育てる「ままごと遊び」の大切さ
女の子の遊びというイメージの強い「ままごと遊び」。しかし、幼児期の「ままごと遊び」から身につくことはとても多く、女の子だけでなく男の子にとっても大切な遊びのひとつなんです。
そこで今回は、男の子ママ・パパにも知っておいてほしい「ままごと遊び」について、相模女子大学学芸学部子ども教育学科准教授・金元あゆみ先生に話を聞きました。
進化する「ままごと遊び」でどんな力が身につく?
―-まず、「ままごと遊び」とはどのような遊びのことなんでしょうか?
金元先生 もともと「ままごと」というのは「飯事」と表され、ごはんを作るまねをしたり、食事の場面をまねしたりすることを指していました。
しかし、最近では食事に関することだけでなく、洗濯や買い物、家族やペットのお世話など、家庭生活全般をまねするごっこ遊びを「ままごと遊び」と言うようになりました。
―-ままごと遊びは、より複雑な遊びに進化していたんですね。
金元先生 だからこそ、身につくことも多いんですよ。
―-たとえばどのようなことが身につきますか?
金元先生 まずはまねをするために必要な観察力。ままごと遊びをしている子どもたちを見ていると、おうちでママやパパの行動をとてもよく見ているな、と感心します。遊びの中で再現することで、生活全般の営みや家族の役割への興味が深まっていきます。
―-なるほど、家族の姿を「観察」し「再現」しているんですね。
金元先生 そして、観察したことを遊びの中で表現する力もつきますね。
また、複数人でままごと遊びをするのであれば、他者とかかわる力や社会性が身につき、より多くの言葉とふれ合うきっかけにもなります。
ままごと遊びを充実させたくていろいろな工夫したり、イメージをふくらませたりするためには思考力や想像力も育ちますし、食育の一環にもなるなど、ままごと遊びから子どもが学ぶことは本当にたくさんあるんですよ。
子どもの遊びに男女の違いはあるの?
―-「ままごと遊び」と言えば女の子の遊びというイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際に子どもの遊び方には男女の違いがあるのでしょうか?
金元先生 基本的には男女の差というよりも個人差だとは思います。しかし、女の子は遊びの中で友だちとの関係性を重視していることが多く、これに対して男の子は「何をするか」という遊びの目的を重視している、という研究報告もあります。
―-それはおもしろいですね。人間関係を構築するための手段として、コミュニケーションを多く必要とするままごと遊びを、女の子が好むことが多いんですね。
金元先生 現在の日本の社会文化的影響が大きいのではないかなど、理由はいくつかあるのですが、男の子は車や機械を用いたごっこ遊びが多く、女の子は家庭を模したごっこ遊び、人形を用いた遊びが多いようです。このような違いについて、そもそも興味の持ち方に性差があるという説もありますが、モデルとなる同性の存在も大きいと思います。子どもが性別を判断できるようになるのは2歳ごろと言われていますが、年齢が上がるにつれて、自分と同じ性別の他者をモデルにする姿が見られるようになってきます。家庭生活のまねである「ままごと遊び」の中で、どのような役割の同性がいるかイメージできると遊びへの参加のしかたも変わってくるかもしれません。
―-なるほど、社会文化的影響や同性への興味という部分はありそうです。
金元先生 以前、男性保育者から「男の子と剣を作ってヒーローになりきって遊ぶと、その剣のこだわりどころや遊びのおもしろさがわかるが、プリキュアごっことかは誘われても参加できない」と言われたことがあります。
一方、女性保育者からは「やや激しめのヒーローごっこなど、乱暴な遊びにどうつきあえばいいか、とまどうことがある。時には”危ない”と止めてしまうことも」という声を聞くこともありました。
―-どちらの保育者の方の気持ちがわかります。
金元先生 この話からもわかるように、大人が子どもの遊びにかかわるとき、自身の幼少期の経験からそのおもしろさに共感できたり、できなかったりする場合があります。
ごっこ遊びやままごと遊びに性差が見られる要因にはさまざまな説がありますが、家庭でもママだけでなくパパもごっこ遊びに積極的にかかわっていけると、子どもの感じているおもしろさに共感できる部分がひろがります。
子どもの楽しみ方・遊び方も変わっていくかもしれませんね。
-―日本の社会文化的影響があるかもしれないなか、ままごとでママとパパが違った視点から共感することで、さらに遊びの広がりが期待できそうですね。
金元先生 大事なのは「子どもが感じているおもしろさをわかろうとすること」です。自身の経験だけを基準にするとどうしても偏った見方になって、「何がおもしろいのかな?」とわからないこともでてくるかもしれません。
しかし、共感なしにかかわるのは、単に遊びに「つき合ってあげている」だけとなり、遊びが停滞してしまったり、遊びに充足感を得られなかったりすることにもなりかねないんです。
―-大人のかかわり方次第で、より遊びを深めることができるということですね。
金元先生 子どもの年齢・性別を問わず、子どもの世界に「ちょっとおじゃましますね」という気持ちで、その子が今、目を輝かせて見つめている対象を一緒に眺めて、子どもが感じている魅力を共に感じ取ろう・感じている世界を知ろうとすることが大切だと思っています。
金元先生によると、普段からあいさつや生活習慣など、ままごと遊びの要素を大切にした生活を心がけるといいんだそう。
子どもに寄り添い、共感しながら、家族みんなでままごと遊びを楽しんでみてはいかがでしょうか。
(取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部)
■監修/金元あゆみ先生
(相模女子大学学芸学部子ども教育学科准教授)
保育学・幼児教育学を専門とし、保育園での保育を経験したのち、大学院に進学。昭和女子大学での助教を経て現職。著書に「0歳児のあそび」(ひかりのくに)がある。