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母乳神話を冷静にデータで分析すると……経済学者が解説

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ミルクと哺乳瓶のクローズアップビュー、花瓶の花と自宅での母親の母乳育児の赤ちゃん
LightFieldStudios/gettyimages

「母乳じゃなければ赤ちゃんは健康に育たないわよ!」。そんな心無い"母乳神話”にストレスを感じているママも少なくないでしょう。母乳はもちろんいいものですが、母乳神話には根拠があるのでしょうか。結婚・出産・子育てについて経済学的手法で研究している、東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎先生に、経済学的な視点からの研究結果を踏まえ、母乳神話について意見を聞きました。

母乳は1才時点でのアトピー性皮膚炎を減らす?

――赤ちゃんの栄養面、健康面はもちろん、母子の絆(きずな)を深めるなど、母乳育児にはたくさんのメリットがあるといわれています。これまでの研究では、どのようなことがわかっていますか。

山口先生 1996年に、ベラルーシで行われた母乳育児支援促進から生まれたプログラムが、母乳育児の科学研究として、信頼性が高いといわれています。このプログラムでは、1万7046人の子どもとそのママを対象に、誕生から16才までの子どもの健康状態と発達状態を追跡調査しています。
その結果、母乳育児を行った赤ちゃんは、生後1年の時点では感染性胃腸炎とアトピー性湿疹(しっしん)にかかる割合が減っていました。

――母乳は知能面の発達にもいい影響があるといわれていますが、その点はいかかでしょうか。

山口先生 6才半時点で、知能テストと学校の先生による子どもの学力評価を調べたところ、母乳で育った子どものほうが、両方とも高い成績を上げていました。母乳が子どもの知能に及ぼすメカニズムは解明されていませんが、6才半時点では、母乳育児が子どもの知的発達にいい影響を及ぼした、ということは言えそうです。

母乳の効能は長続きしない!?

――科学研究によって、母乳にはいろいろなメリットがあることがわかっているんですね。

山口先生 たしかに、母乳育児は乳児の健康と発育・発達にいい効果があることが立証されました。しかし、母乳神話でいわれるほど、「母乳はほかには代えがたい魔法の水」というわけでもないんです。

――それはどういうことでしょうか。

山口先生 身長・体重・肥満度(BMI)と血圧について6才半時点で調べたところ、母乳で育った子どもと粉ミルクで育った子どもで、違いが現れなかったのです。11才半と16才時点でも同じ結果が出ているので、母乳は子どもの肥満防止には効果がない、と考えられます。

――「母乳で育った子は肥満になりにくい」とよくいわれますが、そういうわけではないと。ほかにも、母乳育ちと粉ミルク育ちで差が出ないことはありますか。

山口先生 生後1年には母乳育児にアトピー性湿疹(しっしん)を減らす効果があると先ほど申しましたが、残念ながら6才半時点と16才時点では、アレルギー・ぜんそくを防ぐ効果は認められませんでした。
知能発達についても16才時点では、母乳育児のほうが優位になるという結果は得られませんでした。
これらのことから、母乳育児は生後1年までは効果があるけれど、その効能は長続きしない、と言えそうです。

パパの授乳経験は、育児参加のきっかけになる

――母乳育児は母子の絆を深める、というメリットについてはいかがでしょうか。

山口先生 母乳を与えるときママと赤ちゃんは非常に密着しますから、愛着が深まり自然と絆が深まりますよね。それはママ、赤ちゃんどちらにとっても素晴らしいことだと思います。だから、母乳育児を望む場合は、ぜひ積極的に取り組んでほしいですね。

――働くママが増えていることもあり、夫婦で育児を分業することが欠かせなくなってきています。母乳育児とパパの育児参加について、先生はどのように考えていますか。

山口先生 母乳育児はママにしかできないので、ママの負担が大きくなるのは避けられません。とくに働くママにとっては、時間的にも肉体的にもかなりな負担になりますよね。
歴史的に見ても、粉ミルクの普及が、働くママの増加に大きく寄与したと分析されています。
「育児の分業」という点から考えると、パパが育児に参加しやすい粉ミルクによる授乳を取り入れるのはあり、というのが私の考えです。

――先生ご自身は、子どもの授乳期、どのようにかかわられたのでしょうか。

山口先生 うちは母乳育児だったので、母乳を冷凍しておいて、私が哺乳びんで飲ませる機会もしばしばありましたね。私の経験から言いますと、ママが母乳育児でわが子への愛情をはぐくんでいくように、パパは哺乳びんで授乳することで、わが子への愛情を深めていくんですよ。私の息子はすでに小学校1年生ですが、今でも「もう一度、わが子に授乳したい!」という思いが残っているくらい。息子が生まれるまでは子どもが苦手だったのに、です。
さまざまなデータを見てもそうなので、パパが授乳するチャンスがあるかないかで、パパの育児参加の度合いが変わってくると言っていいと思います。

――母乳育児について悩んでいるママ・パパに、経済学者として、先輩パパとして、アドバイスをお願いします。

山口先生 母乳育児にはいろいろなメリットがあるのは明白です。でも、母乳神話でいわれるほど、「母乳でなければ絶対ダメ!!」というわけではないことも事実。だから、母乳育児を行うかどうかはママの選択が尊重されるべきだし、どんな授乳スタイルがベストなのかは、家庭によってまったく違います。
ママとパパがしっかり話し合って、お互いが納得できるスタイルを選べば、それが正解なのではないかと思います。

母乳は赤ちゃんにとって大切なものであることを再確認しましたが、同時に、母乳神話にデータ上の根拠がないこともわかりました。ママとパパが納得し、赤ちゃんが健やかに育つ授乳スタイルが、その家庭にとってベストということですね。(取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部)

■監修/山口慎太郎先生
(東京大学大学院経済学研究科教授)

慶應義塾大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士取得。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。初の著書である『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』がサントリー学芸賞を受賞。

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